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ラノベのイラストレーターさん候補はどのように決まるのか?
ラノベといえば、イラストで彩られた小説作品と認識されている方も多いと思います。
実際のところ、シリーズ1巻の売れゆきは内容よりイラストとタイトルが影響するという意見もあります。
ではラノベのイラストレーターさんはどのように、どんな基準で決まっていくのでしょうか。
ざっくりフローをご紹介します。
1⃣作品に合う方のピックアップ
通常、イラストの依頼より先に原稿がありますので、まず編集が作品に合うイラストレーターさん候補を探します。
この時、普段から事あるごとにチェックして追加している「依頼したいイラストレーターさんリスト」が役に立ちます。
候補出しする際、編集は「作品を読み終わってから選ぶ」かたちになりますが、読み終わってから「なるほど作品に合っている」と感じる方よりも。
未読の読者さんが純粋に「タイトルとイラストを見て興味を惹かれる」方を候補に挙げるよう努めています。
店頭で見かける際、読者さんは未読だからです。
なお、この段階で一度、
下でも書いている①から⑧を一通り確認しておきます。
その結果、この時点で既に決めうちで頼みたい方がいることも多いですが、作家さんと相談して擦り合わせるため5名程度候補を挙げていきます。
2⃣周りの方にヒアリング
リストができたら、作家さんと相談する前に、リストに挙げた方について周りにヒアリングします。
連絡先を知っている人はいるか。
前にお仕事をしたことがある人がいるか。
どんなイラストが得意だったか、どんな作品のイラストを描きたがっていたか、どのくらいのペースでイラストを描かれるか、ご連絡の取りやすい方法や時間帯などを聞いておきます。
お仕事の詰まり具合なども、
わかれば一緒に確認します。
速度を気にするのは、ラノベはイラストがないと刊行できないため、執筆速度が速い作家さんとゆっくりなイラストレーターさん、または逆のペアでご一緒すると、一方をお待たせすることになってしまうためです。
連絡が取りやすいかも超重要です。
スケジュールも大事ですが、
連絡が取れることの方が100倍重要です。
この過程で状況に応じて候補の方を調整します。
3️⃣作家さんの希望を聞く
作家さんの中には「〇〇さんのイラストを頭に浮かべながら原稿を書きました!」という方もいます。
そのため先に一度理想のイラストレーターさんを聞いてみます。
意見が完全に一致した場合、すぐ依頼のステップに移ることもあります。
時にお願いしたいイラストレーターさんリストを頂くことがあり、大リーグでいう大谷さんレベルのドリームチームなイラストレーターさんのみで構成されていることもあります。
描いてもらえるならぜひお願いしたいですが、なかなか難しいことも多いです…。
4️⃣作家さんと相談
上で完成したリストと、作家さんからもリスト(夢と現実を合わせ持ったもの)があれば頂いて相談します。
突き合わせたリストから、以下のようなことを話しながら作家さんと一緒にベストな方を考えていきます。
⓪作家さん or 編集の推し(好み)
何気に判断を左右する重要な要素です。
①作品に合う
作品の売りから、
イラストのどこに重きを置くか、
リストの方のイラストの傾向が作品の売りと
適合しているか確認します。
②旬で人気が高い
ラノベは表紙を見て購入を決める方が多いです。
人気のイラストレーターさんはファンも多く、告知頂けるとファンの方に手に取ってもらえることも。
他社で売れている方なら、
尚素晴らしく、依頼したい順位が上がります。
いっぽう、人気だけに受けて頂くのが難しかったり、
受けて頂けてもお忙しすぎて続刊のスケジュールがなかなか取れなかったりすることもあります。
③他社での刊行経験
他社で描かれていて定期的に本が出ている方であれば、
速度に問題がないことがわかります。複数レーベル並行されていたら尚更。
編集的にはチェックしたい要素です。
刊行されている作品から得意なイラストの方向性やクオリティ、
描くことのできるイラストの幅の広さも知ることができます。重要な指針です。
④速度
作家さんの執筆スピードが速い場合、
イラストレーターさんも速度が重要になります。
ラノベは早いと3~4か月に1冊刊行されます。
イラストがなければ刊行できません。
そのため、情報があれば加味します。
⑤特性
イラストの内容について細かく依頼したい作家さんと、大まかな依頼だけでのびのび自由に描いた方が描きやすいイラストレーターさんの組み合わせは、あまりうまくいかないことが多いです。
逆に、細かいところまで説明がほしいイラストレーターさんと、イラストのことはイラストレーターさんに任せたい作家さんの組み合わせも同じです。
イラストについては最終的にはその道のプロであるイラストレーターさんの意見を優先することが多いですが、最初から「ぶつかりそうかも?」と思ったら、依頼の前に考えます。
作品が好きすぎて感想をたくさん届けたいイラストレーターさんに対して、それを負荷に感じてしまう作家さんもいますので、このあたりも事前にわかっていたらお声がけ前にヒアリングしておきます。
みなさん良い方ばかりで、基本的に好意しかないのですが、合う合わないはどうしてもありますので、依頼前に作家さんに確認できるところは確認しておきます。
⑥作品づくりを一緒に楽しんで頂ける
SNSなどの発言や描かれているイラストの趣味嗜好から、この方に依頼できると楽しいかも!と相談することも。
⑦以前お仕事したことがある
一度お会いしたことやお仕事をご一緒したことのある方には特に「この作品は〇〇さんにお願いしたらものすごくいいイラストを描いてもらえそう」と思うことがあります。
仲間がイラストを頼んだことがある方を他のメンバーもチェックしています。
信頼できて上手いイラストレーターさんは、ひとつのシリーズが完結しても引っ張りだこです。
⑧その他
話題作りのため、敢えて有名なアニメーターさんや、本編の途中にマンガを挟むために、マンガが描ける方をリストに載せておいてご相談することもあります。
逆張りで全く方向性が違う方について相談することも。
ーー
上記のような点について作家さんと相談を繰り広げ、「この方にぜひ」という意見をまとめていきます。
やりとりのうちにお互いのイメージの相違点を埋めていき、時に双方リストを作り直して、2度目3度目の相談に臨むこともあったりします。
5️⃣候補決定、お声がけ
意見が一致したところで、
バッティングを避ける目的も兼ねて仲間と営業にもう一度確認。イラストレーターさんに依頼のご連絡をします。
もちろん全作品で上のフローをしているわけではなく、作家さんによっては完全にお任せの方もいます。
また、イラストレーターさんへのご依頼はメールでさせて頂くことがほとんどで、アドレスがSNSなどで公開されているとありがたいのですが、なくて辿り着けないこともあります。
メールを送って1週間前後待ち、お返事ないときは念のためもう一度送信。それでもお返事がないときは、涙を呑んで諦めて次の方を探すことが多いです。
返信が頂ける確率は全体の7〜8割くらいでしょうか…。
SNSがなく、ホームページがある方に、ホームページのフォームから依頼することもありますが、ホームページが放置状態になっていて届かないこともあります。
➖➖
ともあれ、イラストレーターさんの候補が決まるまでをざっくりと書いてみました。
編集さんによって違うと思いますが、ご参考まで。
なお、私は新人のイラストレーターさんとお仕事をすることが好きで、よく商業未経験の新しい方にイラストをお願いしていました。
新しい方は描かれる範囲もご連絡の取りやすさも未知数ですが、おかげさまで一緒にたくさんの作品に楽しく取り組ませて頂きました!
今でもつい癖で素敵なイラストや素晴らしいイラストを描かれるイラストレーターさんをチェックしてしまいますが…。
もしまた機会がありましたら、
ぜひよろしくお願いします‼︎