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物語の力〜くるみ割り人形

優しい時間は、刹那的である。


たったひと時の時間だとしても、そこに何かを感じることが出来たなら、


きっとその人の内側に、悠久の時をもたらせると信じたい。


一人の女の子に、『くるみ割り人形てねずみの王様』の絵本を読む機会があり、


あぁ、こんな話しだったんだ、、と知っていた話しとまた違う感覚になり、


私自身、その女の子と物語を知ることになった。


大人になり、名童話を読むと、世界の不思議さや、人の残酷さ、可笑しさ、狡賢さ、二面性、滑稽さ、あるいは、そこから離れていく感覚、現実ともう一つの世界の存在、もう一つの世界から現実へと帰還することの大切さ、などが見事に描かれているのがわかる。


物語を読む間、私と女の子はもう一つの世界へと旅をする。


お話しに引き込まれ、夢の世界の階段を登っていくと、素敵なお庭のある宮殿に着き、金平糖の精に出迎えられ、


キラキラと眩い光が私たちを取り囲む。身体が軽くなり、透き通るよう。


しばらく、私たちは夢の世界で飛び回り、その世界に入り込み、


うっとりと甘い時間に浸かる。甘い香りは宮殿の奥に行くと、次第に薔薇の香りへと変わる。


心がスーっと軽くなり、ハートの奥から薔薇の香りが溢れてだす。気持ちいい、光と香りと音楽が世界の全てと入れ替わる。


その中心から『バッ!』と大きく光を放ち‥‥‥。

ふと、目を覚ます。


そして、やがて、急に重力を持ってこの世界に戻ってくる。


あぁ、、夢を見てたのね、と彼女が言う。


夢と知り、少しガッカリする気持ちと、


あわせ持つ夢の余韻に少しだけ、背中が軽く感じる。


彼女の目と、存在に、きれいな輪郭が見える。


『じゃ、帰ろっか』


と言って、彼女の車椅子を押して図書室を後にした。





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