見出し画像

#4 ステレオタイプ vs リアリティー

デザイナーは「こだわりが強くて細かいことにうるさそう」?「型にハマりたくない人」?「繊細そう…」?「デザイナー」で検索してみると、「性格」「向き、不向き」などの検索候補があり、多くの人が描いている「デザイナー像」に対する解説があります。あるものは「その通り!」と思いますし、あるものは「ちょっと違うな」と感じます。

私【デザイナーの妻】は結婚するまでデザインについて学ぶ機会があったわけでも、好きなデザイナーがいたわけでもありませんので、私の判断基準はあくまでも【我がデザイナー夫】との比較になりますが、観察日記#4では、よく言われる3つのステレオタイプとそれに対する観察結果 (リアリティー) を書いてみます。

画像1

ステレオタイプその1:「こだわりが強くて細かいことにうるさそう」

これは仕事中ではなく、生活面での話です。デザイナーには色々と、それこそ物の配置・洋服のたたみ方にさえ「自分のやり方」にこだわりがあって、細かいことを指摘せずにはいられない…というステレオタイプ。実は私もそう思っていました。

結論から言うと、生活の中でこだわる事なんて皆それぞれ違って当然。それは性格や育った背景によるものであり、「デザイナーだから」ではない。
(でもステレオタイプその2で書くように、その論理的な思考のゆえに誤解されることが多いのかもしれない)

我が家のデザイナー夫の場合、けっこう大雑把です。例に挙げた「洋服のたたみ方」なんてぜんぜん目に入っていない模様。「着たい服が今どこにあるか」にしか集中していません。 観察日記#1デザイナーの本棚 で取り上げた「読んドク」の本の山もそう。「今使いたい本があるかないか」しか見えていません。どちらの場合も探しものをした後は「何かを探した山」が放置されています。家の中の整理整頓についてはむしろ私のこだわりが強く、細かいことにうるさいので、デザイナー夫はよく私に怒られています。

逆に家具を選ぶ時は、私が家にある家具との色合いなど考えず、その場で気に入ったものを手に取るのに対し、デザイナー夫は家の中の全体の雰囲気や色の強調性を考えて選びます。「気に入ったかどうか」ではなく「全体の雰囲気と合うか、これまで揃えてきた白と黒系に合うか」で考えます。これは単にこだわる場所が私とは違うだけなのですが、こういう時に (都合よく) あのステレオタイプが出動してくるのではないかと思うのです。

単に自分と相手の物事の進め方が違う時、『この人はデザイナーだから、そういうところにこだわるんだ』と言って、何となく自分の気持ちに折り合いをつけてしまえば簡単だから、そういう思考になるのでは?とある時ふと思いました。仮に私が大雑把で、洋服のたたみ方にこだわるのが夫だったとしても、やっぱり私は「彼はデザイナーだからね」と言ったかもしれません。

要は、相手を知ることなく決めつけているだけだと気付き、それではお互いハッピーではなくなると思い、その考え方はやめました。デザイナー夫は家具を選ぶのが好きで、色が揃っている家具を見て楽しんでいます。私はそれを一緒に楽しむ、それだけの話です。

全くこだわりがないのか、というとそういうこともありません。好きなブランドの洋服は多く持っているし、大事にしたいと思うポイントは譲れないところもあります。でもそれはどの人にも共通することだと思います。「この人はデザイナーだから」の思考パターンが生まれやすい(誤解されやすい)のは、デザイナーが持つ論理的な考え方を目にするからかもしれません。これが2番目のステレオタイプと関係します。

ステレオタイプその2:「型にハマりたくない」人

これは言い方によっても印象が変わると思うのですが、「型にハマりたくない」と言うよりも「既存の概念にとらわれない」と言う方が合っている気がします。このステレオタイプはある意味、その通り!と思います。

「これってそういうもの」という概念に動かされていたら、思考は止まり、新しいものは生み出せないとデザイナー夫は言います。でも「型」を捨てるわけでもないがしろにするわけでもない、むしろそれを大事にしている。その上で、「そもそも〇〇とは何だろうか?」「これは何の目的で / 誰のために作られた物・サービスだろうか」と深く分析するようです。

ずっと前に、この分析作業をしているデザイナー夫に、浅はかにも「ちょっと考えすぎじゃない?」と言った私ですが、その時「たとえば、新しい椅子を作ろうとする人は、そもそも椅子とは何のためにあるのか、いつから椅子は使われるようになったのか、そういうことを考えないと何も生まれないんだよ」と教わり、なるほど👀その分析作業の大切さに気づきました。

どんな職業においてもその分析思考は大切だと思いますが、デザイナーにも常にその思考パターンが働いているため、「これはそういうものだから」、「いま流行っている、みんなが言っているから」という理由で物事が進みそうになると、『ちょっと待った』が入ります。最初こそ、私はそれを「また始まったー!あんまり分析しないでサクサクいこう!」と思っていたものですが、論理的に分析しているのを聞いていると(デザイナー夫の分析作業はよく呟きとなって聞こえてくるものですから…心の声がダダ漏れてますよ〜👀)「確かに、考えてみたらそうだよな」と納得させられることが多いのです。だから、今度「型にハマりたくなさそうな人」に出会ったら、ぜひ話を聞いてみてください。その人の深い分析作業の結果に助けられるかも。

ステレオタイプその3:「繊細そう」

これは…我が家の場合、ステレオタイプの通りかも!というのが私の結論です。「繊細」という言葉も色々ですが、私が表現する「繊細」とは、ちょっとした変化に敏感だったり、他の人の感情的な反応に非常に細やかに気づいたり、強いシンパシーがあったりして、細やかなアンテナが働いているという意味です。

仕事時間にかかわりなく、常に分析思考を持っていて、無数のアンテナを張っているので、生活の中でもそのアンテナがピンピン活躍するように感じます。ある人にとってはこれが、ステレオタイプその1:「細くてうるさそう」つながるのかもしれません。これは我がデザイナー夫の性格なのかもしれませんが、我が家の場合はあらゆる面で夫婦の性格が真逆で、それぞれの得意分野と不得意分野がはっきり分かれているので、デザイナー夫の「細やかな気づき」は私にとってはありがたいことばかりです。


こうして3つのステレオタイプ vs リアリティーを考えてみると、どれもデザイナーの「分析思考」に関係しているような気がします。でもこれは、「デザイナー」だからなのか、それともアメリカで非常に論理的なデザイン教育を受けた我がデザイナー夫が持つ独特の思考パターンなのか、それはミステリーです。デザイナー夫自身は、「デザイナーみんながそうなのではなく、自分はちょっと特殊なタイプである」と思っている模様👀

分析思考の大切さについては、「デザイン仕組み講座」で、自称・特殊なタイプのデザイナーの講義を覗くことができます。

今回の記事はデザイナーと結婚することになった人に向けた記事みたいになってしまいましたが…。デザイナー夫の観察日記#4、読んでくださってありがとうございました!



いいなと思ったら応援しよう!