地獄の辞典 第十回 畜生道
地獄の辞典 第十回
畜生道
シリーズ“地獄の辞典”の第十回。六道輪廻編に突入していますが。これまで、天道、人道、修羅道ときて、今回は、“畜生道”です。では、参りましょう。
畜生道。六道輪廻の世界の中で、修羅道のひとつ下に位置する階層。イメージ上の位置関係的には、海底に相当する。これは、本当に畜生道という世界が海底に存在するわけではなく、仏教宇宙観における、あくまでイメージ上のことである。畜生道とは、どういう世界か。
畜生道とは、ひとくちに言って動物の世界である。動物の世界、獣畜の世界である。本能や衝動が支配する世界。知性や理性や教養といったもののない世界。仏教の輪廻転生観では、理性的でない人物がここに往生するとされる。
畜生道は、六道輪廻の世界のうちで唯一、娑婆にいるわれわれ人間にも可視化できる世界である。見ることができ、触ることができる世界。いまも畜生道の住人たちは、文明圏と軒を接する山林や山野や森林に暮らしているのである。
畜生道とは、食うか食われるか、弱肉強食の世界である。そこに文化や芸術、文明というものは存在しない(と思う)。この道に往生しないためには、ひたすら修身するしかないだろう。理性や教養を理解することが、人の道、ひいては仏の道に通じるのである、だろう。