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変な店 優しい心 あふれてた

カカオの実がカカオビーンになるまで

 チョコレートって、発酵食品なの!?
 黒地に白いチョウークで書いた看板が店先に立てかけられていた。エ!ホント?

 散歩で前を通るたびに、「こんなところにチョコーレート店を開いて。誰が買いに来るのだろう。」と不思議に思っていた店。近所の消滅寸前の商店街の空き店舗の1つ。3年くらい前に開店。ガラス戸越しに見える店内は薄暗く、およそチョコレート店らしくない。チョコレート好きの若い人が、起業をしたか。それにしては、商売気っが感じられない。そんな店先に突如、キャッチーな看板が置かれた。

 土曜の朝のNHKニュースに、関東各地の話題を取り上げる「土曜すてき旅」なるコーナーがある。先週は、わが町練馬区大泉学園が舞台で、ワインの醸造・販売所と手作りチョコレート店が取り上げられた。
 オー!あの店じゃないか?それにしては店内が明るいなー。やっぱり、違うか?

 これまで、気になりながらも素通りしていた店に、入った。見ていたスマホを慌てて机の上に置いた若い女性が、「いらっしゃいませ」とニッコリ。
「この店、NHKのニュースに出ました〜。」
「えー、出ました。」
「やっぱり。店の前の看板に、チョコレートは発酵食品とあるのが、前から気になってて。」
「カカオの実から取り出した種子を発酵させるんです。発酵させた種子がカカオビーンとして、ガーナやエクアドルから日本に入ってくるんです。」
「そうなんですね。全然知らなかった。ところで、・・・」
 笑顔の応対に気をよくして、色々と質問をぶつけた。

 店に並んでいるのは全て、福祉事業所で作った品物である。福祉事業所では、焙煎したカカオビーンの皮剥きからチョコレートになるまで、全工程を障害者がやっている。
 店も福祉事業所が出しており、店にいた女性もそこのスタッフ。口コミで評判が広がり、不便な場所にも関わらず、少しずつお客が増えている。

 変な店と思ったのは、意外にも、障害者に働く場を提供する福祉団体の活動拠点だった。店に並んだ品物を2つ買い、「頑張って下さい」と言って店を出た。

(2024.10.26)

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