山城に上ったよ(そして猫に会う)
その日の目的地は、高梁市成羽美術館だった。
鑑賞後、「せっかくだし、ちょっと行ってみようかな」と、何も知らず、特に考えず、地図だけ調べて行ってみた。
軽い気持ちで、備中松山城まで、山登りスタート。
ところどころに登城アドバイスが書いてあった。
慌てたらいけないらしい。
怖い。
しかし、上れど上れど、先が見えない。
「え?こんなに上らないといけないの」と途中で気付く。
しかし、ここまで来て、後に引ける訳がなかった。
ずいぶん高いところまで来た。
そろそろ到着するのか。
中間地点…。
「嘘じゃろ。まだ半分て」
気を取り直し、「休め」と言うアドバイスから、まだこれから厳しい道程があるのだろうと推測し、水分を補給した。
ほんの出来心で来ただけなのに…
ここから先、危なそうだったので写真を撮るのも止めた。若干、目眩もしたからだ。
油断すると崖下へ転落するかもしれない。
そして、ふと沸き上がる思い。
「こんな思いをしたなら、必ず会いたい。さんじゅーろーさんに!」
会えなかったら悲しいから、期待するのはやめようと隠していた“裏”目的が急に大きく沸き上がった。
念じれば通じる。
そう信じれる人間になりたい。
上りきれば、さんじゅーろーさんがいる(はず)。
何度も汗を吹きながら上り続け、ついに。
歓待を受け「ありがとう」と、心の中で返事をした。
最初に見た石垣の立派さに感動。
こんな山の上に!
こんな立派な建造物を!
歩いてきた山道を思い返し、作った人たちの苦労を思った。
そして、そして。
姿が見えた瞬間「あ!」と思わず声が出た。
殿!おられたか!会えて良かった!
ものすげー可愛いな。
顔形も、色も良い。
どこから見ても可愛い。
その場から動かない、さんじゅーろーさん。
これからも眺めの良いこの場所で、穏やかに、幸せに暮らし続けてください。
遠くから吹く風が、気持ち良かった。