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Photo by
tama_soraimage
ある朝起きたら
庭に大きな蛹を見つけた。庭は時々しか見ないとはいえ、なぜ気付かなかったのか不思議なくらい大きかった。測ってみると30センチを超えている。しかも2つ。
虫は苦手だけれど、どんな蝶が出てくるのか興味がわいた。直接触れないので蛹が付いている低い木を鉢ごと室内に入れ観察する事にした。
サイズは全く違うけれど、図鑑によるとアゲハ蝶の蛹のようだ。毎日ドキドキしながら観察したが、普通のアゲハ蝶なら10日から2週間で羽化するらしいのに1ヶ月過ぎても変化がない。動かず何も変わらない様子にすっかり慣れ、そのうちインテリア感覚になり、蛹がある事を忘れてしまっていた。
1年後。朝早くにパリパリと異音がして目が覚めた。見るとあの蛹からゆっくりと巨大なアゲハ蝶が出てくるところだ。大きな羽と太い身体が出てくるのをすっかり見終わってから、撮れば良かったと気がついた。こんな大きな蛹も、それが羽化するところも誰も見たことが無いだろう。幸い蛹はもう1つある。とりあえず携帯で撮ろうかと考えながら見ていると蛹に亀裂が入った。
パリパリパリ。きた!
蛹がゆっくりと割れて、中から見事なアゲハ蝶の羽…ではなく小さく黒い頭が出てきた。
「蜂だっ!」
蛹は時々、寄生蜂に卵を産みつけられると図鑑にも載っていた。蛹から小さな、というか普通サイズの蜂が次々と出てくる。慌てて窓を開け、出てきた蜂と寄生されていた蛹を窓から投げ捨てた。刺さないかも知れないが室内に蜂の大群は迷惑でしか無い。ほっと胸を撫で下ろし、せめて羽化したアゲハ蝶を撮影しようと振り向く私の頭を風が吹き抜けた。
巨大なアゲハ蝶は窓を抜けバサバサと空を飛んで行ってしまった。
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