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消化管病理のオススメ書籍|初級~中級
『病理診断は消化管にはじまり、消化管に終わる』というのは言い過ぎかもしれないが、消化管診断は病理初学者がまず取り組む代表的分野であるとともに、ベテランになっても難しいと毎日唸ってしまうような分野でもある。
数多くの消化管病理の教科書・テキストの中からオススメ書籍を、その特徴やオススメ度を含めて紹介する。
Ⅰ.初学者向け書籍
(1)臨床に役立つ消化器病理 ギュッと1冊! まるごとBOOK-web動画付-
病理診断は、レンジでチンすればできるような簡単なものではなく、適切な標本作製の前段階の処理、標本作製過程を経て、ようやく顕微鏡での形態診断が可能となる。その過程の含めて、最終的な病理診断を出すまで、そして、診断後の臨床と病理の相関に至る「病理診断の全過程」が簡潔に1冊の本にまとめられている。消化器系臨床医はもちろん、病理専攻医の最初の1冊としても最適な本の一つであり、標本作製過程の動画、診断時の所見の注目の仕方など、今までの教科書になく現場で学ぶしなかなった重要事項を学べる。
こちらの本については別に詳細なレビュー記事を書いているので、そちらも是非ご参考に。
【オススメ度】
病理専攻医 ★★★★★
病理専門医 ★★★★☆(専攻医やローテータ―の教育用に特に有用)
臨床医 ★★★★★
分かりやすさ ★★★★★
内容の深さ ★★★☆☆(標本作製過程の詳述は他所にない長所)
独自性 ★★★★☆(特に標本作製過程の動画)
(2)病理像+内視鏡・CT・MRIで一目でわかる! 臨床医が知っておきたい消化器病理の見かたのコツ
上記の『臨床に役立つ消化器病理 ギュッと1冊! まるごとBOOK』と類似してはいるが、より臨床像と病理像の対比・相関に重点が置かれ、病理診断のキモを代表的疾患75例を用いて解説している。病理診断過程の全体像よりも、より個々の疾患の臨床病理相関にフォーカスした1冊であり、消化器病理に興味のある臨床医、病理専攻医に役立つ。
【オススメ度】
病理専攻医 ★★★★☆
病理専門医 ★★★☆☆
臨床医 ★★★★★(臨床医の独習に最適)
分かりやすさ ★★★★★(特に病理所見の取り方の図示は秀逸)
内容の深さ ★★☆☆☆
独自性 ★★★☆☆(病理所見の注目ポイントの図示が秀逸)
(3)臨床に活かす病理診断学 第3版: 消化管・肝胆膵編
こちらも上記の2冊と類書ではあるが、コンセプトが若干異なっている。より病理診断・病理学に関する内容が充実しており、臨床医や病理初学者向けといっても、より硬派な内容の1冊となっている。消化管病理・消化器病理を始めたい場合には、これら3冊の中から自分に合うレイアウト、コンセプトのものを1冊選ぶのがいいかもしれない。
【オススメ度】
病理専攻医 ★★★★★(内容の深さから臨床医より専攻医に有用か)
病理専門医 ★★★☆☆
臨床医 ★★★★☆
分かりやすさ ★★★★☆
内容の深さ ★★★☆☆
独自性 ★★☆☆☆
(4)消化管病理標本の読み方
自分自身が病理始めたての頃にお世話になった1冊。まだ SSA/P の概念が確立する過渡期であったため、その点に関してやや記載内容が古くなっているし、大腸管状腺腫も現行の2段階分類(low-grade, high-grade)ではなく、3段階分類(mild, moderate, sever atypia)が推奨されている。ただ、本質的な内容に違いはないので、初学者も取っつきやすく、わかりやすい。その後改訂版は出ておらず、絶版状態と思われる。
【オススメ度】
病理専攻医 ★★★★★
病理専門医 ★★★★☆
臨床医 ★★☆☆☆
分かりやすさ ★★★★☆
内容の深さ ★★☆☆☆(やや内容が古くなっている点が難点)
独自性 ★☆☆☆☆
(5)3週間de消化器病理: 臨床医のための病理のイロハ
消化器内科志望の理子先生が、病理医の先生と疑問点をディスカッションしながら成長していく「対話形式」の消化器病理入門書。対話形式ならではの分かりやすさ、取っつきやすさがあるとともに、病理医の思考プロセスが簡潔明瞭な会話によって表現されている。病理写真はなく、すべてイラストで示されており、全体として、「概念」そのものを理解することに大いに役に立つ内容である。簡単な雰囲気で書かれているが、簡単な言葉で意外と深い内容まで掘り下げられており、初学者にはもちろん、中級者~ベテランにも新しい発見があるだろう。既存の写真入りのテキストなどでしっくりこない部分を補完してくれる良書である。
【オススメ度】
病理専攻医 ★★★★☆(専攻医・専門医も新たな発見があるはず)
病理専門医 ★★★★☆
臨床医 ★★★★★
分かりやすさ ★★★★☆
内容の深さ ★★★★☆(詳しいというより、痒いところに手が届く)
独自性 ★★★★★(対話形式で理解しやすい)
(6)癌診療指針のための病理診断プラクティス
癌診療において重要な臨床的思考から病理所見にアプローチするというスタイルを取っている。形態から入ることが多い病理医としては少し違和感のあるスタイルであるが、逆の思考法によって新たな見方を身につけられるかもしれない。逆に、研修医や臨床医からすると、病理診断にアプローチする上でわかりやすいスタイルになっていると思う。個別の疾患に関する記載はやや少ないものの、臨床情報から始まって鑑別診断を絞り込んでいくことで、切り口が明瞭となっている。
【オススメ度】
病理専攻医 ★★★☆☆
病理専門医 ★★☆☆☆
臨床医 ★★★☆☆
分かりやすさ ★★★☆☆
内容の深さ ★★☆☆☆
独自性 ★★★☆☆(臨床医にとっては入りやすいスタイル)
Ⅱ.中級者向け書籍
(7)消化管の病理学
内容としては可もなく不可もなくという感じで、教科書的記載がほぼ網羅的に記載されており、特別読みやすいなどの特徴はないが、消化管病理全体が偏りなく俯瞰的に学べる1冊である。内容の偏りの少ない硬派な1冊を求めるのであればオススメであるが、少し内容が古い点と値段が難点である。現在は絶版なのか、あまり市場に出回っていない。
【オススメ度】
病理専攻医 ★★★★☆
病理専門医 ★★★★☆
臨床医 ★☆☆☆☆
分かりやすさ ★★★☆☆(良くも悪くも網羅性の高い無難な教科書)
内容の深さ ★★★☆☆(網羅性は高いがマニアックではない)
独自性 ★☆☆☆☆
(8)腫瘍病理鑑別診断アトラス
全臓器にわたって出版されている『腫瘍病理鑑別診断アトラス』シリーズであるが、消化管に限らず、このシリーズに外れはない。すべての病理診断室にそろえて欲しいシリーズである。各臓器の専門家の分担執筆であるため、個々の章で各執筆者の癖が出ているものの、病理医が日常診断で困ったときにまず手に取るべき本の代表である。
【オススメ度】
病理専攻医 ★★★★★
病理専門医 ★★★★★
臨床医 ★★☆☆☆
分かりやすさ ★★★☆☆
内容の深さ ★★★★☆(日常診断で必要なことはほぼ網羅されている)
独自性 ★★★★☆(邦書の専門書としての地位が確立されている)
(9)Biopsy Interpretation of the Gastrointestinal Tract Mucosa
『Biopsy Interpretation』シリーズは世界的に有名で、各臓器で出版されている。網羅性および各疾患の記述の詳しさは、やはり洋書の特徴であり、写真も豊富である。局所的にこの領域に強くなりたいと思ったら購入はありだと思う。成書の方が記載自体は詳しいが、写真が豊富で生検診断に特化している点がこのシリーズの強みである。
【オススメ度】
病理専攻医 ★★★☆☆
病理専門医 ★★★★☆
臨床医 ☆☆☆☆☆
分かりやすさ ★★☆☆☆
内容の深さ ★★★★★
独自性 ★★★☆☆
【サイトマップはこちらから】
【消化管の項目はこちらから】
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