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001 注音符号の習得

 どうせ台湾華語(以下、華語)を習得するのであれば可能な限り現地と同じ方式で学びたいと思っていたところ、幸いにもその取っ掛かりを得ることができた話。

 広く中国語カテゴリーで見れば、中国の標準語である普通話(≒北京語)においては漢字の発音に「ピンイン」が用いられており、それは華語の習得にも利用できる。ピンインはアルファベットなので欧米人にはもちろんのこと、日本人にとっても取っつきやすい。大学で中国語を選択すると普通話を習うことになるため、同時にピンインを習得することになる。だいぶ昔の自分もそうだった。

 一方、「注音符号」は台湾で用いられている37個の発音記号で、漢字の一部を崩して形成されている。台湾の子どもたちは注音で漢字の発音を習得し、ピンインは一切用いない。あえて自分で勉強しない限りピンインを知る機会もないため、台湾人でピンインが分からないのはごく普通のことである(反対に中国人も注音が分からないのが普通)。

 また、我々外国人にとっての学習環境についてはやはり普通話の方がかなり先行している。各種講座やテキスト、検定試験の豊富さは華語に比べて圧倒的だ。華語については注音の習得ひとつとっても、丁寧に過不足なく説明されているテキストがほぼ存在しない状態と思われた。
 ということで、自分も最初ピンインで学習を始めようかと思っていた矢先、時代的なこともありちょうどオンライン講座が流行りだし、インスタグラムのオススメに出てきたのがある台湾人講師の「オンライン注音講座」だった。週1回(45分)×4回、zoomを用いた双方向レッスンで注音を習得してしまおうという講座で、個人で行っているため値段もかなり良心的だった。これならどういう結果になっても諦めがつく(今思えば、非常に申し訳なく思うが…)と思い受講を決めのだが、これがなかなか本気モードの講座だった。

 先にも挙げたが、ピンインでも漢字の発音は可能だ。しかも、アルファベットなのでわざわざ新たな記号を学ぶ必要もほぼない。それを見越して台湾人講師でもピンインメインで授業をする講師が多いのが実情だ。その方がより多く集客もできる。
 それでも敢えて注音をがっちり教えるというのは、どうやらそれなりの信念があってこそのようだ。面倒くさいので「台中関係」という言葉に無理やりすべて押し込めるが、まあそういうことだろう(この辺の話は当分しません)。

 同時に学ぶ生徒は私含め3人。講座は毎回宿題付き。基本の発音に加えて例外的発音も数多く出てくるので徐々に難易度は上がっていくが、とにかく理屈抜きで発音、覚える、発音、覚える。この繰り返しで身体に叩き込ませる。なにしろ計180分でマスターするのだ。甘えている暇はない。最終日には事前課題として配布された小学校低学年の「國語」教科書の文章(短い詩や散文程度のもの)を各自読んで発表し講座は終了となった。
 この間、文法は一切教えない。声調も必要最低限。とにかく注音符号の習得のみに注力すること1か月…無事やり切った(と思う)。一般のテキストでは触れない内容にも踏み込みながら分かりやすく教えてくれて、何も知らない自分を適切にスタートラインへ導いてくれた師との出会いは本当に貴重である。

 今は事情により独学で文法を学びつつある状態だが、短時間ながら気合でマスターした注音が現在の華語学習の基礎としてしっかり根付いているのを少しずつ実感しているところだ。独学でどこまで進むか分からないが、外国語を学ぶということを改めて考えながら取り組んでいこうと思う。

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