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医学教育における基礎医学の重要性

基礎医学は臨床の役に立たないと思っている人がときどきいるが、全くそんなことはない。基礎医学は医学的考え方において、文字通り基礎・基盤である。

基礎というのは easy や experimental、not clinical ということではなく、basic、fundamental あるいは essential に相当するものであると思う。

一部で役立たないと思われている背景は何なのだろうか。それを考えないといけないと思う。

一つは医学部の講義である。多くの教員は研究のプロあるが、教育のプロではない。基礎医学の講義の中で、将来臨床医となるために basic な内容が講義されず、実験的基礎をしばしば学ばさせる。実験的基礎も大事だが、臨床の基礎としての基礎医学も大事と思うわけである。何故なら、医学部は基礎研究者を育てるよりも、practitionar としての臨床医を育てることが現状では第一義であるからだ。

また、教育の順序として基礎から臨床、正常から異常という順番は変えようがないが、臨床や異常を学んだ後で基礎や正常を振り返る必要がある。臨床医学を小手先の簡単本と問題集で済ませる文化はよくない。臨床医学を本気で学ぶなら、基礎医学を振り返らないといけないときが必ずある。

解剖学実習を臨床医学や病院実習の後にやり直したいという人がいる。まさにそうで、臨床医学の理解が深まったからこそ、基礎医学をより意味あるものとして認識できるようになる。日本の基礎医学の教科書にもしばしば問題がある。臨床的に大事なことが些末な内容の羅列に薄められている。

大半が臨床医になる医学部教科では、もっと clinically oriented な教材が用いられるべきだ。それは簡単本ということではなく、臨床的素養を高める教材。例えば、標準生理学よりガイトン生理学、ヴォート生化学よりリッピンコットシリーズの生理学、分担解剖学よりスネルやムーアの臨床解剖学を薦めたい。実際には海外の医学部ではそれらの方がメジャーである。

そして、臨床医学を勉強する過程で、基礎医学を何度も振り返ってほしい。日本では医学の教科書、いわゆる成書を読む機会が減っているように感じる。成書を読まない習慣がつくと、医師になってからも勉強の仕方が論文中心になって基礎的内容が薄くなったりと問題がある。偏りない学習には教科書が最適である。教科書は内容として最新でないこともあるが、今まで培われてきた知識が最も適切にまとめられてきたエッセンスがつまっている。まさに歴史の中で抽出された知の宝庫だ。

そして、研究者としての医師の道を進む場合には、それはそれで然るべき訓練をすべきだと思う。実験医学、狭義の基礎医学を clinically oriented なものではなく、きちんと basic なところから学ぶべきだろう。現状として医学部が臨床医養成所である以上は、それに適した教育が望まれる。

話がブレブレだし、教育側に目がいきがちだけど、要するに何が言いたいかっていうと、今教育の構造を問題にしてもすぐには変わらないので、とりあえず、基礎医学は臨床医学のベースとして大事だからきちんと勉強しようね!ってこと。尊敬する医師の一人(外科医)は数年毎に生理学の教科書を買い直して読んで勉強していた。

付け加えると、医学生のときの成績と良い医師であるかの間には相関性が薄いこともしばしば経験される。しかし、実際に医学生時代に落ちこぼれで医師になってから学問的に成功している人は、大抵その分野のことを基礎からきちんと学び直しているものである。

医師になってから振り返って勉強することもできるけど、やはり大変なので、医学部低学年で習っているときにきちんとその分野の教科書を通読しておくのが望ましい。一度きちんと読んでおけば何度でも振り返りやすい。

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