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自己の情欲を抑制し、己れに克つ
商家の家訓―商いの知恵と掟 (青春新書インテリジェンス)
第四章 日本を動かした財閥の家訓
勤倹貯蓄実行の骨髄は、自己の情欲を抑制し、己れに克つに在り
安田善次郎
安田財閥の創始者である安田善次郎は
傘下の銀行の行員に向けて書いたとされる小冊子『勤倹貯蓄談』
に記載されている勤倹貯蓄全五か条がなかなか卓見であるので
共有。
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己に克つ事により意志が強くなり
その結果によって、貯蓄が生まれるというという考えだ。
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勤倹貯蓄全五か条
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勤倹貯蓄といえば、
ただ倹約して貯金をすることと解釈する者がいるけれども、
決してそうではない。
勤倹とは勤勉にして節約することであり、
換言すれば「業務を勤勉し、冗費を節する」ことである。
即ち「勤」は積極的な語で進取を意味し、「倹」は消極的な語で保守を意味する。
ゆえに両者が揃って、初めてその教えは効果があるということを皆に教えたい。
勤なるとともに倹なれ、倹なるとともに勤なれと。
易きを好み、難きを避けるは人の常である。
勤倹は美徳であるが、その実行はすこぶる至難の業である。
意志の強さ、すなわち克己心の養成を最も肝要とする。
私が日頃目撃するところから、意志薄弱の輩が常に失敗の悲況に陥る例をあげて、克己心の必要な証を示してみよう。
第一 意志の弱い人は、何事にも気が移りやすく、
衣服や調度なども時の流行を追って、外見を飾ることをもって良しとする。
このような欲望の奴隷となる人は、予算外の支出もかさみ、
ついには先祖伝来の財産を減らすようになる。ましてや貯蓄などいうまでもない。
第二 意志の弱い人は、友人や知己のために保証人などになって、
思わぬ禍に巻き込まれることがある。このような一時の人情にかられて、
自己の利害を省みない人は、勤倹貯蓄を実行することはできない。
第三 意志の弱い人は、取り引きの間、始終人の後に立って、いわゆる「ひけ」を取
るものである。このような人は情実にこだわって、常に損害を招く。
第四 意志の弱い人は、困難なことや紛糾する事件に遭遇すると、
すぐに参ってしまったり、または嫌がったりし、
ついに何事も成し遂げることができない。 このような人は、結局、
奮然たる気力を発揮して事に当たる勇気がないので、終生向上することはできない。ましてや克己心などあろうはずがない。
第五 意志の弱い人は、その行為が常に不規律で、精神が快活ではない。
したがって自己の欲望を抑えて、勤倹貯蓄をする勇気はない。
要するに、勤倹貯蓄実行の骨髄は、自己の欲望を抑制し、己に克つことにある。
検貯蓄を遂行することは、人生の必要事項であり、
また成功を得るための一手段である