『快三昧に生きる』 【6】
2020.7.14
今一度観念形成についてミクロとマクロな視点から詳細な観察をしたのちに、「自律分散型社会」について説明を加えたいと思います。
観念形成の過程において、私たち日本人の特徴は、競争社会で生き抜くこと、間違ってもドロップアウトするようなみっともない人間にだけはならないようにと教育されてきました。今でこそ多様性を認めようという動きもありますが、まだまだそれも建前上の理想でしかないように感じています。
そうした中で、社会的適応能力は必須な課題となります。家から一歩出れば戦場の如く、家以外の社会では、本音で生きることを許されません。社会で喜ばれない本音にはいつも蓋をして、できる限り建て前を駆使し、蹴落とされないよう細心の注意を払うよう教育されます。忖度能力はそんな処世術の際たるもので、この能力こそがコネや縁故につながり、優位な居場所獲得への早道になるからです。
創り笑顔、空気読み、八方美人、虚栄、体裁などは競争社会のツール(武器)になっています。こうした努力の結果「人間関係とは利用価値」というような考えが通説化するのは悲しいことです。ただ往々にして日本人の多く(特に年配者)はこのような社会観を共有しているように思います。
若い人の中にも、恋愛中は特に相手を逃がすまい、気に入られようと、こぞって上記のツールを駆使します。ところがめでたく結婚し子供を授かるころ、夫婦は人生の一大試練を受けることになります。愛を注ぐ育児は、生活の最優先事項となり、慣れない育児集中に一日中休む暇もなく、疲れ果てた上にゆっくり眠ることさえままならず、睡眠不足が続きます。母親だけでなく、父親も睡眠を障害され、お互いを気遣う余裕などなくまったくなってしまいます。ちょっと前までは、おばあちゃんの手助けに頼ることも多かったのですが、最近ではそれぞれが「自分を大切にする生き方」に変化し、子供も両親を気遣って蜜に交流しなくなり、また遠方に住む親子も多く、そのため都合よく頼ることもできなくなり、頼りになる人もないまま、新ママは一人で抱えきれない荷物を背負い、髪振り乱して奮闘することになります。愛情が本物なら、お互いがそれを理解し合うはずですが、そうでない場合、結婚前の優しさを求め「もっと気遣って!」「察して!」が前に出てしまいます。お互いがいっぱいいっぱいの状況では喧嘩になることも当然です。この状況は1年以上続き、好きだった相手には不信感が重なり、“こんなはずじゃなかった” と最悪は離婚に至るカップルも多く見られます。出産、育児は一つのきっかけにすぎず、一緒に生活するなかで、見ないようにしていた欠点が目立つようになり、我慢しながら合わせていたことに気づくのもこの時期かもしれません。相手への愛情より、‟結婚”に夢みて、結婚式がしたかった、という女性も多いといいます。セクハラ、パワハラ、を見て見ぬふりしながら伏魔殿社会の中でで働く女性たちが、結婚という永久就職に憧れた結果なのかもしれません。そんな社会に生涯隷属を強いられる男性にだって言い分があるはずです。お互いが温もり合いたくて結婚したのに、ヤマアラシのように鋭いトゲで刺し合うことしかできなかった、というカップルも年々増加しているように思います。
そんな多くのカップルを観た後輩たちは、先輩たちの「幸福ではない姿」に憧れるはずもなく、結婚をしない「非婚」という人生の選択をする若者も増えています。
少子化が進む中で、このような事態は、日本の存続に大きなダメージとなります。知恵を絞って若者たちが生きやすい、そして子供も産みやすい、育てやすい社会形成のアイデアが不可欠になっています。
日ごろから無理をせず、飾らず、自然体で繋がれていれば、本当の愛情で結ばれ、共に問題解決を図ることも可能かもしれませんし、また根本的な生活様式の改変や、社会制度の改変も必要かもしれません。いずれにしろ今生きている私たちがそのことに関心を寄せ、アイデアを出し合って、解決の糸口を見つけるべきです。もうこのまま次世代に持ち越す余裕はなくなっていることを肝に銘じて、真摯に対処する姿勢を持つべきと考えます。
『ヤマアラシの実情』
「ヤマアラシジレンマ」という心理学用語があります。
心理学者フロイトが精神分析の説明に引用したのちに、アメリカの精神分析医ベラックが、人間関係における心理的距離感の葛藤を「ヤマアラシのジレンマ」と名付けたのです。これは恋愛心理学にも繋がる人間関係論です。
2匹のヤマアラシが互いに温め合いたくて近づくのですが、近づき過ぎるとお互いの鋭いトゲで傷つけあうために、一定の距離を置かなければならず、互いに温め合うことができません。ほどほどの距離を保とう。と言うものですが、トゲを寝かせて、こんな風に寄り添えば温め合えるはず。
このことは、既存の固定観念を覆す一例となりました。簡単な事だったのに鋭いトゲを寝かせるという技があることに私たちは気づいていなかったのです。
人間に例えるなら、競走に勝つための武器(先述の建て前ツール)を駆使することにしか考えが及ばない人と同じです。武器を捨てて、プライド(虚栄)を捨てて、ありのままの自分を見せれば敵視されることもなく、戦う必要もなかったということです。心の中の剣を捨てることで温もり合いの心地よさを誰もが味わえる道だったのです。
「山奥ニート」
そんな現代社会の事情からか、最近「山奥ニート」なる新しいライフスタイルが話題になっています。 和歌山県田辺市の山奥で廃校を利用して20代~40代の男女12人が集団引きこもり暮らし。彼らは自由気ままに日々を過ごし、ゆるーい関係性で一定の距離を持ちながら、それぞれの世界を大切にし、やがてやりたいことが見つかると出ていく、というニート集団です。生活費は食費光熱費2万円、健康保険、年金を合わせて一か月4万円ほどだそうです。
平均年齢80歳という5人のお年寄りが住む、この超限界集落の住人達は、ニートの若者たちの入村を歓迎し、彼らと共に共生している様子。実に素晴らしいアイデアではないでしょうか。ニートたちは、お年寄りのお手伝いを積極的にし、また他に力仕事をはじめとして、近隣の不定期な仕事に事欠かないと言います。お年寄りたちもきっと楽しく心強いことでしょう。
本名を使わない(ここだけのニックネームで呼び合う)、山奥ニートへ来た理由を聞かない、など彼らの人間関係は友人でもなく、家族ほどべたべたせず、程よい距離を保つ 暗黙の了解があるようです。
都会での引きこもり生活に別れを告げ、山奥でニート生活を送る筆者の5年の記録。家賃はゼロ円、生活費は月額1万8000円。ときどき村人のお手伝いでおこづかいを稼いで生きていく。インターネットさえあれば、買い物も娯 楽も問題なし。リモートの可能性をフル活用し、誰でもできる新たなゆるゆるライフスタイルを提示する!
二度目の重版が決まり累計18,000部という人気。これほどまでに日本中にニーズの種があるとは驚きです。つい最近には日テレ「世界一受けたい授業」でも取り上げられました。
このように新しらしい個々それぞれに合ったライフスタイルの出現は希望ある未来をイメージできて、刺激になります。ちなみに『「ニート」してます』の著者であり、山奥ニートのリーダー的存在の石井あらたさん(32歳)は結婚し、奥さんは町に住んでいるそうです。これも新しい夫婦の形態のヒントとなるのかもしれません。
という訳で、書きたいことが溢れ出て脱線ばかりですが、紙の出版本とは違う味わいを愉しんでいただければありがたいです。
このような極端なライフスタイルの転換は、誰にでもできるとは限りませんが、この記事の編集時にタイムリーな番組をみました。
フジテレビ「僕らの時代」松岡茉優×田中みな実×滝沢カレン出演
私の関心は滝沢カレンさん。彼女は「忖度」を知らないのでは?と思わせるような、これまでとは異なる未来人のように感じていたからです。
今回もそのイメージを裏切ることなく、「今更親友になるのは可能性が低い
」とか、「嘘を言いたくないから」など本音をバシバシ臆面もなく堂々と発言する姿勢は、”あっぱれ”と言いたくなるほどすがすがしい情景でした。
しかも、其の言動に嫌味がない!
ボキャブラリー不足や少々日本語が怪しい部分があるにせよ、それがかえって可愛らしさになっている。
こんな若者が人気を博している今日この頃ですが、ちょっと前なら、世間からはじき出されたり、いじめの対象にもなりかねない個性かもしれないと思うと、私的には好ましい傾向と感じています。
みんなが、カレンさんのように堂々と主張でき、しかも楽しく仕事や社会生活ができることを願ってみません。
NEUノイロボットが何でも応えます。