睡眠と私。ナルコレプシーという病のこと ~vol.4 受診①with上司への感謝~
ここまで、発症の経緯や悪化の様子、症状について書いてきた。
15歳からこの突発性に訪れる眠りと共存してきたわけだが、さすがのおおざっぱな私もこの状況には疑問を持ち、18歳の頃に病院を訪ねた。
その病院では簡単な問診ののちに「あなたここまで一人でこれたのでしょう?では病気ではありませんよ」という診断が下された。絶望だった。病気と言ってほしかった。病気じゃないなら、私ただのなまけものじゃないか…そうか、やっぱりなまけものなのか…仕方がない、なまけものとして生きていくしかないんだ…
医療に関わる人には肝に銘じてもらいたい。患者はあなたの診断で人生が変わる。ナルコレプシーという病気の知名度が2000年代前半今よりも低かったことは事実だと思うけれど、でも自分の専門分野+周辺分野については情報のアップデートを常にしていてほしい。
なまけものキャラを受け入れた私はかなり人に頼るようになり、頼れば人は助けてくれるということを知った。ここで磨かれたコミュニケーション能力は今の私を作ってくれていると思う。
そうやってなんとか大学を卒業し、就職した会社でも「あいつ寝るけど、とりあえず数字はなんとか取ってくるしまあいいか」というキャラ付けに成功した。少し年上の先輩方は寝まくる私に相当ムカついていたと後で聞いたが、上司は寝ながら受注を取る私を面白がってくれ、なんとなく許される空気が醸成されていた。(証券会社を選んだのは、あの状況では本当に正解だった。数字さえ上がっていれば何の文句も言われない。ペーパーワークも少ないし、本当に耐えられない時は外に出て行って公園で寝ることができた)
そうこうしているうちに2年が過ぎ、新しい上司がやってきた。真面目なひとだった。「ここ数週間君をずっと観察していたけど、たぶん病気だ。異常だと思う。このままにしておけない。ちょっと調べたからこの病院に行きなさい」
病気であるという可能性はとうの昔に脳内から消し去っていた私は驚いた。
「一度受診して、病気でないと言われているんです」
「睡眠はジャンルが広いんだよ。専門医に見てもらったほうがいい。僕が調べた限り、ここがいいと思う」
今振り返ると、新上司は数字数字イケイケドンドンの証券営業マンたちの中では異質のタイプだった。なぜそういう行動を取るのか、その人の背景に何があるのか、をよく見ようとする人だった。今でいうコーチング的な要素を多分に持った人で、私を理解しようとしてくれていた。彼は叱るでもなく面白がるでもなく「なぜだろう」と疑問を持ちその疑問解決のためにアクションを取ってくれた。感謝してもしきれない。
そうして紹介された病院で、私は「ナルコレプシー」の診断書を受け取った。
受診やその後の通院の様子はまた次に。