trivialなフペルジア、雨声忘れたとしても
今回は言葉の添え木様のお題で作った詩5編と、オリジナルお題の詩1編をお送りいたします。
先日、雑誌「薄味コーンポタージュ」を三省堂書店で探す夢を見た、というツイートをしたところ、詩人であり朗読の達人でもあるちゃも月さんがaudio magazineとして実現してくださいました!
お題「薄味コンポタ」で詩人の方々が投稿して下さった詩を、私とちゃも月さんで朗読しております。30日間、録音記録が残っておりますので、詩に興味がある方はぜひぜひ聴いてみてください~(*´▽`*)
Trivial(平凡な、普通な)
trivial and trivial
どうか 平凡な明日が来ますように
普通の子になれますように
孤独な幼子の
眠る前のおまじない
trivial and trivial
良い知らせと悪い知らせ
君は普通の子にはならない
でも平凡な明日は来る
おまじないは
歌に変わって
trivial and warm
小瓶
音が詰められた
小瓶は空っぽ
私が生まれる前
ずっと昔には
星の砂が入っていた
小瓶は空っぽ
寂しい時は
小瓶を開けて
星の音を確かめる
小瓶は空っぽ
音がよく響くように
心の空洞のように
星の音に埋もれて
小瓶の底まで
潜っていこうか
Now
サンプル時間は本物になる
3分経った今
三々五々だった時間は
君という体験記になる
散乱する時間の光を
散策しながら繋げた君
3分経ったよ
「今」はもう君のもの
次はもっと大きな砂時計
ひっくり返そう
忘れたとしても
忘れて
思い出し
忘れて
忘れたことを忘れて
記憶から消えた時
存在から真実味が干上がるらしい
つまり
かんぴょう、ひじき、凍り豆腐
雪平鍋コトコト
甘辛醤油と出汁の香り
存在は存在のまま
温かいまま
忘れたとしても
雨声
午後4時、ちょうどを、お知らせします
時報を包むレイニーヴォイス
優しい耳当てを失くした
冷たい耳に届く
レイニーヴォイス
本当はこんな声だったのか
はっとして、じっとして
うっとりするような
レイニーヴォイス
午後9時、ちょうどを、お知らせします
寝ちゃった
フペルジア(オリジナルお題)
植物の定めに背を向けて
地面に向かって伸びる君
シダのフペルジア
君のフペルジア
フペルジアと君の間に会話帳を置けば
交互に指差し会話
終止形行方不明
円周率をメロディーにしてみたり
雪虫の知らせがきて
記憶と経験を分類してみたり
コンポタ飲んだり
冬の五角形、カペラの星を
探してみたり
私と
君とフペルジア
この三角形も美しい
私たちだけに意味がある三角形
明るすぎる太陽に背を向けて
私と君とフペルジアは息をする
会話帳は閉じないまま
お気に入りいただけましたら、よろしくお願いいたします。作品で還元できるように精進いたします。