文章力ゼロのぼくでも、広報マンになれた話
「まさか広報マンになるなんて」
26年前、韓国の会社に就職して、最初に口から出た言葉である。
95年の春、ぼくはひょっとしたきっかけで、
韓国の観光関連会社に務めることになった。
配属された部署は広報部。
日韓の翻訳者として入ったが、翻訳だけさせるのは
もったいないと、出社初日から広報もまかされた。
▲広報の主業務といえば、リリースを書くことだ。
しかし、当時は日本語のリリース作成について
教えてくれる人は誰もいなかった。
仕事はすべて手探りだった。
それでも、何とかやり抜くことができたのは
高校のときに実践していた、模写のおかげだ。
書く土台が少しだが、あったということだ。
▲ぼくが模写を始めたのには理由があった。
高校2年生のころ、
公務員試験を目指していたぼくは、
国語力不足が悩みだった。
文章力ゼロとまではいかないが、だいぶ不足していた。
(今でも悩みであるが)
「短期間で読解力と文章力を高める方法はないだろうか」
色々悩んだ末に、思いついたのが新聞のコラムを
模写することだった。
たしか、朝日新聞の天声人語だったと思うが
丁寧に、原稿用紙に模写したことを覚えている。
模写は公務員試験まで1年ぐらい続いた。
今思うと、読解力と文章力を高めるのに
効果があったと思っている。
▲作家の林望さんも、著書の『芸術の磨き方』で、
森鴎外、伊丹十三、北杜夫の3人を手本に
文章を勉強したと述べている。
タイプの違った作家を3人ぐらい真似るのが
文章が偏らず良いのだとか。
日本でも中高生の学力低下が心配されているが、
学力アップのために、新聞の模写をすすめたい。
▲新聞のコラムを模写することは、いろいろ利点がある。
1)文章が短い。5分で書けるので、毎日続けやすい。
2)起承転結型が多く、文章構成が学べる。
3)社会の話題が題材で、多方面の知識が増える。
4)論理的に考える癖がつく。
これが書くだけで、自然と身につくのである。
1年間という短い期間であったが、
結果的に、公務員試験にも合格し
広報のような仕事もこなせた。
今でも、模写のおかげだと思っている。