![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/101216673/rectangle_large_type_2_c5fe74c57a00fad6ae469b06168f76e5.png?width=1200)
コーチングでの「視点が変わる」≒「変容的学習」。10プロセスを解説(中編)
コーチングが提供する体験として、「視点を変える」というものがあります。これは変容的学習と類似点が多く、知ることでコーチングの役に立つことも多いでしょう。
ここでは、前編に続き変容的学習をより具体的に紹介していきます。
変容的学習とは何か?
「変容的学習」は、大人の学習(成人学習)のひとつで、米コロンビア大学の研究者ジャック・メジローが提唱しました。まず、その定義から見ていきましょう。
変容的学習とは
変容的学習とは、(意味パースペクティブ、精神的習慣、心的構えなど)当然のものと受け入れてきた認識枠組(frames of reference)を、いっそう包括力があり、開放的で、変化に対して感情的にも対処可能で、省察的なものとなるように変容させ、そうして、行動を導くうえでいっそう信頼可能で正当性がある信念や意見を認識枠組が生成できるようにすることである。
少し長い定義ですね(汗)
あえば簡単に表現するならば、「考え方の土台をより良いものに変える学習」とでもいえるでしょうか。
人は、人生での様々な経験を得て自分なりのものの見方、世界を解釈する枠組み(frame of reference)をつくっていきます。ただ、今の枠組みでは上手くいかない事態に直面すると、人は悩み考え、より確かな思考枠組みを作り直します。そこに変容的学習が起こっています。
永井健夫 (1989)の例を見るとより具体的にイメージができるのでご紹介します。
たとえば、次のようなケースも変容的学習の例と見なすことができよう。
・長らく企業戦士として働き、所属する会社の利益を上げるために真面目に働くことしか考えてこなかった人が、職場から離れることを機に、経済活動と社会との関係や人間的な生活の場としての家庭や地域社会について気づき、ボランティアが活動に取り組むようになる。
この例のように、環境や役割に変化があるケースでは、考え方の枠組みを変える必要にせまられることがあります。たとえば、コーチングのクライアントが転職したり、引っ越しをしたり、マネージャに昇進したりと様々な変化のケースがあるでしょう。
その時には、変容的学習をおこすことで、より変化に対応し活躍できる状態に移行することができます。コーチの役割として、その変容的学習を促進することがあると思います。
省察的対話とコーチング
メジローも「省察的対話(reflective discourse )」が変容的学習を促進すると述べており、この定義はコーチングに通じるものがあります。
省察的対話とは
省察的対話とは、論拠を吟味し前提を批判的に評価することで代替となる視点を検討する対話である。
対話の参加者は「代替的な視点に開かれていること」「思考の文脈を強く意識し、自分自身の前提も含め、前提を批判的に省察すること」などが求められる
一方、ICFによるコーチングの定義は次の通りです。
コーチングの定義(ICF)
コーチングとは、思考を刺激し続ける創造的なプロセスを通して、クライアントが自身の可能性を公私において最大化させるように、コーチとクライアントのパートナー関係を築くことである
両者の定義は、「前提を評価する」ー「創造的なプロセス」、「代替的な視点に開かれる」ー「自身の可能性を公私において最大化させる」というコンセプトベースで符号しているように感じます。実際に、変容的学習のハンドブックにおいても、コーチングが1章をさいて取り上げられています。
では、その変容的学習はどのようなプロセスでおこるのでしょうか。メジローが下図のような10プロセスにまとめています。
次のコラムでは、この10プロセスについて詳しくみていきます。
![](https://assets.st-note.com/img/1676989280057-DuPDg9lxxi.png?width=1200)
この記事の前編はこちら
参考文献
Mezirow, J. (2000). Learning to Think like an Adult. Core Concepts of Transformation Theory. In J. Mezirow, & Associates (Eds.), Learning as Transformation. Critical Perspectives on a Theory in Progress (pp. 3-33). San Francisco, CA: Jossey-Bass.
永井健夫 (2007). 変容的学習と「成人性」の関係をめぐる試論. 大学改革と生涯学習 : 山梨学院生涯学習センター紀要. 第11号 107-116, 2007-03-28.
常葉-布施美穂 (2004). 生涯学習理論を学ぶ人のために―欧米の成人教育理論、生涯学習の理論と方法. 世界思想社