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プレゼントーク翻訳ー夏のやりとり

7月の半ばころ、フリーランス翻訳者と出会い、ひと月あまり経ちました じりじりする猛暑のなか、下訳チェックをしてくださる方を探した日々はスリリングでした

まずTwitterで探した何人かのフリーランス翻訳者に問い合わせのメールを送ったところ、すぐに断りのメールをくださった方が一人、数日して断りのメールをくださった方が一人、あとはなしのつぶてでした

つぎに翻訳者の会に登録されている方たちのなかから何人かをピックアップしました 

専門分野、得意分野、経歴実績などが情報満載の登録者のなかからどこかピンと来る方を探してリストを作り、問い合わせメールを送りました このときは断りのメールを3通、やってみたいというメールを1通いただきました 

この1通をくださった方にオリジナル和文原稿と下手すぎる下訳原稿をお送りし、「やってみていただけますか?」とお聞きしたところ、OKだったのです

1ワードにつきいくらという料金と納期の相談をして、お願いしますという話になり、めでたくスタート   先方は、部分的にチェックをしては送ってくださいます

はじめてチェックが入ったファイルを見たときは、元原稿の文脈にほとんど関わらない2,3のコメントを送るリアクションを返すのがやっとでした  

原稿のテーマはカネミ油症事件です わたしは当初、チェック者が元原稿の文脈をどうとらえているかをうまく掴める自信がありませんでした

2度、3度とやりとりをしていくうちに、チェック・修正の方針や文脈理解を掴めるようになっていきました

直にお会いしたことはない方にいきなり仕事の依頼を差し上げたのですから、はじめはもちろんコミュニケーションをとること自体が暗中模索の手探りです

それでも、時間がたつうちに、ひとつの動詞のセレクトはこれでよいかとか、修飾部のかかり方はどうなっているかなど、文脈抜きには話しにくい場面でもだんだんスムーズに話し合えるようになっていきました 

お互いを尊重しつつ、お互いの意図や理解を行き来させながら、血の通ったやりとりができるようになってきたと感じます 

いまは文脈に関係する部分をふくんだ質問を送り、回答を返していただくことができるまでになりました 先方が質問をちゃんと受けとめてくださると信頼できるので、迷いなく質問を送れます 

信頼できるようになったのは、翻訳チェック者が理系のバックグラウンドをもつ勤勉な方であるだけでなく、文章や言葉に対する繊細さに裏打ちされたこだわりを持っているとわかってきたからです 

ほんのひと月ほどの間にはじめての相手と信頼して言葉を交わせるようになるのはちょっとしたハッピーストーリーですw

繊細なこだわりをもって格闘してくださるフリーランス翻訳者の方と出会えたのはなんといっても今回の幸運でした

自分がフリーランスになってからいつかやってみたいと待ち望んでいた100%文系と理系のフリーランス同士の共同作業でもあります

寝苦しい夏の夜遅く、ダメモトで開いたメールボックスにひとつのメールが舞い込んでいるのを見つけ、おもわずパソコンの画面に向かって「あっ」とちいさく叫んだあのメールが嬉しい縁を運んでくれました

残りの訳文チェックが終わったあとはどうすればよいか、この先もわからないことが待っていそうです きっとまた一歩ずつ手探りでしょう

そもそもオリジナルの和文原稿は、文章ごとに、ある文脈のなかで、ある文脈のなかから書いています ひとつの文章に2つや3つの文脈がからまる場合もあります 

なにしろ原稿のテーマは、半世紀をこえる歴史をもつカネミ油症事件です 公害事件はどれもそれぞれに長い歴史と複雑な文脈を抱えているのです  

被害者の方々に向けて話をするための講演原稿なので、具体的なトピックごとに、ある文脈のなかで、ある文脈のなかから、ときには文脈がからみあいながらなんとかしゃべっているわけです

最終的に伝えたいメッセージはできるかぎりシンプルにしたつもりです 和文でも英文でもメッセージが伝わればそれでよいのです

窓の外、柿の木あたりに止まってツクツクボウシが鳴いています 

蝉の声をきき、シュウメイギクの白い蕾に秋が近いと感じながら拙稿翻訳のこれからをおもいめぐらせています

ここまで読んでいただきましてありがとうございました☆

   




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