見出し画像

【ネット歯科大】歯周病をツメに置き換えて考える

 歯周病は、歯ぐきの病気です。
 
 口の中というのは、意識しないとなかなか目が行き届かない場所です。
 
 どうも歯の調子がよくないなど、気になるときに鏡で口の中を見ることはあるでしょうが、問題のないときから口の中の状態を気にしている方は少ないと思われます。
 
 このため、歯周病は見逃されがちです。歯周病の治療を受けている人よりも、かくれた歯周病をそのままにしている人の方が多い、とされています。
 
 そこで、見やすい場所の例として、歯を爪(つめ)に置き換えて歯周病を考えてみたいと思います。
 
 爪を歯と考えると、爪の生え際がちょうど歯周組織にあたります。歯周組織とは歯を支えている部分のことで、やわらかい歯肉の内部に硬い骨が存在しています。歯周病は、歯周組織が失われていく疾患です。
 
 歯周病は細菌が原因となる病気であり、歯周ポケット内部の歯の表面に細菌が定着します。歯周ポケットとは歯と歯ぐきのすき間が4mm以上の深さになった状態を表し、深い歯周ポケットでは10mmくらいになることもあります。
 
 これを爪で考えてみると、爪の生え際から深部、手首の方向に10mmほどの空洞が形成されている状態と考えられます。しかも、その内部にはびっしりと細菌が存在しています
 
 細菌と接触しているやわらかい方の組織表面(爪や歯ではない方)は連続性が失われており、少しの刺激でも出血しやすくなっています。細菌と免疫系の細胞が常に戦っている状態、すなわち「炎症(えんしょう)」が持続しています。
 
 こう考えてみると、歯周病もあなどれないと感じるのではないでしょうか。なお、実際に爪の周囲が細菌感染によって腫れる病気もあるようです。
 
 歯を爪に置き換えて考えてみていますが、もちろんまったく同じと考えることはできません。よく考えると、いろいろ違いがあることに気づきます。
 
 たとえば、爪は伸びるので定期的に切る必要がありますが、歯は伸びません。ちなみにヒト以外の動物では歯が伸びる種類もあり、ウサギでは月に1㎝も伸びるそうです。
 
 話を戻すと、ヒトの歯は定期的に伸びたりはしません。
 
 このことを歯周ポケット内の歯の表面についた細菌と合わせて考えると、除去しなければ何十年も細菌がつきっぱなしであるといえます。細菌は石灰化して歯石になりますので、歯石が何十年もついたまま、ということは現実的によくあります。
 
 成人の有病率が70-80%といわれるように、歯周病はありふれた病気です。しかし、視点を変えて考えてみると、その危険性を感じやすいかもしれません。
 
神奈川歯科大学 青山典生

いいなと思ったら応援しよう!