315プロダクション所属アイドルのイメ短歌を探してみた
「この曲、この人っぽい!」というイメージソング(いわゆる「イメソン」)があるなら、「イメ短歌」があってもいいじゃないか
これを書いている人間はSideMのPをやりつつ短歌を詠んでいる人です。そしてSideMとはまったく関係ない歌集を読んでいるのに「うわーこの歌、あのイベストのあのシチュエーションぽすぎる、誰かとこの気持ちを共有させてくれ」と思うことがよくあります。
「イメソン」はかなり一般的な概念になりましたが、「イメ短歌」概念がもっと広がれば、「短歌、なんか流行ってるぽいけど縁がない」という人にも読んでもらえるのでは? ということで、SideMのアイドルたちのイメ短歌を探してみました。
「あわよくば歌集を手に取る第一歩にしてもらえたら」という邪な気持ちもあるため、「これを書いている2023年12月現在、一般流通している比較的新しい歌集から選ぶ」という縛りを設けて選んでいます。出版年がそこそこ古い本もありますが、上げているものは多分今も買えるはず。今年出たばかりの歌集も多いです!
歌にはすべて作者名と出典も併記しているので、「何だこれおもしろそう」と思ったらぜひ探してみてください。
あとこれは先にお詫びとなりますが、全員のイメ短歌は出せてません、今回は18首だけです!出せなかったアイドルの担当さんごめんなさい、ご自分でも探してみてください!
なお掲載はTake a StuMp! のユニット順になっています。
うわ……名曲すぎ…?
花園百々人
ハムレタスサンドは床に落ちパンとレタスとハムとパンに分かれた
/岡野大嗣『サイレンと犀』
(一首目から重めの話題ですみません、と先に謝っておく)
そもそも別々だったものがたまたま一緒になっていただけできっかけがあればまた元の、別々の姿に戻る。それが百々人の家族のことのように見えました。
眉見鋭心
隣席のしずかな寝息聞きながら映画の中のソビエトは冬
/小島なお『展開図』
「秀と百々人なら隣で寝ている。レッスンの疲れの出たのだろう。最近の映画に比べるとテンポがゆっくりで睡魔を誘うかもしれないな」
@眉見家のシアタールーム
榊夏来
「変わったね」君に言われて「変わったよ」変わらなければ続けられない
/鹿目凜『アイドル歌会公式家集Ⅰ』
歌の作者は実際にアイドルの方なので、作者の思う「君」はおそらく「ファン」なのですが、夏来くんに寄せて読むと「君」が旬くんのように読めます。
夏来くんが変わったのは間違いないけれど、旬くんの隣にいるという一点はこれから先も変わらないことを思うとよりじんわり来ます。
伊瀬谷四季
貸せるものがないから歌をひとつだけいろんな声で何度も唄う
/平岡直子『みじかい髪も長い髪も炎』
先週の土曜、四季くんとカラオケ行ったらいろんな歌い方してくれて、ほんと楽しかったんですよ。それは彼にとって「オレにできること」が何よりも「歌」だからだと思うんです。(以上、なかった記憶)
九十九一希
あなたの外にあなたのたくさん読んだ本があつて可笑しい うれしくて笑ふ
/睦月都『Dance with the invisibles』
「九十九一希と一緒にただもくもくと本を読んでるだけの合宿」に参加したい。合宿四日目に、こういうことぽろっと言ってほしい。
渡辺みのり
すてきな人 花に囲まれている 生きものはいつもその扉から出ていく
/野村日魚子『百年後 嵐のように恋がしたいとあなたは言い 実際嵐になった すべてがこわれわたしたちはそれを見た』
「生きもの」って?「その扉」って? と、少し不思議な歌。みのりさんのイメ短歌として読むといろいろ考えてしまう。あと、本のタイトルが引用歌より長いですが、本当にこういうタイトルです信じてください。装丁も大好き。
葛之葉雨彦
この人にもあると思った洞に挿しいれてそのまま帰らぬ手首
/榊原紘『koro』
雨彦さんならこういうひやっとする経験も少なからずしていそうだし、今では冷静に受け止めることもできそう。この歌から始まる物語を読んでみたい。
北村想楽
氷はすぐに死んでしまうね手のひらのうえで浮かべたグラスのなかで
/山崎聡子『青い舌』
北村はこういうこと考えそう。(褒めてます)
古論クリス
クリオネは氷の下にほのかなる命を点す わたしはここです
/杉﨑恒夫『パン屋のパンセ』
アイドルとしての自信をつけた今のクリスさんなら、どんな状況に置かれてもあのよく通る声で高らかに「私はここです」って言ってくれると信じています。古論クリスへの絶対的信頼。
Smile Again「犬猿の仲」
僕らより長生きをする亀を飼おう。僕らのいない庭を歩くよ
/千種創一『千夜曳獏』
これだけ劇中劇ネタです。書いてるのがドラスタPだから許してほしい。モバエム2022年V.Dイベント『Smile Again』の、天道と桜庭の担当パートイメージ。生物教師の柊(桜庭)は学校でリクガメのジュリエッタ(♂)を飼っていて、同僚の朝日(天道)はジュリエッタに構いたがっています。
前から旧Twitterで「この短歌スマアゲすぎる」と騒いでいたので見たことあるかたおられるかも。
桜庭薫
ハンカチが鳩に変わって やるせない ハンカチに魂がないこと
/佐藤弓生『モーヴ色のあめふる』
やるせない……(涙)
柏木翼
灯さなねばならないならばあなたが通る搭乗口のあかりを
/榊原紘『koro』
こういうジェントルな優しさを自然に出せるのが柏木翼のズルいところだよ!!!!!
硲道夫
最大の素数の更新くり返しわたしたちという単位でいよう
/石畑由紀子『エゾジカ/ジビエ』
S.E.Mという単位は最高だな……!
山下次郎
おじさんであるからわれは〈思い出し辛い〉のときにだけにゃあとなく
/中島裕介『polylyricism』
初めて見たときから「この歌、あまりにも山下次郎だ」と思ってました。辛いこと思い出してどうしようもないとき、周りに誰もいないのを確かめてから「にゃあ」って呟いたこと、山下次郎は多分ある。
そして舞田あたりに見られてると思う。
神楽麗
ほころびた声がわたしへもどるとき完全五度の重なりをもつ
/濱松哲朗『翅ある人の音楽』
一旦は音楽を見失った麗さんが、Altessimoとしてやっていくことに活路を見出したとき、乱れていた声の周波数がすっと整って美しい響きを取り戻した。そんなイメージが浮かびました。
都築圭
ゆめ冷えてあるひるさがり楽想の囮となりて五線紙はあり
/鈴木加成太『うすかみの銀河』
うたた寝からめざめた都築さんそのものじゃないですか…?
大河タケル
なついた猫にやるものがない 垂直の日射しがまぶたに当たって熱い
/永井祐『日本の中でたのしく暮らす』
歌意もタケルくんぽいのですが、破調かつぶつ切りなリズムがタケルくんのちょっとそっけない感じを彷彿とさせて、大河タケルの歌としか思えない…
円城寺道流
飼い慣らすべし獣ほど猛々しくなくてそれでも日々とは獣
/中澤系『uta0001.txt』
「それでも日々とは獣」かっっこいいー!道流さんが穏やかな人柄で、
でも熱いものを胸に秘めてる、というのがすごく好きです!
※以上は、2023年12月23-24日 SideM非公式Webオンリー『ゆるいパバステ3』での展示を、一部修正し再掲したものです。
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