出血しないし、毛も伸びないし
入院前の検査と説明があった4月下旬から2週間後に、私は入院・手術することになる。
子宮のある生活が残り2週間となったが、不正出血は毎日ちょびちょび出るくらい。
塊をいくつも伴うような激しい大量出血は、2月の末以来、ないのである。
最後の最後、ダダーッと出て、「もういい、こんな子宮さっさと捨てちまえ!!」と潔くおさらばするつもりだったのに。
こんなハズジャナカッター。
大量出血せず、痛みもなくやけにおとなしい子宮。
ジエノゲストが今になって効いてきたのだろうか?
効いて欲しいタイミングはもっと他にあったのだけれど。
「もう大量出血したりしないから、子宮取るなんて言わないでよ…」などと、しおらしく縋りつかれているような気さえしてくる。
どんなメッセージを寄せてこようが、子宮は何度も私を裏切ってくるだろう。
不義理なやつとして恨みを抱えたまま、さようならと言いたい。
ジエノゲストを飲んで、実感したことがひとつある。
それは、ムダ毛の生育エネルギーが削がれていること。
伸びる速度は格段に落ちているし、抜いてからの生え始めまでの時間も長い。
毛自体が細く薄くなっているようにも思う。
眉毛、口周りの産毛、腋毛、腕毛、乳首毛、へそ毛、陰毛、すね毛、果ては足の親指の毛。
あらゆるムダ毛が、元気を失ったように見えた。
ジエノゲストを飲むメリットといえば、それくらいか。
私は幼い頃から毛深いほうで、腋毛も陰毛も生え始めるのが早かった。
ジエノゲストが作用している卵巣のホルモンには、毛を生み出す力があるという。
高校時代の同級生が、卵巣嚢腫を摘出したと話してくれたことがある。
「取ったやつの中身見たけど、めっちゃ気持ち悪かったよ。髪とか爪とかの原形が入ってんの」
想像するに恐ろしいが、髪や爪だけではピノコは造れない。
毛を司る器官のホルモンをいじる薬であるから、ムダ毛が減ったのは納得できる。
代わりに白髪が増えたような気がするが、それは偶然、気のせいかもしれない。
最後の大量出血から2ヶ月半もの間、結局出血も落ち着いたまま、手術に挑むことになる。
悔しいけれど、なんだか名残惜しい。
別れの間際、本気で憎むくらい悪者になって欲しかった。
そのほうがすっきり子宮に別れを告げて、私と先生は強敵を打ち負かした英雄になれる。
そしてその後、未練も後悔もなく生きていけるのに。