死がこわいので、死について160人に訊いてみたよ
メメント・モリ(挨拶)!
死ぬのってめちゃくちゃ怖くないですか。2022年現在、日本の平均寿命は男性81.47 年、女性87.57年という数字を記録している。まさに世は大長寿・メメントモリ時代というわけだ。はや三年が経とうとしているCOVID-19の流行、また戦争のニュースは、人々にとって死をより近くに認識するきっかけとなったかもしれない。一方で、これらの事象に死の恐ろしさや唐突さという一面こそ実感すれども、「いかに死ぬか」「自分にとって死とはなにか」といった思考を巡らせる段階まではなかなか到達しないのではないだろうか。
長々と前置きをしてしまったが、記事の本題に入ろう。筆者はマッチングアプリのプロフィールに各人の死生観を記入する欄を作ってほしいと思っている。それくらい自分は他人の死生観に興味があり、そして冒頭でも述べたように死ぬのがめちゃくちゃ怖いので、つい考えてしまう。今回は所属するDiscordサーバーのアドベントカレンダー企画の一環という口実もあり、堂々とアンケートをとることができた。かなりセンシティブな話題であったにもかかわらず、結果的に160件もの回答をいただいた。ありがとうございます。また、メールアドレスを収集しないタイプのアンケートだったため、荒らしの襲来を覚悟していたが、荒らしと思われる回答は1件だけだった。
本記事では各設問ごとに結果の概観を行い、また記述型の設問では、筆者が良いなと感じた回答を取り上げるという形式を取る。
1.アンケートの概要・回答者の属性
本アンケートは自らの所属するDiscordサーバーにおいて、2022年12月初旬にGoogle Formsを用いて行った。あくまでも学術的なアンケートではないし、回答者群にはかなり偏りがある。また、筆者は統計手法などの知識が全くないため、なんらかの考察を行い結論を出す、いい感じの分析を行うという意図はないことを先に申し上げておきたい。
設問は全13問であるが、記事にするにあたって、大まかに4つのセクションに分けた。
A. 回答者の属性
B.「あの世」について
C.「神や仏」また「輪廻転生」について
D. 死の嫌なところ、死に関する理想
A.回答者の属性 についてはこの段落で触れ、それ以外は各セクションごとに分けて見ていきたいと思う。
問1. ニックネーム(無記入可、ここでは省略)
問2. あなたの性別を教えてください。(回答必須)
男女比に関しては、想像していたよりも偏りは少なかった。
問3. 現時点でのあなたの属性を教えてください。(回答必須)
年齢よりも回答者の社会的属性(学生かそれ以外か)で変化する部分が大きいのではないか、と考えてこのような選択肢を置いたが、かなり分かりにくい選択肢となってしまった。
アンケートをとったDiscordサーバーのアクティブ年齢層が、比較的変わらずにそのまま反映されているのではないかと思う。高校生16.9%、大学生43.8%と、回答者の6割が学生で占められているのは驚きだ。
2.「あの世」について
死について考える際に、人によって最も意見が分かれるのは「あの世」があるかどうか、「あの世」があるとすれば、それはどのようなものか、というトピックではないかと思う。私たちは死んだあとどうなるのか?どこへ行くのか?を説明するために、人間は数千年以上にわたってさまざまな宗教や哲学という手段を用いて思索を重ねてきた。それほどに、人間にとって死後の世界とは興味深く、そして畏怖の対象となるものだ。その重要性から、今回のアンケートでも「あの世」について3つの設問を設けた。
問4.あなたは「あの世(来世、死後の世界、輪廻転生などのすべてを指す)」をどれくらい信じますか。(回答必須)
「あの世」を全く信じていない、あるいはあまり信じていないという選択肢が6割を超えた。一方で、「あの世」を強く信じているという選択肢は2.5%にとどまった。
問5. 「あの世」があると回答した方は、「あの世」とはどのような場所、空間であると考えるか教えてください。(自由回答)
記述式の自由回答の設問だが、41件の回答をいただいた。ここでは一部しか紹介することができないので、大まかにいくつかのタイプに分けてみたいと思う。
・順番待ち、輪廻転生タイプ
このタイプが一番多く、回答全41件の約半分以上を占めた。死んですぐに輪廻転生するという回答は当然ながら、「順番待ち」というイメージを共有する回答がいくつかあったのが興味深い。
番号の印刷された紙を機械から取ってベンチで待つみたいな、市役所方式だったらちょっと嫌かも。あの世役所って食堂とかあるかな?あったらカツ丼セット注文しちゃおうかな(もうカロリーとか胃もたれを気にしなくていいので)。
ダーツの旅みたいで楽しそう。
この方の書き方から見るに「輪廻転生できる方がよい」と捉えているのかな?と感じたが(違ったら申し訳ない)、そうであれば、輪廻からの解脱こそが目標という一般的な輪廻転生の考え方とは逆なので面白い。
・何もない、無タイプ
次にこのタイプが多く、その中でもほとんどは無のなかでも自我だけが存在するという考え方を前提とした回答だった。
これめちゃくちゃ嫌すぎる!五億年ボタンよりも嫌なやつじゃん。死にたくね〜〜〜
・その他(天国と地獄、楽しい場所、など……)
他にもさまざまな回答をいただいたが、とりあえずひとまとめにして紹介してみる。思ったよりも「天国」や「地獄」があると考える人の割合が少なかったのが意外だった。
西洋的・日本的というイメージの差が面白い。確かに「天国」と「地獄」という言葉で思い浮かべるイメージは、自分もそんな感じだなぁと思った。皆が持つ信仰というより、創作物に由来する部分も強いのかもしれない。特に地獄に関しては、日本的な地獄は責め苦のバラエティーが豊かすぎるしエンタメ性が高い。
また、最後の審判という概念に基づくキリスト教的な西洋の天国と東洋の天国(浄土?)、西洋の地獄≠東洋の地獄といったズレを比較してみると面白いが、本題ではないので割愛。
ファンタジーっぽくていいな~。筆者も死んだら乳白色の球体になりたい、とかねてから思っていたため、この回答には結構共感するところがあった。
足湯?
問6. (上設問の回答とは別に)「あの世」の存在について、あなたの願望はどのくらいありますか。(回答必須)
問5と比べても、かなり拮抗した結果と言えるのではないだろうか。「あの世」を信じないという回答が多かったことから、「あの世」などない方が良いという回答が多くを占めると思っていたが、実際はそんなことはなかった。
また、「関心がない」という回答が16.9%を占めたことも興味深い。筆者は「あの世」があるかどうかについてよく考えるため、「関心がない」と言い切ることができるのは、ある意味潔く感じ、羨ましいと思わされる部分もある。まあ考えてもしゃあないもんな(と割り切ることができればどんなにいいか)。ナハハ……。
3.「神や仏」また「輪廻転生」について
前の設問と内容が若干被っているものの、さらに「神や仏」と「輪廻転生」それぞれを信じるかどうかを問いたかったため設問を分けた。日本人の宗教観の希薄さ、多神教と一神教の世界観の違い、といった話題はたびたび提起されるが、実際に(特に若年層が)どのような認識を持っているかが知りたかった。
問7. あなたは「神」あるいは「仏」の存在は信じますか。(回答必須)
「どちらの存在も信じない」という回答が6割を超えた。割合だけを見ればかなり多く感じるが、実際はなかなか「信じる」と「信じない」という両極端な立場に分けられるものではないため(普段は信じないが都合のいい時だけ神や仏に祈る、という人も多いのでは)、この選択肢はあまり適切ではなかったかもしれない。
票数自体が多くないのであまり参考にはならないけれども、「神」を信じるが「仏」は信じないという回答が10%なのに対し、その逆「仏」を信じるが「神」は信じないという回答が5%だったのは面白い。本アンケートは宗教観を問うことが一番の目的ではなかったため、「神」は唯一神か多神教の神か、ということは特に指定しなかったが、この設問に関しては回答者がどのような「神」を想定したかが気になった。
問8. あなたは「霊魂」の存在を信じますか。(回答必須)
問5で「あの世」全体の存在を信じるか質問したが、その結果と似たグラフとなった。しかし、この設問では「強く信じている」「割と信じている」「わからない」の割合が増えている。
私たちにとって「あの世」とは、基本的に死なない限りその存在を体感できないものだ。どこか空間的、あるいは時間的に隔たれた場所であり、いわば現世の常識が通用しない場所でもある。一方で、「霊魂」は多くが幽霊や心霊現象というかたちで現世に表出するという性質上、ある程度は現世の常識をベースにして想像することができるため、「あの世」よりも身近に感じやすいのかもしれない。
問9. 「霊魂」の存在を信じると回答した方で、かつ一般的な「幽霊」の存在を信じる方は、「幽霊」は死後どれくらいの年月で消滅すると思いますか。(自由回答)
幽霊って結局いつ消えるの?放射性物質みたいに半減期があるの?永遠?
この質問は、43件の回答をいただいた。
・ちゃんと期間が定められているタイプ
結構短めの回答。49日という回答は3件あったが、49日法要があるので割と一般的な認識なのかもしれない。
こちらはわりと長めの回答。400年だとすると、関ヶ原合戦で死んだ人の幽霊はもう消えちゃったのかな。ちなみに、期限が決まっているタイプの回答の中で最短は一週間、最長は1000年だった。
・特に期間が定められているわけではないタイプ
特に決まった期間はない、思いの強さで変化する(満足したら成仏する)という創作物でもよくあるタイプ。このタイプの回答が最も多かった。
進路指導みたいで面白いな。成仏は団体戦!自分まだ幽霊やれるっす!
問10. 輪廻転生はあると思いますか。(回答必須)
この設問も、問4の「あの世」の存在、問8の「霊魂」の存在に関する設問の結果と似たようなグラフとなった。問4, 問8, 問10のグラフを比較しやすいように並べてみたところ、似たグラフだが微妙に異なることがわかる。
4. 死の嫌なところ、死に関する理想
このセクションに分類した設問は、筆者が受講した大学の講義(死生学に関する内容)でも用いられていたものを参考にした。その際に行われたアンケートは選択式だったが、今回は自由回答という形式をとったことで、こちらは多様性がみられる結果となったのではと思う。
問11. あなたにとって、最も嫌な死の性質とはなんですか。(回答必須)
この設問は選択式の回答に加えて、該当する選択肢がない場合は記述回答も可能という形式をとった(本当は「その他」の記述回答欄を設けず、円グラフにするつもりだった。単なるミス……)。用意した選択肢は以下、回答が多かった順に羅列する。「その他」の回答は一部引用して紹介したいと思う。
・死ぬまでの苦痛があるだろうこと(38.1%)
・以後どのような体験もできなくなってしまうこと(33.8%)
・もし「あの世」があるなら、そこで何が起こるか不安(5%)
・死後に自分の身体に起こるかもしれない変化(2.5%)
・全ての計画が終わりになること(2.5%)
・家族を養えなくなること(1.3%)
圧倒的に上位二つが多かったが、筆者が受講した講義でも似た結果になったような記憶があるため、この結果はある程度の普遍性を持っているのかもしれない。最後の「家族を養えなくなること」の選択肢は、回答者の年齢層や性別によって割合がだいぶ変わりそう。
「その他」の記述回答では、主に「死後の無への恐怖」、「死んだらすべてが終わってしまうこと」、「遺された人の悲しみ」といった意見が多く見られた。
悲し……。
問12. あなたの理想の死に方を教えてください。(自由回答)
記事にするにあたって、生々しい回答は一応そのまま掲載することを避けた。
・突然死タイプ
苦痛のないことを求める回答の中でも、睡眠中に突然死といった内容がかなり多かった。ピンピンコロリならぬスヤスヤコロリはやはり魅力的だ。核爆弾や自然災害、事故で即死といった回答も多かったが、それを含めると全147件の回答の2/3程度を占めるのではないだろうか。
最高だけどせっかくなら死ぬ前にオムライス食べておきたいかも。
・心の準備をしたいタイプ
一方で「死ぬタイミングを決め(知り)たい」といった回答も、突然死には届かないにしろ、一定数あった。
・死なば諸共タイプ
世界滅亡の感じは確かに知りたい!どんな感情が生まれるんだろう。
・その他
色欲。
どうせ死ぬならド派手に頼むゾ(ARuFaさんがホワイトボードに描いたやつ)だ……。
他の患者がビックリしちゃうだろうな。でもみんなで踊ればいいか。
カニからも回答をいただきました。
問13. あなたが死んだあとの理想の死体の取り扱われ方を教えてください。(自由回答)
この設問は140件の回答があった。
こんなに真逆な回答が連続で来た。
似た回答がかなり多かったため、特に多かった意見のグループ分けを行ってみたところ、以下のような結果となった。なお、「火葬したあと海に散骨してほしい」のような複数のグループをまたぐ回答は、それぞれのグループ両方に計上している。
①死んだ後なのでどうでもよい、希望は特になし(約40件)
②遺族がもっとも良い方法・手間がかからない方法で(約20件)
③火葬(約40件)
④海への散骨、自然葬(約15件)
⑤臓器移植や解剖、食物連鎖(約10件)
⑥合成ダイヤモンドやアートなどにしてもらう(約5件)
①死んだ後なのでどうでもよい、希望は特になし
どうでもよいという意見が多いだろうとは思っていたが、ここまで多いのは予想外だった。
②遺族にとって最も良い方法・手間がかからない方法で
内容はかなり①と被るが、遺された人たちの気持ちや手間を重視する回答はこちらにも分類した。
③火葬
火葬後の遺骨の取り扱われ方に関しては、墓に入れられたいという回答よりも、後述する海への散骨・自然葬を希望する回答が多かった。
とても個人的な思い出だが、旅行で下関を訪れた際に海洋散骨の看板を見かけて、「壇ノ浦に散骨してもらう」のはかなり魅力的だな~と割と真剣に検討したことがある。
怪物という名前でこの回答、迫力がある。
「焼かれる私の身体のために手紙を書いてほしい」という言葉がいいですね。
④海への散骨・自然葬
埋葬や散骨の場所を指定する回答の中では、圧倒的に海洋散骨を望む意見が多かった。
一方でこのような意見も。
犬が走るところにばらまかれるのいいな~
⑤臓器移植や解剖、食物連鎖
科学への貢献系の回答、また自然葬の中でも鳥葬は特に食物連鎖の要素が強いと考え、このカテゴリに入れた。
人間の肉って美味しいのかな。
⑥合成ダイヤモンドやアートなどにしてもらう
全体から見るとけっして多くはないにせよ、ダイヤモンドや遺骨アクセサリー、あるいはミイラやアートという、何らかの形で後世に残してほしいという回答もあった。
・その他の回答
面白いけどトラウマになりそ~~~~~~
この方は全回答のなかでおそらく唯一、直(じか)で埋葬を望んでいて面白かった。骨って究極の裸なのかも。
ワンチャンあるかも!
おわりに
日常生活の中で他者の死生観(といっても本記事は「死」のほうにフォーカスしているが)、ましてや不特定多数のそれ、を聞く機会は少ないのではないだろうか。筆者のとても個人的な興味から始めたアンケートで、色々と反省点はあるものの、この記事がほんの少しでも死について考えるきっかけとなればとても嬉しい。
それでは皆様、よきメメント・モリを……。
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