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アホだったから3万円をワナビー野郎に投げ銭した話

思い出すだけで恥ずかしくなるけど、6年ほど前に金をドブに捨てたことがある。

何者かになりたいワナビー野郎のクラファンに、3万円寄付したのだ。


彼はあるインフルエンサーの付き人のような存在で、タイムラインにちょくちょく出てきていた。そうなると徐々に愛着が湧いてくるものだ。

彼は付き人ではあったが、何者かになりたいと考えていた。そのうち、長い旅に出る企画を開始し、クラファンで資金援助を求め始めた。

旅の途中で支援者と交流しながらゴールを目指す企画であり、クラファンで集めた資金は旅費に使われるとのことだった。返礼品もあったが、ステッカーなどの簡素なノベルティだ。

長旅をしたところで、何者かになれるわけがない。そんなことは誰にでもわかることだ。「いい経験をしたなあ」で終わることなど、火を見るより明らかだった。

しかし、僕は3万円のプランを申し込んだ。

本人から直接ノベルティを受け取れるプラン。そこに惹かれた。

僕は、彼に会いたかったのだ。


寄付をしたあと、随分経ってからDMが来た。僕の住む県を通過する日にちの目処がたったため、待ち合わせ場所を指定してきたのだ。

でも、その日は仕事であり自由が効かない。また指定場所もかなり遠く、(当時は)気軽に行ける距離ではなかった。

そんな事情で対応できないと伝えると

「なんでですか?」

との返事が来た。

当時の僕にとって3万円は大金だ。もちろん彼には関係のないことだが、出資者に対し時間と場所を譲歩する姿勢が見当たらないことに、想いは急速に冷めていった。

会えないことは確定したが、その後ノベルティを郵送するとの申し出もない。おそらく彼にとっても3万円は大金のはずだが、結局はその程度の人間だったのだとわかった。


「よくよく考えてみれば、なんも考えてない短絡的なガキじゃないか。なんで俺は3万円も払ってしまったんだろう…」

後悔の念が去来する。

どうしてそんなことをしてしまったのか?


それは、いまならわかる。


僕こそが、何者かになりたかったからだ。


++++++++

その当時の僕は、完全におかしくなる一歩手前だった。

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