『剣の街の異邦人』私は確かにその時、剣の街で異邦人だった。
剣の街の異邦人
『待ち伏せゲー』
いわゆるダンジョンRPGに分類されるものだが、ダンジョンの探索はもちろんのこと、マップ内にある「待ち伏せポイント」で敵を待ち伏せしアイテムドロップを狙う事こそがこのゲームの一番の面白さではないかと思う。
基本的に武器、防具などは待ち伏せポイントの敵からしかドロップがなく、敵が輸送してくる宝箱には剣や鎧などのシンボルが描かれており、ある程度目星をつけて狙う事が可能である。
秀逸なのは、無限に待ち伏せ出来るのではなく、「士気」というポイントを消費して待ち伏せをするため、あまり何度も敵を見送っていると、士気が枯渇してしまうため、そこそこのところで妥協も必要になってくる。戦闘するとまた士気が貯まる。
『異世界に飛ばされるベタ展開』
ストーリーは、ひょんな事から異世界に飛ばされてしまった主人公が、元の世界に戻ることを目的とする、割とオーストドックスなものだ。
飛ばされた先の異世界には、同じように主人公より前に飛ばされてしまった他の人間がおり、協力して元の世界に戻るため奔走する。
『愛すべき厨二病の”キョウ”』
すでに異世界にいた人間の中に「キョウ」と呼ばれる男性がいるのだが、彼が非常に良いキャラクターをしている。
いい感じに厨二病をこじらせている。
自分が一番になれない恨みから、かつてのリーダー(トウジ)を秘密裏に殺害していたのだった。表向きはそんなことは誰も知らず、トウジは行方不明として扱われていた。
後にキョウがかつてのリーダーであるトウジを殺害していたことが明るみとなり、ワガママ駄々っ子のようにしっかり逆ギレをしてギルドから姿を消し、ちゃんとその後主人公に成敗されるのであった。
『陰々鬱々』
ゲーム内は陰鬱な雰囲気であるものの、厨二病のキョウ、ロリっ子のアンナ、現リーダーであるしっかり者の女子高生リウなど、人間チームは魅力的なキャラクターで構成されており、憂鬱な感じはなく、むしろ閉塞感により没入感が増していた。
人間チームの他にも、機械人間チーム、精霊さんチームがあり他の種族もそれぞれ問題を抱えている。主人公の属する人間チームと他の種族との交流の中でストーリーは展開していく。各種族のリーダーも、精霊さんチームは美魔女風のお姉さん、機械人間チームは僕っ娘とポイントが高い。
『終盤からは剣の街から帰りたくない病』
ムービーなどはなく、街に戻ると、終始紙芝居のように場所ごとに一枚絵で表示されるだけなのだが、そこには確実に「剣の街」が存在していた。
元の世界に帰るために、ボスを倒しキーとなる石を集めていくのだが、集まっていくとこの世界との終わりも同時に近くなる。
帰るために頑張ってきたのに・・・この街を去ることの寂しさを拭いきれない。
主人公が剣の街に迷い込むずっと前から女子高生リウは、この異世界でトウジなき後、リーダーとなり、勇敢に戦ってきた。そんな彼女が元の世界に戻ったとき、ごく普通の女子高生に戻り、友達と遊んだり、帰り道にクレープなんぞ食べたり・・・そんな事を思うとなんだか胸が締め付けられる気持ちになる。
エンディングは3通りあり、もちろんリウ達とともに、元の世界に戻るエンディングも用意されている。
遠くに見える東京タワーをバックにリウが制服姿で振り向き微笑んでいる絵は、その一枚だけで胸が熱くなった。
『脳内補完がすごい』
自分の中に確実に「剣の街」は存在していた。
今もふと、リウはこの日本のどこかでごく普通の女子高生として生活しているのかな・・・そんな気持ちにさせてくれる非常に没入感の高い思い出深い一本であった。
初めてのダンジョンRPGにこのゲームを出来た事をうれしく思う。
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