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リストカットシンデレラ17

割引あり

会話

「カイちゃん」
体が固まる。
「おぉ、おう久しぶり」
「遅れてごめんね」
「あぁ、別にいいよ」
杏は私の隣に座り、うつむいたまま目を合わせなかった。
「緊張してるの?」
「う、うん、けっこう」
「へー。別に緊張するような相手じゃないじゃん」
「本当はさ、ずっとあそこにうずくまってたんだ。タイミングがなくて、なかなか出てこられなかった」
「え?!マジで?そこにいたの?早く出てくればいいのに。私が1人でキョロキョロしてたの見て笑ってたんだろー」
「違うよ、なんか緊張しちゃって。どーしようどーしようって、パニクってたんだよ」
「ハハハ変なの。友達とは上手くいってる?」
「うん、まあまあ」
「部活は?」
「うーんキツイけど楽しいよ。奈々は走るの速いよね」
「ウソー?!」
「だって、競走したとき負けたもん」
「嘘だよ、アイツ私より遅いよ。この前、犬の散歩してて裸足になって本気で勝負したら私のほうが速かったもん」
「マジ?!じゃ、カイちゃん私より速いんだ」
「本気で走ったの?」
「本気だよ!奈々の方が速かった」
「ふーん」
「やっぱカイちゃんて、奈々に似てるよね」
「奈々が私に似てるんだよ。つーか、似てる?あんまり言われないけど。私はお父さん似で奈々はお母さん似だから」
「お母さん?全然似てないじゃん」
「あー。今のお母さんじゃなくて、前のお母さん。お父さんが私と奈々をひきとって、今のお母さんと再婚したから」
「え?!嘘でしょ?!」
「本当だよ。そんな嘘ついてどうするん」
「マジ?!また私のことからかってない?」
「騙してないよ。でも、みんなにはあんまり言わないでね。自慢するようなことじゃないから」
「うん。本当なんだ、知らなかった」
「奈々は何も言ってないんだ。杏とは仲がいいから知ってるかと思った」
「全然、そんなこと聞いてないよ。仲はいいけど奈々はあんまり自分のこと話さない」
「あー、確かに奈々は話さないかもな」
「でもいいよね。姉妹仲がよくて、羨ましいよ」
「杏にもお姉ちゃんいるじゃん。仲悪いの?」
「喧嘩ばっか」
「何歳離れてるん?」
「3つ」
「私と奈々は7つ離れてるからねぇ。私が大人だから喧嘩にはならないんだよ」
「えー。どこが大人なん」
「何だよガキが。まだお尻青いんじゃねぇの、奈々みたいに~」
「失礼だな。私はもう大人だよ。確かに前はガキだったけど、今は大人です」
確かに、前よりは大人になったような。

でも中学生。

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