前髪という檻
私は美容室が苦手です。
なんで苦手になったのかはもう覚えていません。
そんな感じなので
散髪に行くのは年に3か4回くらいです。
髪がすくすく伸びに伸びます。
前髪は鼻先くらいまで垂れていて
視界は檻の中のような見え方がします。
檻の鉄格子のように
真っ直ぐ降りてきています。
最近、いつまでこんな
“何か”を拗らせたような髪型を
しているんだろうかと鏡を見ながら
考えたりしました。
何か作業をするにも邪魔で
しかも清潔感も無くて
それを何年も続けて
それでいて人見知りですとか
内気な性格ですとか言っているのが
どうもマッチポンプのような気がして
まあ、とにかく変な感じがしました。
徐に前髪をかきあげ
おでこを出してみると
見慣れない自分の顔という
奇妙な感覚を覚えて
これがなかなか新鮮で嬉しくなって
そのうち
なんかセンターで分けられそうだぞと。
長い前髪を真ん中くらいで分けて
スッと髪の束を下ろしてみると
なんとも視界は良好。
前髪を避ける手癖も必要ない。
めちゃくちゃ楽じゃないかと
気づいたんですねえ。
とても似合っているとは言えませんが
おでこの出ている自分は
少しだけ明るい顔のように見えて
爽やかさのパラメータが微量ながら
増加したような気がしました。
私の視界をそして心を
閉ざしていた檻は消えて
自由を手に入れたような
心地良さがおでこを掠めます。
ということで
またしばらく髪を切らなくても
大丈夫そうです。
あーよかったよかった。
もうしばらく逃げ続けられるな。