緋山あかり

国立文系4年 主に病みレポ 性格ひねくれ

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茜色のうさぎ

「ねぇ、何で夕焼けは赤いの?」 角の信号が青に変わりかける時、私はこうやってたいして気にしてもない質問をして彼を引き留めた。彼の自転車の荷台に指を引っ掛けて、幾度となく青信号を見送った。信号だけじゃない、彼と別れる時はいつもこうやってでまかせの質問をした。科学のこと、数学のこと、哲学や宗教のこと。彼はどんな事でも教えてくれた。私が頷くまで何度も何度も。 「なんでだと思う?」 彼はいつも初めに問いかける。彼のワンタッチネクタイの結び目あたりを見ながら考えて、それから見上げ

    • ぬるま湯に弾けたバブルあの頃のハグの続きを今日今此処で

      • 2月、手袋を捨てた

        私のアパートには備え付けのロフトベッドがある。大学4年間しか住まないのだから揃える家具は最小限にしたいと思いベッドや電子レンジ、洗濯機や冷蔵庫が備え付けのこのアパートを選んだのである。 そんなことはどうでもいいのだが、このロフトの下に置いているよくある透明な衣装ケース。 その1番下段には使用頻度の低い雑貨を詰め込んでおり、あまり開かない引き出しなのだが、先日恋人とディズニーに行くことになり、レジャーシートを探してこれを奥まで引き出した時の話。 よく分からないトートバッグ、使

        • おはよう

          カーテンから差し込む朝日で目を覚ます。夜中のうちに降り積もった雪が反射していつもより眩しく感じた。  時計を見るとまだ7時半。もう一眠りしても二限の授業には間に合うだろう。  隣で寝息を立てる彼に布団をかけ直し、その額を優しく撫でる。 「おはよう」  窮屈なシングルベッドで抱き合うようにして眠る2人の間を繋ぎ止めているのは、大人になりきれない幼い愛情と成長を要されることへの焦りが少し。   彼の手は男性にしてみれば小さく、両手を身体に回して抱きしめても圧倒的な体格差はあま

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        茜色のうさぎ

          マニキュアを重ねる滑稽私ごと君の視界で生きてないのに

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          失恋の曲で眠りに落ちる夜は君に捧げるいのちの一部

          失恋の曲で眠りに落ちる夜は君に捧げるいのちの一部

          愛してと言っているよう頬紅の紅きを選び春は暮れゆく

          愛してと言っているよう頬紅の紅きを選び春は暮れゆく

          君が今日空になったと思うなら 傘を持つ手もやさしくなりぬ

          君が今日空になったと思うなら 傘を持つ手もやさしくなりぬ

          静寂を「静寂」にする一ひらと 花のワルツを今夜このまま

          静寂を「静寂」にする一ひらと 花のワルツを今夜このまま

          今って春の大三角とかアークトゥルス見えるんですかね。まぁ誰しもあの時に戻りたいとかそういう風に思う時ってありますよね。人生なんて常に不完全だから昔を美化して大切にしていく訳なんでいや、決してまだ某氏を忘れられないとかじゃないですよ。ずっと待ってる春の夜空で。って5年後も言ってそう

          今って春の大三角とかアークトゥルス見えるんですかね。まぁ誰しもあの時に戻りたいとかそういう風に思う時ってありますよね。人生なんて常に不完全だから昔を美化して大切にしていく訳なんでいや、決してまだ某氏を忘れられないとかじゃないですよ。ずっと待ってる春の夜空で。って5年後も言ってそう

          真夜中のカプリチオーソ

           7畳半の暗闇で目を覚ました。枕元に転がっているであろうスマホを探し身をよじるとロフトタイプのパイプベッドがぎしぎしと音を立てた。既に深夜2時を回っている。窓が斜めにつけられたレオパレスでは、朝日や夕日は疎か一日中薄暗い。布団からはみ出し長い間冷やされていた肩から背筋に寒さが伝わり震える。エアコンのリモコンに手を伸ばそうとしたが、布団をかけ直しさらに深く布団に潜った。爪先に冷たいパイプベッドの柵が当たる。膝を曲げて体勢を横にすると自分の体重で真ん中が沈んだベッドがミシミシいっ

          真夜中のカプリチオーソ

          死にたい気持ちって不可逆なのかもしれない。一度自殺スレスレまで行くと現状が変わっても自殺欲求って心の底には残り続ける。私はこの先もずっと抱えながら生きてかないといけないのかもしれない。

          死にたい気持ちって不可逆なのかもしれない。一度自殺スレスレまで行くと現状が変わっても自殺欲求って心の底には残り続ける。私はこの先もずっと抱えながら生きてかないといけないのかもしれない。

          俳句

          補助輪の取れた背中に桜雨 追風やチャリのペダルに春来たり ひこばえに陽の当たる日のアウスかな 鞦韆や風に揺るるは未知の朝 アオハルの落書きの曲夏浅し 指先の君の香流す夏の雨 数式に君の右手が滑る夏 サーブ打つ刹那視界に虹もあり 短冊の夢を滲ます洒涙雨 夏季講座フィヨルドの線なぞりたり やはらかな雨に濡れしは祭りあと 夕凪や大和の如き今日をゆく 赤本の背の色変える日差しかな 泥臭い水面を泳ぐ楓たち 小春日や姫達笑うリノリウム 紅葉や子らの染まりし掌

          actress

          僕は舞台の上の貴女に恋をした 秋の夕暮れ時の空は 先程まで降っていた雨の気配を匂わせながら 地球の表面を歩く人々を包んでいる 僕は劇場に入りチケットを切って その半券を財布の中にしまった ゆっくりとホールに入る 半分より少し前の下手の座席 ここがいつものスポット 柔らかなクッションが僕の体を受け止めた この独特の香りは何処から来るのだろうか そんなことを思いながら プログラムのキャストのページの 貴女の芸名を指で辿った 初めてここへ来た日はまだ雪のあった頃 本名も知らない

          吾輩はコロ助ナリ

          吾輩はコロ助ナリ

          化身

          1枚96円の板チョコを小さく割って ボウルに入れて湯煎にかける アルミの中の細かな欠片は やがて形を失って 黒くて重たいどろどろになる 白さと交差し深く深く沈んだ それはまるでいつかの 1個110円の代物に注がれたどろどろは 何かひとつの真理のように 整然と並んでいる 温かさと冷たさの先で もう一度形を取り戻したそれらは 今日の感情の片鱗 心臓と良く似たその形を見た君は 笑ってくれるだろうか --