のら庭っこ便り#013 2023 7/23-8/6 弐 今はまだ見えない
※この記事は、虫の写真がテーマです。苦手だけど慣れたい方に向けて、風景的に撮っています。
夏の終わりはいつも、頭と体が湿度に絡め取られるよう。ようやく夜風が涼しくなってきましたが、今年は本当に暑い夏でした。
今や遠い思い出となりつつある、8月上旬までののら庭の住人たちの様子を振り返ります。
7月末、黒もちトウモロコシがヒゲを伸ばし、実を膨らませ始めました。
ツルありインゲンのツルを受ける支柱として植えているのですが、去年よりさらにしっかり育つようになってくれています。
あまり甘くない種類だからか、アワノメイガに選ばれることもなく、食害はみられませんが、何を食べに来ているのか、居心地が良いのか、
虫たちがそこかしこに身を寄せています。
虫に好かれても問題ない野菜がある一方、実を結ぶことに支障が出ている野菜も。
カメムシの集合住宅とかしている、ピーマンと、甘長トウガラシです。
去年は見かけなかった種類の茶色いまだらのカメムシたち。
同じ仲間でも普通のトウガラシにはついていないし、ナスにもほとんどいません。
カメムシは種類ごとに好む植物が異なるといいますが、同じ仲間でもより好ましいものがあるようです。
さて、のら庭で地球における人類並みに目立つのが、ショウリョウバッタ。
最初の年は、オンブバッタがいっぱいいたのですが、3年目になった今はオンブバッタより遥かにショウリョウバッタが多いという印象です。
オンブバッタとショウリョウバッタは、そっくりですが別種の虫。
ショウリョウバッタはもっぱらイネ科の草を食べ、オンブバッタの方が多様な草を食べます。
なんて、最初から知ってたかのように書いてますが、たった今検索結果に表示された生成AIの受け売りです。
同じようで、毎年変わる虫たちの勢力図。それは、草の種類の変化にも関係しているのでしょう。
それで言えば、去年まではコセンダングサやアメリカフウロが非常に多く生えていましたが、今年はメヒシバが地表を覆っています。
草が背を伸ばしてくると、草生を抑えるため適当な高さで刈るのですが、単一の草が増えてしまったということは、ちょっと刈りすぎたのかもしれません。
ハナムグリも、おそらく似た理由で最初の年より遭遇率が減った虫のひとつ。
わたしがこの場所をいじりはじめたころ、となりの斜面はごく一部にキクイモが生えており、また多くのニラが生えていました。
秋になると、ニラの花にたくさんのハナムグリが大集合。極楽浄土さながらの風景でした。
しかし、翌年からキクイモが斜面一帯に広がるようになり、ニラはキクイモを抑えるための草刈りで一緒に頭を刈られるため、花をつけにくくなりました。
キクイモは地下茎で増えるので、キクイモのために斜面全体の草を刈ると、キクイモ以外の草も花をつけにくくなります。結果として花がなくても増えることができる、キクイモばかりになったのでしょう。
それに合わせて、集まるハナムグリの数も減ったように感じています。
周囲の環境を含め、どこかが変わればほかも動いていく。
そのスピードは、想像するより早いのかもしれません。
そういう意味で、写真で記録していくことの意義を感じます。
文字や図で残すと、その時点で注目していないものは削ぎ落とされてしまいますが、
写真は撮ったときには気づいていない情報も写りこみ、それが後から貴重な証拠となることがあるからです。
「エビデンスがあるかどうか」という考え方は、一見事実を大切にしているようで、今の自分には見えていないものを無視しており、事実の多くをとりこぼしてしまいます。
人間も科学も成長することを信じるなら、今の自分が事実として取り扱えるものは、未来から見たら限られた状況にのみ適用できる、わずかな情報なのかもしれないと見るのが筋でしょう。
自分を振り返れば、「草を刈って敷いて土を育てる」という観点から草を見ていたときも、刈り方によって残る草が変わり、集まる虫も変わるという事実はありました。でも、その事実を私の意識はキャッチできていませんでした。
意識がキャッチできないものは、見えていても、見えません。
きっと今も、まだ見ているのに見えていないものが写真に写っているのでしょう。
いつか見えるものが変わることで、何にピントを合わせて撮るのかという、写真自体のテーマも変わっていくのかもしれません。