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STEAMアワード2024(と幾つかのおまけを添えて)おすすめゲーム16選


Steamアワード2024にノミネートしたゲーム+αの全16作品のオススメポイントを語ります。
私のSteamアワードはこちらから↓

ゲームオブザイヤー賞
「8番出口」

リミナルスペースを思わせる地下通路で間違い探し。
何もなければそのまま進め、異変があれば引き返せ。

そのシンプルさと革新性で話題をかっさらい、「8番ライク」という新ジャンルを打ち立てたその様はまさに今年を代表するゲーム。(発売は去年の年末だけど)
8連続正解という絶妙なハードルの高さや、注意深さが要求されるものと派手なものの異変のバランス感覚、作品そのものの雰囲気など、オリジナルの完成度の高さは今思い返しても凄まじいです。
個人的には、単純なプロセスで誰にでも遊べるシステムを作り上げたこのゲームの完璧さには、テトリスのそれと近い工業的な美しさを感じます。

まだプレイしたことが無ければこの機に是非。
既プレイの方も、良い感じに答えを忘れて再度楽しめる頃かもしれません。

愛の為せる業賞
「Slay the Princess — The Pristine Cut」

あなたの使命は世界を滅ぼす力を持つと言われるプリンセスを殺すこと。
予想不可能な展開が魅力のホラービジュアルノベルであり恋愛ゲーム。

このゲームに最も驚かされるのは、無数のルート分岐と選択肢からなるテキスト量の凄まじさでしょう。
プレイヤーの選択次第で主人公とプリンセスの関係性は非常に多種多様な方向へ変化していくのですが、特筆すべきはその結果のみならず、過程です。
同じルートでも過去に辿った道筋によってキャラクターのやり取りが細かく変化し、(いい意味で)未読スキップが殆ど役に立たないボリュームにはただただ圧倒されるばかり。
1周するのに3時間未満と短いながらも、プレイヤーの心情にしっかり訴えかけて来つつ哲学的エッセンスも含まれる骨太な物語は必見です。

これほどまでの重厚かつ膨大なテキストを翻訳し、日本のゲーマーへ届けてくれたのは、まさしく愛の為せる業と言う他無いでしょう。

フレンドとプレイしたい賞
「Buckshot Roulette」

ショットガンでロシアンルーレットをするギャンブルゲーム。

アイテムを駆使して確実に相手を追い詰める戦略を練るも良し、一切の思考を捨てて博打に走るも良しなバランスが非常にエキサイティングで楽しいです。
11月頃にマルチプレイ機能が追加され、お友達とも気軽に命懸けギャンブルができるようになりました。自分はまだやったことがないので、是非とも遊んでみたいところです。(フレンドとプレイ"したい"賞だから多分問題ないはず……!)

なんだかんだ自分は戦略を捨ててギャンブルするのが楽しくて好きです。
狂気の沙汰ほど面白い…!

優れたビジュアルスタイル賞
「電気街の喫茶店」

大阪・日本橋を舞台にメイド喫茶の経営をしながら女の子たちとのんびり暮らすスローライフADV。

親しみと懐かしさ溢れるオタク街の街並み、ガチャガチャしたレトロゲーム店や駿河屋の店構え、物欲をそそられるゲームのカプセルトイのパッケージ達、それらすべてが温かみのあるドット絵で描かれた最高のゲームです。
数々の実在店舗やインディーゲームともコラボをし、違和感なくゲームの世界と共生していることから、単なるビジュアルの綺麗さには収まらない、日本橋・オタク文化・インディーゲーム等へのリスペクトをこれでもかと感じます。

拘った表現をせずにはいられない。そんな愛に溢れたインディーゲームならではの温かさを味わうには間違いない作品でしょう。

最も革新的なゲームプレイ賞
「Inverted Angel」

突然自宅にやってきた自称恋人の女の子の正体を突き止める推理型ADV。
プレイヤーの入力した内容のニュアンスをAIが判定することで、ルートが分岐するというユニークなシステムを持っています。

プレイヤーの推理のニュアンスを拾ってくれるおかげで、良く分からないまま選択肢から当てずっぽうに選ぶような状況に陥ることがないのが非常にありがたかったです。加えて、自ら入力することでストーリーに対する想像の幅が広がるため、自力で真相に辿り着いた達成感がしっかり味わえる構造になっているのが非常に面白いポイントでした。
反面ヒントは少なめなので、推理モノとしての歯ごたえはしっかりめかと。
また、ビジュアルから所謂地雷系の女の子を相手取るのかと思いきや、意外にも哲学的で詩的なエッセンスが多数あり、全体的なテキストの雰囲気は非常に刺さるところが多かったです。

各シナリオの振れ幅も広く、そのどれもが非常に面白かったので、AIが推理判定をするというシステムのユニークさに留まらない魅力が多数ある、文句なしに面白い高水準なゲームだと思います。

高難易度のベストゲーム賞
「Arctic Eggs」

極寒の地でお腹を空かせた人々に、フライパン片手に目玉焼き(と色々)をふるまうゲーム。

このゲームを高難易度にノミネートした所以は、そのフライパン操作の難しさに他なりません。摩擦係数という概念ごとテフロン加工したのかと思うレベルでツルツルのフライパンは、少し手を狂わせただけで遥か彼方で卵を放ってしまうほど繊細な操作が要求されます。加えてゲームが進めば破裂して周囲のものを吹き飛ばす銃弾、放っておけば溶けて無くなる氷、自由に動き回る生きたGなど、個性豊かな食材たちがプレイヤーに襲い掛かります。
それでもプレイしてしまうのは、ローポリグラフィックで描かれる人々との会話が魅力的だからでしょう。世界観はかなりのディストピアで、皆退廃的な思考になってしまっているのですが、それでも生きている限りお腹は空くもの。短いながらもキャラクターの人格をしっかりと感じさせる詩的なセリフの数々は、死に物狂いで卵を焼いたあなたへの確かな感謝の表れとして心に残るはずです。

とりあえずさ
遊んでみればいいと思うよ
マジで

ベストサウンドトラック賞
「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」

JRPGの名作、ドラゴンクエストⅢがHD-2Dで蘇るリメイク作品。

魔物使いがやたら強かったり、1ターン複数回行動をする敵が多かったりと気になる点はあるものの、美麗グラフィックのドットを味わいながら、すぎやまこういちサウンドに耳を傾けるドラクエができる時点で滅茶苦茶楽しいでしょう……!
ひみつの場所等のマップ探索の楽しみが追加され、「冒険の旅」を聞きながら未開の地を切り開く感覚が増したのは個人的に特に好きです。
世界を彩るモンスター達のモーションも、ドットアニメーションでしっかり描かれているのも嬉しいところ。

そもそものリメイク元が名作なだけあって、普通に遊ぶ分には楽しくドラクエできる良作です。
個人的にはこの形式でドラクエⅣを期待したい……。
「ジプシー・ダンス」滅茶苦茶リメイクで聴きたいので。

優れた物語ゲーム賞
「未解決事件は終わらせないといけないから」

発言者や時系列の入り乱れた証言を再構成し、12年間未解決となっていた女の子の失踪事件を終わらせる推理パズルゲーム。

3時間足らずでクリアできるミニマムな作りながら、非常に美しくまとまった素晴らしいストーリーが魅力的な作品です。
何故「解決」ではなく「終わらせる」なのか、それが理解できた時には言いようのない満足感に包まれていることでしょう。
シナリオは何を言ってもネタバレになりそうなので、システム部分に言及すると、発言の時系列や口調から正誤が予想できるため、プレイ感は推理モノよりもパズルに近い感じでサクサク進行できるのはテンポが良くて嬉しいポイントです。
また、SNSのチャットログを思わせる画面構成も、親しみやすくて遊びやすいながら、本作ならではの個性を醸し出していて好き。

何も言えないけど絶対に面白いからとにかくやってくれ!と人にオススメしたくなる魅力に溢れた一作です。

ゆったり座って​リラックス賞
「TENSEI」

水墨画のような美しい世界と、チルなBGMをお供にひたすら上に登る3Dアクションゲーム。 

Only UPライクなゲームといえば、落ちるリスクを負いながら着実に足場を登るヒリつきが醍醐味というイメージが強いかと思います。
しかし、この作品は美しい景色の移ろいと、蝶や鳥に変身してピョンピョン跳ねる目玉くんの動きに癒されながら、のんびりと上へ上へ登っていく穏やかさが特徴です。3段ジャンプができるので落ちる心配も比較的少なく、力が溜まれば目玉くんが画竜点睛し、竜となって一気に駆け上がることのできるので、時折程よい爽快感を得ながら手ごたえをもって遊ぶことができます。

テキストを読む体力もないけど、コントローラーをポチポチしてキャラを動かし、のんびりゲーム欲を満たしたい。
そんな時にオススメな作品です。

おまけ

ノミネート作品に入れるか迷ったものの、泣く泣く除外した作品達

「Recolit」

ノミネート候補:ゆったり座って​リラックス賞

真夜中の街を舞台に、何気ない日常を追憶することで物語が進む、ノスタルジックな謎解きADV。

多くを語らないストーリーと、クスっと笑えて共感できる懐かしさを持ったフレーバーテキストが、プレイヤーを優しい夜の雰囲気にをいざなってくれます。3時間程でクリアできるボリュームかつ、謎解きの難易度も優しめなので、雰囲気に浸りながらゆったり遊びたい時に最適かと。
途中に科学館を思わせるロケーションがあるのは、特に個人的に刺さったポイントでした。思い出の場所に訪れる懐かしさと、深夜の冒険を行う静かなワクワクが感じられる一作です。

「さよ」

ノミネート候補:ゆったり座って​リラックス賞、優れたビジュアルスタイル賞

雪の降りしきる世界を歩き回る、幻想的な雰囲気が魅力のウォーキングシミュレーター。

ローポリグラフィックと幻想的なBGMから感じさせられる郷愁感と、一面が雪に覆われた世界の孤独感がプレイヤーに深く刺さる一作。
風景の変化は乏しく、マップも無いため、決してユーザーフレンドリーでテンポの良いゲームとは言えませんが、その不便さも込みでただこの世界に浸るのが良い楽しみ方だと思います。
ワンコインで買えるお手軽価格なので、まずはクリアを急くことなく、ただ気まぐれに散歩するだけでもいかがでしょうか。

「限界OL海へ行く」

ノミネート候補:ゆったり座って​リラックス賞、優れた物語ゲーム賞

仕事に疲れた限界OLが海を目指して海浜公園あたりを歩きながら、同じく色んなものに疲れた人たちと交流するビジュアルノベル。

疲れた頭に沁みるような、ゆったりした雰囲気で人々の会話が進行していくので、まさしく限界になった時に丁度良い作品。一本道なので特に考える必要が無いのもありがたいポイント。
悩みに悩んで視野狭窄に陥ってしまった時に、ふと足を止めて周囲を見渡し、「人生いろいろだなぁ~……」と自他を労わる心を思い出す。
そんな停滞の大切さを伝えてくれるゲームです。

「アクアリウムは踊らない」

ノミネート候補:優れた物語ゲーム賞、愛の為せる業賞(今年のリリース作品だからできないけど…!)

作者の愛を感じる個性豊かなキャラクターと、水族館を舞台にした幻想的な世界観が魅力的なツクール系謎解きホラー。

自分の感覚ではホラー要素はそこまで怖くなく、とは言えしっかりとプレイに緊張感を与えてくる良い塩梅でした。不気味さがかえって幻想的な世界観の良いアクセントになっており、5時間程のボリュームながらもしっかりとプレイヤーの印象に残る作品となっています。
キャラクターが織りなすドラマも魅力的で、終盤の展開で胸打たれること間違いなし。自分はスーズが好きですね。まあまあ口が悪いのが作者の癖を感じます。
インディーゲームというよりはフリーゲームと呼びたくなる。
良きツクール文化の雰囲気が感じられる良作です。

「For the GHOSTs」

ノミネート候補:優れた物語ゲーム賞

虚構のキャラクター達と雑談をしたり、お茶をしたりして交流をしていくビジュアルノベル。

この作品の唯一無二の個性は、キャラクターを一人格としてだけでなく、プログラムで制御された虚構の存在として非常に真摯に向き合っていることにあります。
会話の内容はお菓子やお茶の好み等の何気ないものから、詩的で抽象的なポエムのようなものまで。たとえそれらの話題に造詣が深くなくとも、彼女らとの交流を終えた先には、実在感と喪失感の入り混じった不思議な充実感があることでしょう。
他のメタ系作品とはひと味違った体験ができる……かもしれません。

「リードオンリーメモリーズ:ニューロダイバー」

ノミネート候補:ベストサウンドトラック賞

超能力者のエージェントとなり、他者の壊れた記憶にダイブし、修復することで物語が進むポイントクリックADV。
名作サイバーパンクADV「2064:リードオンリーメモリーズ」の続編にあたる作品です。

前作から進化を遂げた個性的なピクセルアートグラフィックと、アーケードゲームの雰囲気を思わせるイカしたBGMが魅力的な一作です。
4時間程度でクリアできるお手軽ボリュームながら、過去作のレギュラーキャラが多数登場するなど、シリーズファンには嬉しい要素がぎっしり詰まっているので、前作ファンならプレイして損は無いかと。

「ghostpia シーズンワン」

ノミネート候補:愛の為せる業賞

グリッチとノイズがノスタルジックに彩る、絵本のようなイラストが魅力的な一本道ビジュアルノベル。
昨年の個人的GOTYでもあります。

雪と夜に閉ざされた幽霊の街で暮らす主人公:小夜子とその友達を中心として、描かれる物語は、コミカルなモノからバイオレンスなモノまで、多種多様な展開で楽しませてくれます。インパクトのある過激な展開が来たと思えば、繊細な心理表現でプレイヤーの感情を揺さぶってくる、丁寧さとダイナミックさを併せ持ったお話の運び方には、ぐんぐん引き来れていくこと間違いなし。
寂しさと賑やかさが共生した世界観は、冬の季節の、できれば夜に遊ぶことでより上質なものとなるでしょう。

制作チームの超水道さんがセールやアップデートの際に可愛いイラストを公開してくれる上に、最近ではグッズを色々出してくれるのでありがたい限り。制作陣の愛をこれでもかと感じます。
https://chosuido.booth.pm/

なんと今ならNintendo Switch向けパッケージ版も予約受付中!気になる方は是非チェックを
https://ghostpia.xyz/package-switch/

おわりに

今年も面白いゲームが多数発売され、アワードタイトルを選ぶにも嬉しい悲鳴が何度も上がる状態でした。幸せ。
Inverted Angelや電気街の喫茶店はGOTY賞に入れるか非常に悩みました。どれも非常にオススメなので是非プレイしていただきたい……。
ちなみに、発売時期を気にせずに今年遊んだゲームで良かったものを挙げると、SANABI、In Stars And Time、ドキドキ文芸部などが非常に印象的でした。

さて、来る12/19からはSteamウィンターセールが始まります。
その時に、読んでくれたあなたの良きゲーマーライフの助けになれば幸いです。
皆もゲームのレビューを書こう!好きな作品を広めよう!



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