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ゆたかさ

わたしは、ゆたかであることが生きる上でとても大切なことだと考えている。

ゆたかさは、自分の中に、生活の中に、こころが休まる柔らかな思い出を用意しておくことから始められる。自分だけのオアシスを持つことと言ったほうがイメージしやすいだろうか。

そのためには、物質的経済的に逼迫しない状況を保つ努力も必要だが、まずは生活の速度を落として内的ゆたかさに浸ってみたい。

【わたしの柔らかな思い出たち】

・家の扉を開けたら、仄暗い室内からコーヒーの香りが漂ってきた時

・知り合ったマダムがバイト先に顔を出してくれて、素敵なお茶の差し入れを私に下さったこと、その心遣いと優しさ

・緑と深茶色の色調の喫茶店で何時間も本を読んだこと

・認知症になってしまった喫茶店の店主さんを、喫茶店の皆さんが笑顔で受け入れていたこと

・母が台所で調理しているときの音

・フランスで滞在していたお家で、鮮やかなボウルにたくさんのフルーツが盛られていたこと

・朝日がさすダイニングで、マダムと向かい合ってコーヒーとフランスパンと、ヨーグルトを頬張ったこと

・マダムが作った美味しい手料理を食べながら何時間も語り合ったこと

・マダムの笑顔と人を包み込む優しさに癒されたこと

・幼少期の頃、暗い部屋の中でトロイメライを聴きながら寝ていたこと

・何度も通っているスペイン料理のお店の店長さんの笑顔が素敵なこと

・好きだった人が、寝ている私にタオルケットをかけてくれたこと

・大切な人たちが私に向けてくれた慈愛の籠った眼差しに、無償の愛を感じたこと

・小説の中の世界に浸って時間を忘れているとき

・電車の中でその時にぴったりな小説に没入しているとき

・苔や木々の緑と、虫や鳥の声に包まれているとき

・夏の終わりを感じさせる風が私の頬を掠めたとき

・秋の訪れを感じる夏の夜に花火をすること

・秋が始まって何かが終わっていくような哀愁をひしひしと感じるとき

・秋の夕暮れに染まる空を簾越しに見ること

・バスケットいっぱいに入った果物を誕生日に祖父母がくれたこと

・大切な人たちと美味しいご飯を食べているとき

・わたしが美味しそうにご飯を食べる顔を、嬉しそうに眺めてくれる人たちの表情

・周りの人たちがわたしを見捨てずにいてくれたこと

・好きだった人がわたしの隣で寝ていてくれたこと

・大切な人からの手紙を読む瞬間

・人に手紙を書いているとき


書き出してわかったけれど、ゆたかさは決して一人で生み出せるものではなく、誰かが与えたくれたもので成り立っているということだ。

そこに自分がいて良いのだと思える瞬間と居場所がどこかにあったことで、自分のこころに柔らかな思い出が増える。それは、いつかの瞬間に思い出して、こころにゆとりを与えてくれる。この積み重ねがゆたかさとなっていることにようやく気がついた。

皆さんも、どうか自分だけのゆたかさを見つけてみてください。


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