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【アークナイツ】収録曲 『Ständchen』 和訳と意味を考えてみる
はじめに
アークナイツはイベントごと、または主要なキャラクターに合わせてイメージソングが作られる。
どれもハイクオリティで楽曲の公開を楽しみにしているプレイヤーも少なくないだろう。
さて、今回和訳に挑戦した「Ständchen」はSIDE STORY「塵影に交わる残響」で登場したエーベンホルツをイメージした曲となっている。ストーリーへの理解を曲からも深めていこうと思う。
血脈の中で繰り返す囁きは、まるで皮膚の下に蔓延る棘。運命の跫音を鳴らし、夜の帳の中で泣いて訴える。「Ständchen」――フィナーレを奏でよう。
※本和訳記事は、公式が発表しているガイドラインに基づき作成しております。不備等がございましたらコメント等でご連絡ください。
今回の見出し画
Nicolas Lancret, Concert in the Oval Salon of Pierre Crozat's Chateau at Montmorency, 1720-1724
楽曲情報
作詞:David Lin
作曲:Robert Wolf
歌:Airton Santos Araujo
リリース(日本):2023/1/4
登場作品:アークナイツ(Hypergryph · Yostar スマートフォン向けゲーム)
歌詞(和訳)
以下の和訳はサイト筆者が書いたものであり、公式からの情報ではないことにご注意ください。
I spent my life suffocating
Ignoring villains living inside me
Oh, my guilt is never-fading
It forever lives on
息の詰まる人生を過ごしてきた
内なる悪を無視してきた
あぁ 罪の意識は拭えずに
永遠に在り続けるのだ
Under my skin
Killing me from within
Will you stay a part of me for the rest of my life?
You tighten your grip Like shackles on both my wrists
Will you stay a part of me for the rest of my life?
皮膚の下に蔓延り
内側から私を蝕んでいく
お前は死ぬまで私と共にあるのか?
身動きも許さぬようなより強い支配で
お前は死ぬまで私と共にあるのか?
I once was a dreamer
But then I grew up and saw the real world
When I look in the mirror
I can almost see you crawling
かつて夢見たこともあった
しかし大人になり現実を見るようになった
鏡を見ると
這い寄るお前が目に映るのだ
Under my skin
Killing me from within
Will you stay a part of me for the rest of my life?
皮膚の下に蔓延り
内側から私を蝕んでいく
お前はこれから先も私と共にあるつもりなのか?
I bit my tongue for years
I choked back every tear
I carry you all on my own
‘Cause you insist you only feel at home
長い間 反論をぐっとこらえ
涙を流すこともなかった
一人きりだろうとお前を御してやる
それならお前も不満はないと言うのだから
Under my skin
You’re killing me from within
Will you stay a part of me for the rest of my life?
皮膚の下に蔓延り
内側から蝕んでいく
お前はこれから先も私と共にあるのだろう?
考察的なもの
曲の意味
エーベンホルツが彼の中で囁く声に対しての思いを歌った曲であった。
歌詞で示されている「お前」は声のことだろう。エーベンホルツはプロファイル内でも声のことを「お前」や「老いぼれ」と呼んでおり、その正体は「塵界の音」だろうと推測している(プロファイル第三資料)。
以下プロファイルのネタバレあり!
プロファイルの昇進記録でエーベンホルツと「声」の掛け合いの一部が見られる。そこの内容も含めて意味を考えてたいと思う。以下はその文面の一部抜粋である。
「不思議に思っているのだろう?なぜお前が声を出す時に黙れと言わなくなったのかを。」「言ってみるがいい。」「一つ目。どれだけ叫んでもお前を黙らせることはできないし、頭痛を和らげることもできないと気がついたからだ。ついでに教えてやろう、今の私にとって後者の方が大事だ。」「二つ目。お前が結局何であるか、私は未だに知らない。『塵界の音』の残響なのか、それとも私自身の幻聴なのか。あるいはいつか、思いもよらない理由のせいで、私までもクライデのように、耳をつんざく旋律の中で我を失う可能性だってあるかもしれない。」「だが私はもうお前を恐れてはいないぞ、老いぼれめ。それで十分だろう。」
音に飲み込まれたクライデを指した言葉があるので、時系列的にはSIDE STORY「塵影に交わる残響」の一件の後(ロドス加入後)だと思われる。
エーベンホルツは今までは声に対して抗おうとしていたが、プロファイル内では声を軽くあしらうような態度へと変わっている。これは歌詞の
I bit my tongue for years
I choked back every tear
I carry you all on my own
‘Cause you insist you only feel at home
この部分にも通ずると言える。
そして彼のこの変化は明らかにクライデらとの交流があったらだ。曲全体でも声に対しての思いの変化が受け取れるような部分があると思った。
和訳について
エーベンホルツらしいちょっと詩的な表現にしたいなと思い苦戦した。イディオムもちょっと多くて訳すのが難しかった印象。
Under my skin
直訳 :皮膚の下で
今回の訳:皮膚の下に蔓延り
ん?ほぼ一緒じゃんと思った人もいるだろう。そう、一緒である。
最初に訳そうとしたとき、私はこれは何かしらのイディオムに違いないと謎のシックスセンスを発揮させて調べていた。
実は"get under someone's skin"で「イライラする」「だんだん好きになる」という意味がある。内面に作用するから「心を動じさせる」みたいなニュアンスがあるのだろう。このせいでしばらく歌詞を「音に対してのイラつき」か「クライデへの好意」のどちらかかと思っていた。だが動画詳細の一節にこうある……
血脈の中で繰り返す囁きは、まるで皮膚の下に蔓延る棘。
私はこれ以上的外れな考えを深めることを止めて公式に従った。
You tighten your grip Like shackles on both my wrists
直訳 :お前は縛りを強くする 両手足を縛るように
今回の訳:身動きも許さぬようなより強い支配で
こちらもほぼ直訳のとおりだが、後半の「両手足を縛るような」という表現は少しまどろっこしい。今回は意味の近い言葉で訳させていただいた。
I bit my tongue for years
直訳 :長い間舌を噛む
今回の訳:長い間 反論をぐっとこらえ
イディオムとしては「言いたいことを我慢する」、「言葉を慎む」など。心の内に言いたいことはあるのだけど、それを言葉にはしない状態のことを指すらしい。
I carry you all on my own
直訳 :一人きりでお前を運ぶ
今回の訳:一人きりだろうとお前を御してやる
"carry"にも普段は使い慣れていない意味がある。そのうちの一つだった。意味として「支える」や「制する」などが含まれているのだ。今回で言うならエーベンホルツが声をうまくなだめるとか、共生することをいうのだろう。
‘Cause you insist you only feel at home
直訳 :お前が家のようだと感じられるだけだと訴えるなら
今回の訳:それならお前も不満はないと言うのだから
「家のようだと感じられるだけ」という部分について、家はやすらげる場所をイメージできるので、「安らげるだけ」と捉えられる。また、「安らげるだけ」ということは安らぎ以外の感情は抱かないことを指していそうである。ここでは「不平不満がない」という意味で考えた。
この訳はまず"home"の意味をとらえる必要があり、加えて"only feel"であるということが難しい。
歌詞としては、これならクライデの時のような暴走はしないだろと言っているのではないだろうか。
全体的に……
今回訳する上で、先に述べたようにエーベンホルツの声に対する変化が分かるような歌詞にしたかった。
歌で前半は「消えることのない罪の意識」や「鏡を見るとお前が這い寄ってくる」など、声に対しての嫌悪感や恐怖が示されている。一方で後半は、声を軽くあしらう、スルーするかのような態度へと変わっている。
これら部分から歌にも心情の変化が見れると思ったからだ。
さて、それではどうやってその変化を表そうかと思ったとき、
曲中で何度も使われるフレーズの訳を変えることで表すことにした。
そのフレーズがこちら。
Will you stay a part of me for the rest of my life?
これを私の訳では3つに訳し分けている。
お前は死ぬまで私と共にあるのか?
お前はこれから先も私と共にあるつもりなのか?
お前はこれから先も私と共にあるのだろう?
最初はエーベンホルツが自身の人生の残りを想像し、最期の死まで思うことで暗いイメージにした。
次に意味は同じだが、「これから先」と訳すことで前向きなイメージを持たせた。
最後に、声に対して「どうせ消えることなくずっといるつもりなんだろう」というエーベンホルツの余裕を持った態度が伝わるようにした。実際、プロファイルの昇進記録でも声に対してはもう余裕綽々といった感じだ。
というわけでここが今回の一番のこだわりポイントなのである。ここにすぐに気づいてくれた人がいるととっても嬉しい。この解説を読んで、あぁそういう考えもありだよねと思った人がいても嬉しい。そうはならんやろと思ったら意見をコメント等で教えてもらえるとありがたい……!
編集後記的なもの
今回はエーベンホルツのイメージソング『Ständchen』を翻訳して色々考えてみた。
この曲の好きなところは、クライデのことは直接歌われていないが、エーベンホルツの声に対する心情の変化からクライデが関係していたんだと気付けることだ。うまく隠しつつクライデへの思いがチラ見えするのが非常にアーティスティック。
このサイトの和訳記事では、「和訳の正確さ」と「読者の考える余地」に重きを置いています。
読者が正確に楽曲を捉え、理解を深めてもらえるよう、和訳にミスがあればぜひご連絡いただければ幸いです。
お読みいただきありがとうございました!
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