日本物理学会に行ってきました
ねこっちです。夏休みに、私は一大イベントを計画しておりました。それが、9月16日~19日にかけて開催される日本物理学会(第79回年次大会)に参加することです。
会場は北海道大学でした。障害の特性上、一人での生活ができない私は、伯母とともに北海道に行きました。
学会は、今回が初めての参加でした。本記事では、学会に参加し、どのようであったかなどを共有するためのものです。
それでは、始めていきます。
学会について
9月16日:初めての学会参加
この日は、朝、飛行機で北海道に向かいました。一度離陸した飛行機でしたが、滑走路で鳥と衝突する「バードストライク」があり、空港に引き返しました。そのため、予定よりも1時間半ほど遅れて札幌は丘珠空港に到着しました。
北海道大学に着くと、まずは大会本部でネームホルダーをGETし、それに参加票を入れ、提げました。
午後の発表聴講まで時間がないので、食事は北海道大学構内の「セイコーマート」で急遽ボロネーゼを購入し、服にソースのつかぬように注意して食べました。その後、見たい発表の開かれる教室に向かいました。
初日は原子核物理の理論に関する発表を聴きました。私はまだ学士3年時のうえ、興味があるのは統計力学や生物物理であるため、原子核物理の内容は分かりませんでした。
しかし、発表者がどういう動機のもとで何をしたいのかということや、研究に使ったアイデアの出どころなど、つまり論理の流れは分かったので、それを聴き逃さないように意識して聴講しました。
会場で、東工大の2クォーターにお世話になった先生に会ったので、挨拶をし、感想を述べてその日はホテルに入りました。
9月17日:興味のある分野の発表を聴く
この日は、午前に「生物」を、午後に「量子論」の発表を聴きました。いずれも、今の私が興味のある分野です。
「生物」の発表について、これは今まで生理学を趣味でかじっていたことが役立ちました。詳細は分からずとも、論理の流れや、研究に使われたアイデアなどはクリアに理解することができました。
午後の「量子論」ですが、ここであることが起きました。論理の流れや出発点となるアイデアが分かったのは勿論でしたが、ある発表で、私が「これは本当にそうなのだろうか・・・?」と疑問に思った点があったため、私が勇気を出してその発表者にその旨を質問してみたところ、なんと、私の質問で、その研究の本質的な内容が誤りだったことがわかり、その人が「もう一度考え直した方がいいですね・・・」と言う一幕がありました。会場もざわつき、私は「なにかまずいことをしてしまったのでは・・・?」と焦ってしまいました。
初めての学会参加で、このようなことがあり、私は驚きました。それと同時に、研究者同士が意見交換でき、研究が今まさにリアルタイムで動く現場である学会に参加できたことを嬉しくも思いました。
夕方、ホテルでそのことを母にLINEすると、母から興奮した様子で電話がかかってきました。この時ほどある種の達成感を覚えたことは、ありませんでした。
9月18日:この日も興味のある分野の発表を見る
この日は、「可積分系」と「生物」の発表を聴きました。
可積分系については、「物理のモデルを数学的に厳密に扱う」物理の違った一面を見られ、興味深かったです。ある発表で、疑似科学のようなことを発表なさっている方がいて、その人に「いつまで学会にいるんですか?」という質問が飛んでいたことは印象的でした。
午後の生物では、2日目の午前ほどではありませんでしたが、論理の流れを追うことができ、内容もそこそこ理解できました。実際の研究で使われている手法(簡単なモデルから偏微分方程式を立てる、自由エネルギーを考える、・・・)が、私が趣味の探究活動で使っている方法と似ていることに驚きました。今は単に知識が最先端レベルに追いついていない状態ですが、この上、最先端の知識をつけることができれば、私も十分に研究ができる、と思ったのでした。
9月19日:最終日
最終日は、「非平衡系」の発表を聴きました。
私が将来進みたいと思っているのは、この非平衡系の研究です。それを生命科学に応用し、生物に関する未知の知見を得ることが、私の大目標です。
この日、最も印象に残ったのは、「Mpemba効果」と呼ばれる現象についての発表でした(このような発表は2つありました)。Mpemba効果とは、適当な条件下で、お湯のほうが水よりもはやく凍る、という現象で、発表では、それを一般の物理系に拡張し、その物理系でMpemba効果が生じるかどうかを数学的に取り扱う、というものが多かったように思います。
私は、この発表を聴き、以前考えていた「曲線上の落下運動」というテーマと自分の中で重なった部分があったため、それについて深く考えてみたい、と思ったのでした。こうして、新たな探究テーマを得ることもでき、充実した発表聴講でした。
昼食は、4日間で初めて、ゆったりと学食で食べました。美味しい昼食でした。
学会編:最後に
今回の学会は、北海道大学で開催されました。キャンパスは広いことは大きな驚きで、足が疲れました。
今後は、発表内容をもう一度咀嚼してみるとともに、Mpemba効果から得られた新しい探究テ―マについて、思索を深めてみようと思います。
改めて、物理学は面白いです。
北国の 風吹きぬけて 身に沁むる
未知の物理の 深さと楽しみ
もう一つの目的・クスサン採集について
じつは、今回北海道に行ったのはもう一つの目的があり、それは昆虫が好きな私が、小さいころからの夢であった「クスサン」という蛾を捕まえることです。
私の住んでいる静岡の地域では、クスサンをはじめ、ヤママユガ科の蛾はほとんどおらず、数年に1度、ヤママユガの死骸を山奥で見る程度です。
事前の情報で、札幌はススキノや琴似周辺でクスサンが大発生していた、ということを知り、これは行くしかない、と思っていたのでした。
今回は、北海道で夜を過ごした9月16,17,18日の3日間、泊まったホテルから行ける範囲で最もクスサンの目撃情報が多かった琴似駅周辺を探しました。以下、それぞれの日の報告です。
9月16日:大量の翅と、死骸、卵を見つける
この日は学会を終えて食事をとるとすぐに、琴似駅を目指して地下鉄に乗りました。そして、事前の情報を調べる段階で何度か動画で見ていた琴似駅のバスターミナル付近を散策しました。
すると、バスターミナルの側溝に、大量の翅が落ち葉のように落ちているのを見ました。それを何枚かビニール袋に入れ、近くの店の照明付近に向かいました。
すると、あるコンビニの前に、非常に状態の良いクスサンの死骸1体と、産み付けられた卵がありました。私は、小さいころから見たかったクスサンを、死骸とはいえ、目の前で見ることができ、感激しました。
死骸は雌のものだったので、卵はその雌が産んだものと思われます。その死骸と卵も、丁寧にビニール袋に入れました。そして、この日は遅くなったため、ビニール袋をさらに不透明な袋に入れ、地下鉄に乗って帰りました。
以下、クスサンの死骸の写真を載せます(2枚)。不快な方は飛ばして下さい:
9月17日:琴似駅の北のほうを歩く
この日は、地下鉄琴似駅の北側を散策しました。いくつかの街灯や、建物の照明など注意してみてみましたが、死骸はおろか、翅のかけらもほとんどありませんでした。
コンビニでお茶を買い、引き返して地下鉄でホテルに戻りました。
9月18日:琴似駅南の方を歩く
この日は、南の方を歩きました。南には山があるので、そこから何匹かのクスサンが飛んできていることを期待して歩きました。
しかし、この日もクスサンは0でした。このことから、クスサンの羽化~繁殖のピークは、本当に一瞬なのだな、ということを思ったのでした。
最後に、動画で何度か見た地下鉄琴似駅の出口を撮影し、ここまで来た証としました。
クスサン編:最後に
クスサンの卵、および死骸は丁寧に梱包し、静岡の自宅に郵送しました。この記事を書いている時点(2024年9月21日、10時40分)ではまだ着いていないため、これから到着するのが楽しみです。
クスサンのピークは一瞬なのだ、ということを、今回の採集では特に感じました。クスサンはその一瞬の命を燃やし、次の世代へと命を繋いでいくのが、美しいと思いました。
最後に、クスサンを探している時に詠んだ短歌を載せます:
楠蚕や きみはいづこへ 去りにきや
静かなる街 ひた歩く夜
最後に
今回の学会聴講、およびクスサン採集は、この夏休みのなかでも最大級に楽しい毎日で、4日間は走り去るように過ぎていきました。
言葉にできぬほど、この4日間は充実していました。一緒に行ってくれた伯母にも、感謝感激です。
今後は、新たな探究テーマの思考をして、今回の学会聴講の名残を味わいつつ、次のステージへと進めるように、勉学を楽しんでいこうと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ねこっち