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日本酒造りの仕上げの工程は、貯蔵・熟成
前回、日本酒の製造年月は、上槽年月ではない、という話をしました。
これは、なぜなのでしょうか?
日本酒造りの工程
日本酒は、11月から3月の寒い時期に上槽されるものがほとんどです。
一方、「秋あがり」「ひやおろし」、また、「寒おろし」とか呼ばれている日本酒を見かけたことはないでしょうか。
「秋あがり」「ひやおろし」は、秋(9月から11月ごろまで)に出荷される日本酒。
「寒(かん)おろし」は、冬(11月下旬ごろから12月ごろまで)に出荷される日本酒です。
つまり、その年の上槽時期より早いタイミングで出荷されている訳ですから、前の年に上槽されたものを、「秋あがり」「ひやおろし」なら半年から1年程度、「寒おろし」なら10ヶ月から1年程度、酒蔵で貯蔵・熟成した後、出荷されていることになります!
そう言えば、「二夏越で育てました」というような文言が瓶や箱に書かれている場合だってあります。
つまり、前々年の冬に上槽した日本酒を、1年半から2年程度貯蔵・熟成させて、出荷しているのです。
これらは決して、古酒・熟成酒とは謳われていません。
「普通」の日本酒として販売されています。
逆に言うと、日本酒において、実は「熟成」って、ごく普通の工程なのではないでしょうか!
これって、当たり前と言えば当たり前のことですが、改めて良く考えてみないと気が付きにくいことです。
日本酒は通常熟成しない、と思い込んでいるたくさんの人たちにとってはもちろんのこと、古酒・熟成酒を知っている人たちにとっても、結構衝撃的だと思います。
酒蔵のサイトで製造工程を確かめてみる
そこで、酒蔵のサイトを調べてみました。
すると、例えば、和歌山県岩出市の吉村秀雄商店のサイトにはこうありました。
「酒造りの工程」は、「洗米・浸漬」から始まり、「熟成」に終わる、と!
なお、この酒蔵は、古酒・熟成酒専門の酒蔵ではありません。
「熟成」については、次の通りに、ていねいに説明されています。
「神様からのご褒美です。ビン詰をし冷蔵庫や地下の貯蔵庫で味わいが整うのを待ちます。熟成による味のきめ細かさや滑らかさはフレッシュなお酒にはない深い奥行きを持ちます。最低でも1年〜3年。お酒の種類や状態によって熟成させていきます。瓶で貯蔵することで安定した熟成が行えます。派手さはありませんが、お料理と寄り添うお酒になります。」
熟成は、「神様からのご褒美」なんですね!!
また、「熟成」の直前の工程「上槽」(ここでは、「搾る」と表現されています)」は、以下のとおり。
「ここはゴールではなく折り返し地点です。搾るタイミングは分析値もありますが、全てはテイスティングで決めます。口に入れた時に甘さがどこまで残るか?この甘さがなくなって旨みが出てきたところが搾るタイミングです。このお酒がいつ頃出荷されるのか?どのくらいの熟成期間を想定しているのか?やや遠い未来を見据えて搾ります。焦ってはダメ。悩んだら一日待ちます。」
なんと、普通の日本酒でも、「上槽」は、ゴールではなく、「折り返し地点」だったのです!
ほぼ全ての日本酒が貯蔵・熟成されている
もちろん、敢えて熟成しない日本酒もあります。
「しぼりたて」とか、「初しぼり」と書かれているもの。
火入れをせず、しぼりたての日本酒をそのまま瓶詰めしたものですね。
厳密に言うと、「初しぼり」は秋に収穫されたお米で初めて絞った日本酒のことなので、「しぼりたて」と同じではないですが、実態としては、似通っています。
なお、通常日本酒は、しぼった後と出荷する前に火入れをしますが、これをしない「しぼりたて」「初しぼり」は「生酒」と呼ばれます。
ともあれ、そうした一部の例外を除けば、全て、酒蔵で貯蔵・熟成させている可能性があるのです。
というより、貯蔵・熟成は、日本酒の色、香り、味に影響を与える、大事な仕上げの工程だったのです。
特に、古酒や熟成酒でなくても。
だから、「製造年月」は、上槽した時期ではなく、貯蔵・熟成後販売のために瓶詰めをした時期を表示するんですね。
いやあ、知らなかった!