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ラノベ編集者はイラストを入れる場所をどう選ぶのか?
ラノベにはカラー数枚、
モノクロ10枚ほどイラストが入っています。
それでは編集者はどのようにしてイラストが入る箇所を選んでいるのでしょうか?
1⃣原稿を読み候補を挙げていく
まずは原稿を拝読しながらイラストを入れたい場面をひたすらリストアップしていきます。
「初登場」「映える」「見せたい」「マスト」「推しヒロイン」「サービスシーン」などを考えつつ
「〇〇が△△しているところ」というメモを
写経のように無心で書き出していきます。
後述しますが、書き出す際に「誰が」「何をしているか」わかることが大切です。
ここで書き出す際に、
脳内になんとなく構図も浮かべておきます。
加えて、担当イラストレーターさんがこの場面を描いたらどんな絵になるか。魅力を活かした素敵な場面になるか、うまく収まるかなど考えつつ。
1冊あたり100箇所ほどピックアップしていきます。
(私はたぶん多いです)
2⃣絞り込み
ひととおり箇所を書きだしたら、
以下のことを考えながら候補を絞り込みます。
①イラスト位置のバランス
全体を見て前半だけ多かったり、イラストが1箇所に集中したりしないかを考えます。
※1巻は初登場キャラが多いので、前半が多めになります。
②キャラクターのバランス
特定のキャラだけに集中しないかを確認します。
③シーンのバランス
戦闘シーンやサービスシーンなど、
選んだシーンの重複やバランスをチェックします。
読者さんが期待する箇所が入っているかも確認します。
④構図のバランス
予想される構図を脳内で思い浮かべて、似たようなシーンばかりになっていないか考えます。
※読者さんが飽きやすく、イラストレーターさんも描きにくいため。
⑤イラストレーターさんの特性
お願いしているイラストレーターさんの魅力が最も伝えられるイラストになりそうか考えます。
手間がかかりすぎる場面ばかり選んでいないかも確認します。
3⃣著者さんと意見交換
少し多めに絞り込んだリストを作家さんに見てもらい、
意見交換して必要により差し替え。
リストの最終調整をします。
※最初に「今回絶対イラストがほしい場面はありますか?」と
聞いておくことも多いです。
4⃣イラストレーターさん確認とヒアリング
イラストレーターさんにリストを提出して、
確認と意見を伺います。
イラストレーターさんはイラストのプロですから、とても重要です。
「ここはいい絵にならないかもしれません」と指摘を頂いて
別の場面に差し替えたり。
「ここが描きたいです!」とお話を頂いて大喜びで調整することも。
時に、作家さんと相談して、イラストに合わせて本文を揃えることもあります。
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イラストを入れる箇所については、
だいたいこんな調整を経て決まっていきます。
編集さんによって
作家さんに相談する方もいれば、自身で全部決める方もいるそうです。
作家さんも、一緒に決めたい方もいれば、
イラストのことはプロにお任せしますという方も。
私は挿絵箇所の相談はもちろん、
イラストレーターさんから頂いたラフも
基本的に全部作家さんに見て頂いていました。
ラフが見られる機会は貴重ですし、嬉しいのではないかと思いましたので。
もし、イラストレーターさまが「最高のラフができた!」と考えたラフに対して作家さんが「うーん…」となったりしますと、間に挟まれて大変なのでは!?などと考えるかもしれませんが、実際は喜んで頂けることばかりでした。
また、ラフを見て頂く利点として、
作家さんのモチベーションアップと。
イラスト指定にミスがあった際に気づいて頂けることも挙げられます。
イラストを依頼する際には、
どんな時間帯に、どんな場所に、誰がどんな格好でいて、何をしているかと。
それを踏まえてどんなイラストを描いて頂きたいかシートにまとめますが…!
たまに内容を誤ってしまうことがあり、
仕上げて頂いてから修正するのは大変な労力なので、この段階で見つけておくのが重要なのです。
それでも…揃って見惚れて依頼ミスを見逃し、
テキストの方で帳尻を合わせたこともありますが…。
さらに、作家さんから頂いたラフの感想をイラストレーターさんに送ることで、イラストレーターさんのモチベーションが上がることもあります。
ともあれ。
イラストシーン選びは本当に編集さんの個性が出るところで、
ヒロインとのキスシーン一つとっても、
「大切な場面だから絶対イラストを入れるべき」派の方もいれば。
「読者さんとヒロインだけの大切な場面だから」と直接は入れない派も。
キスシーンの構図も
「主人公視点でヒロインだけ」な臨場感重視派もいれば、
雰囲気重視で「第三者視点で」と依頼する人もいます。
正解はありません。
いずれにしても編集としての願いは揃って一つで
作品に没入して頂くために最適な箇所に最高のイラストを入れたい!です。
作品本編やイラストをじっくり堪能されたあと、
ちょっとだけその裏でイラストに頭を悩ませる編集のことを考えて頂くと、少し楽しいかもしれませんね。