
あれが「サイトウ・タクミ」なの!?遠くてあんまり見えないんだけど・・・
夕張国際ファンタスティック映画祭で、「サイトウ・タクミ」が誰なのか分からないまま、私以外ぜんぶ「サイトウ・タクミ」の追っかけであった思い出の続きである。
ついに「サイトウ・タクミ」が誰なのか分かるイベントに行くことになった。
流石に会場はとても混雑していて、入場するタイミングが遅かったので相当に遠いところから「サイトウ・タクミ」と思われる人の存在を確認した。登壇している人たちを眺め、「女性ではない」「EXILEの手下ではない」「お笑い芸人ではない」「ベテランの映画監督ではない」などの消去法をして探し抜いた結果、あれが「サイトウ・タクミ」に違いない、という男性がいた。長髪で、ちょっとデザインにこだわった山高帽、のような帽子をかぶっていた。
かなり遠くから見たので顔はあまり見えない。シルエットの感じからすると・・・長髪のスナフキン、といった趣であった。彼の魅力がどれほどのものなのかは、その距離からは分からなかった。
とりあえずあれが「サイトウ・タクミ」なのだろうと思って私はガラケーのカメラで写真を撮ろうと試みたが、なにぶんガラケーのカメラには今のiphoneのようなズーム機能はないので、キシー!カシャー!などと、ひと時代前の音を立てるばかりで、「サイトウ・タクミ」の魅力を映し出してはくれなかった。ぼやけていた。
あのスナフキンに私の宿の宿泊人たちは心から魅了されているのだった。何か解せない気持ちになった。
そして私はどうして、「実はサイトウ・タクミが誰か知らないままに夕張にいる」ことを、追っかけである人々に打ち明けられないのだろうと思った。追っかけの人たちと一緒にならないように、避けるように行動をしていることが、重荷に思えてきた。私は、れっきとした映画フアンなのだ。一生に一度かもしれない、夕張国際ファンタスティック映画祭での行動の基準を、「同じ宿に泊まるサイトウ・タクミの追っかけたちの行動範囲から離れる」ことを軸にしている、そんなふがいなさが悲しくなってきた。高い航空券を払い(LCCで行ったけど)こんな遠い夕張まで来たのに。「サイトウ・タクミ」を知らない私にとって「サイトウ・タクミ」の話しかしない女性の集団たちと同じ宿でずっと過ごさねばならない苦痛はかなりのもので、しかも、“どうしても「サイトウ・タクミ」が誰なのかを知らないなんて言えないよ自分”という状態に陥った。そんなちっぽけな人間である自分。
ふがいない僕は雪を見ながら、必死に夕張の端っこの、「サイトウ・タクミ」の追っかけが来なそうなスペースで一人、カップ麺を啜ったりしながら過ごした。ユマ・サーマンに似た黒人とばかり付き合ってきた関西出身の女性はその後も私に頻繁にメールをくれて、今どこにいますか?一緒に飲みませんか?などと、言ってくれるのだが、私は彼女に「サイトウ・タクミ」を知らないことが言えなくて、どうしても一人で行動がしたかった。彼女はいい人だったが、一緒に行動をしなくてもよいように考えるがあまりに、活動範囲が制限されてしまったことが、とても辛く感じられてきたのだった。
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