⑧いなくなれ、群青ー理想の押し付け
『いなくなれ、群青』河野裕 1/5
主人公2人とも感情移入できず面白くなかった。七草はネガティブで暗すぎ、真辺は人の気持ちを考えずに自分の正義を押し付けるのにうんざり。回りくどい比喩表現に村上春樹みを感じた。
七草が、真辺だけはそのままで、純粋な完璧主義者のままで何一つ損なわれずにいて欲しいってひたすら願い続けているのが重い。自分の理想を人に押し付けて縛ろうとするな。女子に理想を押し付けるところも村上感ある。
Fさんが、「好きな人にそのままでいて欲しいと願うことは人を縛る呪いになる」って言ってたけどそれに近い感じ。真辺が自らの完璧・理想主義のせいでどれだけ周囲と対立し生き辛い思いをしてきたか、七草が一番よく分かってるはずやのに、現実世界での自身との再会によってようやく真辺がその部分を捨てて周囲と関わりやすくなろうとしているのに、彼女が大人になろうとしているのに、いつまでも子どもみたくうだうだ人に理想を押し付けやがって。
と、ここまで書いて、周囲と折り合わない人格を捨てていくことが大人になることやとして、自分の憧れの人がまさに自分が憧れていたその部分を大人になるために切り捨てた時、止めたいと思う七草の気持ちも理解できる気がしてきた。でも、真辺がそれで生き易くなるならやっぱり歓迎すべきなのでは?