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ウクライナ情勢についての考察【2022.3.15】

承前

ウクライナ情勢について何か書こうと思っているうちに時間だけ過ぎていきます。

最近、知人あてにメールを書いたのが思いがけず長文となって、また、我ながら内容的にもそこそこのものになったような気がしますので。

「腹案」の方は後でなんとか書くとして、先にそのメールをUPすることにしました。
(ただし、ある程度の修正をかけています。)

もちろん、今後の情勢次第で以下の文章の内容はあっという間に古びてしまう可能性はあります。

なお、参考までに大元のメールは2022年3月13日の午前3時づけ。アニメ「ストライクウィッチーズ」に関する話題からの、とんでもない脱線話として書いたシロモノでした……。

【メール本文】

[1]

《下の節は東映アニメーションがハッキングされて被害が出ているが、ロシアのハッカーによるものだろうか、という話題に関して》

東映アニメーション以外に、これもしばらく前にトヨタもハッキングの被害にあっていた。
トヨタも東映アニメーションも、ロシアで事業展開してる。特にトヨタがサンクトペテルブルクに工場を持ってるのはよく知られた話だね。
というわけで、両社とも、どっちかというと親ロシア企業としてアノニマスあたりの攻撃を受けたという方がありそうな気がする。
(※註1)

(仮にそうだとしても、そういう「不都合な事実」はあまり報道されないだろうなと思うけど。)

[2]

不都合な事実といえば。
ロシアが用意した「人道回廊」に地雷が敷設されていたというニュースがあった。それでロシアを批判している人もネットにいたが、個人的にはむしろ「ウクライナ軍がロシア軍阻止のために埋設した可能性が高いのでは」と思っていた。

で、どうやら僕の読みが当たっていたらしき情報も出ているみたい(未確認)。
でも、真相がこっち側だとしても、その場合やはり「不都合な事実」として概ね黙殺されるであろうなと思う。

この世で僕が何が嫌いかと言って、自分や仲間に適用する賛意・批判のラインと、自分(たち)に対立する相手に対するラインを露骨に変えて、それを恥じもしない輩。
これ以上に嫌いなものは今ぱっと思いつかないぐらい。

【公正を目指しても、どうしたってバイアスがかかる……というのとはまったく別次元の連中のことを言っているのだと、ここでは考えてほしい。
自分と対立する人間がある行動を取ったときに、それを口を極めて罵ったくせに、自分の友人が全く同じことをしたときには罵らない。そのダブルスタンダードを指摘されても、恥じ入るどころか「それの何が悪い?」と開き直る。そういった人間のクズの話。あくまで。】

戦争じゃしょうがないと、言えば言えるが。にしたって、個人的な嫌悪や軽蔑、憎み嫌う気持ちは必然的にわいてくるし、また、そうした念は絶対に持ち続けるべきとも思っている。

閑話休題。

[3]

《下の節は、
"アルメニアとアゼルバイジャンの紛争後に駐屯しているロシアの停戦監視団が、ウクライナに行くために撤収するらしい。そうなると戦争が再燃するのでは。"
……というネット上の噂に関して》

ナゴルノ・カラバフは難しい問題だ。アルメニア、アゼルバイジャンとも、[伏せ字]じみた愛国心と(相手国への)敵愾心と憎悪に沸き立っているという国情のようだ。

ロシアは旧ソ連時代の盟主として、この地に関してはなるべく穏便に済ませたいようだが。
(ただし、ロシアの民衆的には正教を奉じるアルメニアにシンパシーがあるようだ。)
仮に停戦監視団が撤退したら、確かに紛争再燃もあり得る。
ただ、現時点ではアゼルバイジャンの軍事力が上回っているようで、実際にこの前の紛争ではナゴルノ・カラバフを基本的には奪還したから。まぁ案外小競り合いで終わるかもしれない。

[4]

ここで個人的な欧州情勢の見通しを書いておくと。

ウクライナは国民皆兵みたいにして抵抗をしているようだ。
勇ましいけど、個人的にはさっさと降伏するのがベストの選択だったろうにと、今でも思わずにはおれない。
ロシアの目標が、マイダン革命前への「原状復帰」+αに過ぎないことはウクライナの人にとって自明だと思うのだが。それはそこまで耐え難いことなんだろうか?
「自分たちの独立を守る」と言うのはいいが、それと引き換えに自分たちの国土と生活が破滅的ダメージを負ってもやむなしというほどの問題なのか。本当にそこまで覚悟してのことなのか。

(にしても、マイダン革命後に国民に吹き込んだウクライナ民族主義が本気で根をおろしていたんだなぁ、という驚きはある。)

この先のウクライナは混沌としそう。
どうなるかというモデルをどこに取るかは、正直よく分からない。アフガン? 北ベトナム? あるいはむしろアメリカ統治下のイラクとか南ベトナム?

順当に行けば、ロシアがウクライナ(の、少なくとも主だった部分)を占領し、親ロシア政権を立てる。
しかし(ここまで紛争が激化した以上、それで沈静化とはならず)日々、占領軍と都市ゲリラが争い、銃撃戦や爆弾テロが日常となる。

あるいは。
想像以上にウクライナが粘り、ボロボロになりつつ、この先何年も戦い抜く。
ウクライナは再起困難になるが(いや、戦後の復興支援は受けられるかな?)、ロシアも経済制裁などで体力を削られ、共倒れ。

奇跡の大逆転シナリオ(ロシアへの逆侵攻)はさすがにないものと思う。

急転直下でゼレンスキー政権が降伏という可能性もあるか。
その場合は、やはり都市ゲリラ戦が続くだろうけど、ロシアが完全に武力のみで制圧した場合よりは、ウクライナのダメージもロシアのダメージも軽減されるんだろうな。
(※註2)

[5]

ロシアは制裁で世界各国との通商が困難になるが、自国に資源もあるし。社会主義時代に恩を売った国もなんだかんだ少なくないので。細々とやっていくことはできるだろう。
中国もロシアを完全には見捨てるまい(「唇亡びて歯寒し」。ロシアを降したら、またアメリカの敵意の矛先は自国に向くだろうから。それに巨大な隣国があまり不安定化しては困るだろう。)
(※註3)

ただ、ロシアの全体的な退潮は避けがたいだろうな。
前にも話した「プーチンはギャンブラー」の話だけど。今回はどうも大負けしたっぽい。
思うに、改革開放以前の中国の
「なんだか内情がよく分からなくて、貧しげで、しかし、それなりのポテンシャルがありそうにも見える」
……くらいの、図体は大きいけど影の薄い国、くらいのところに収まるのかなぁ。

あるいは一つのどんでん返しとして。クーデターや民衆デモとかでプーチン失脚。
「悪いのは全部プーチン」で幕引きをはかる。

しかしこれはこれで難しい。
そもそも、そうした政変後に国をまとめられるリーダー候補があまりいそうにない。

それにプーチンのこれまでの業績について「救国の英雄」と見る人も多いので(むしろロシア人の多数派がそれ)。
ヘタにプーチンを打倒なんかしたら、それこそ内戦とかになりかねない。

別に内戦になったって構わないよ、むしろ大歓迎……って感じにアメリカやEUがなるかというと、そうもならない気がする。
ロシアには「核保有国」っていう特殊事情があるからな。
内戦になって核の管理状況(あるいは所有者)が二転三転なんていうのは、周辺国にとっても避けたいことなんじゃないかと。

というわけで、この先の見通しとしては「改革開放前の中国化」、次点で「プーチン退陣→内戦」シナリオあたりで考えるが、どんなもんだろう。

[6]

ヨーロッパはロシアという分かりやすい「悪」を設定できたことによって、いよいよ「一体化」を目指すことになりそう。
(ベラルーシなど、一部の親ロシアな国は除くとして。)

しかし、実際にはそれは面倒事や矛盾を抱えこむことにもつながりそう。

東欧やカフカスの諸国(特に旧ソ連の国)をEUとかに組み入れるのは、財政面・内政面その他で無理があるだろう。
その無理を押し通せばもちろん問題になるし。
門前払いすれば、それはそれでモメるだろう。

アルメニアとアゼルバイジャンの争いとかもヨーロッパ対中東、なんていう大きな問題に拡大するかもしれない。

少なくともヨーロッパがいよいよ一体化してめでたし、なんていう話には到底収まらなさそう。
下手するとEUとかそういう枠組みごと破綻してしまうというシナリオすら考えられるかも?

まぁでも、こっち方面のことは正直よく分からない。まったく的はずれなことを書いたかも。

……と、とりあえずそんな感じかなぁ。

なんの気無しに書き始めたら、やたらと長文になってしまった。

【補註】


※註1……こういう問題に詳しい別の知人にあとから教えてもらったところでは、こういう不正アクセス攻撃は元から大変多いのだそうです。なので、よほどしっかりした証拠が出ない限りは、今回の情勢に関係するかもとか、しないかもとかいった臆断は避けるべきと。なるほど、確かにそのとおりでした。
ただ、全体の流れを考えて、文章としては残しておきます。

※註2……ロシアがトチ狂って核戦争に突入するというシナリオも理屈ではあり得るかもしれませんが、このメールを書いた時点でそういう想定はしませんでした。さすがにそれは考えにくいと思うのです。
私のみならず、思えばウクライナもNATOも(口ではいろいろ言うけれど)「さすがにそれは無いよね」という変な信頼感(とでも言うべきもの)を、なんだかんだロシアに対して持っているように思います。そして、今のところロシアもその信頼には応えているようです。

※註3……「唇亡齿寒(唇ほろびて歯寒し)」。朝鮮戦争に介入するにあたって毛沢東が引用したということで有名な言葉。出典元は『春秋左氏伝』だそうです。


※トップ画像はレーピンの絵画『トルコのスルタンへ手紙を書くザポロージャ・コサック』(画像はWikipediaより)。ウクライナのコサックの不屈の闘志を題材にした有名な絵。
なお、同じテーマのアポリネールの詩はショスタコーヴィチの交響曲第14番の第8楽章に用いられていますので、好楽家の方なら「あぁ、あれ」と思い出されるかもしれません。