ガラスのない水槽
こどもの頃、水族館の水槽のガラスが触れなかった。そこにガラスがあると思えなくて、触れたら水の中に入ってしまうと思ったんだよね。なんでだろう。
怖いことや不安に思うことって、多少のことは誰かに❝大丈夫!平気平気!❞とか軽く言われたり、えいや!って勢いつけたりしてどうにかなっていっちゃうものだけど、怖かった時の気持ちとか、えいや!って勇気だした時のこととか、いつでも思い出せるようにしておきたいな。
ノア・バームバック監督の『イカとクジラ』は、過去の恐怖と、今の不安を乗り越える。そんな映画。
こどもの頃怖かったものを、大人になってから見てみたらそうでもないことと同じで、親も偉大な聖人なんかじゃなくて、失敗を繰り返すただの人間。
博物館の巨大なイカとクジラのオブジェを前に、両親の呪縛を乗り越え前進するようなラストが気持ち良かった。
このワケあり家族見てて思ったのは、親が親でいられなくなると、子も子でいられなくなるのだろうね。
綺麗事ばかりでいられない人間たちを、え…そうなっちゃうの…?ってひと捻りある演出をしてるところに惹かれてグイグイ観ちゃう作品だった。