旅ときのう/23日目/チェコ01
修道院にある美しい図書館に行こうと思い立ってドイツを出たのはその日の朝だった。思いつきで隣の国に行ける、というのはすごいことである。と、日本生まれの私は感じてしまう。
気がつけば私は図書館を後にして、広々とした景色の広がる街を丘のような地点から見下ろしていた。街は明るい茶色とオレンジのような屋根がならんでいて、とても気持ちがよい。
旅行にでかけて楽しい事の一つに家の屋根の形をみる、というのがある。
たとえば長距離電車にのって、外をぼんやりとながめていると、途中に点々としている家のかたちが、エリアによってどんどん別なスタイルになっていくのがよくわかる。
私は専門家でないので詳しいことは分からないが、屋根はそのスタイルを特徴付ける大きなポイントな気がするのだ。
話はそれてしまったが、あの時はそんなことは考えずに、
ただオレンジの屋根を眺めて、静かに景色をながめて、
穏やかな気持ちになっていたように思う。
一般的に景色の綺麗な高台は観光客であふれかえっていることが多いけれど、その場所は、なぜかほとんど人がいなくて、
遠くで食事をする人の気配が少しして、
天気がなんとなくよくて、静かな風の音だけがしていた。
オレンジ色の屋根の海を眺めていたのは1分だったのか10分だったのか。