社会と統合失調症
今回のことはちょっと重い内容なんですが、前から何回も思ってた事なので、この機会にまとめておきます。こうやって文字に残しておくことで、今後また考えなくてよくなるので。
文字にしておくことで、同じことを頭の中でぐるぐる回るのを防げるんです。
このテーマを考えたきっかけ
この「社会と統合失調症」というテーマを考えたきっかけは色々あるんですが、まずは自分の気質に由来するもの。
自分は哲学的なことを考える癖がちょっとあって、なので、人間の生とか死について考えることが多いんですよね。そこがきっかけで、統合失調症も含めて、人間の病気とか健康とかにもちょっと興味湧く傾向にあります。(だから、お酒飲まなかったりとか、健康オタクみたいなとこもある)
それから、自分が大学の法学部で、刑法の心神喪失や心神耗弱などについて習ったというのもあります。後述しますが、統合失調症の人間が、心神喪失・心神耗弱を理由に刑が軽くなるのはちょくちょくあって、それに対する世間の反応と、自分の意見が違ってたというのもあります。
それで、ついこの前(2024年12月14日)にマクドナルドの店舗内で、中学生2人が刺されるという事件があって、このテーマをまた思い出したので、いい機会だと思って書いてみます。
もちろん、僕は医者でもないし、刑法学者でもないので、参考程度に見てね。
あと、部分的に犯罪者を擁護する場面がありますが、僕自身は統合失調症ではないし、身内にもそういう人間がいる訳ではないので、中立の立場で結論付けしていると思ってください。
統合失調症とは
まず、統合失調症とは何かについて、よく知らない人のために、統合失調症の特徴や症状、治療法などをまとめて引用しておきます。知ってる人は飛ばしてね。
概要
統合失調症は、考えや気持ちがまとまらなくなる状態が続く精神疾患で、その原因は脳の機能にあると考えられています。
約100 人に1 人がかかるといわれており、決して特殊な病気ではありません。
思春期から40歳くらいまでに発病しやすい病気です。
薬や精神科リハビリテーションなどの治療によって回復することができます。
https://www.smilenavigator.jp/tougou/about/
症状
妄想：「テレビで自分のことが話題になっている」「ずっと監視されている」など、実際にはないことを強く確信する。
幻覚：周りに誰もいないのに命令する声や悪口が聞こえたり（幻聴）、ないはずのものが見えたり（幻視）して、それを現実的な感覚として知覚する。
思考障害：思考が混乱し、考え方に一貫性がなくなる。会話に脈絡がなくなり、何を話しているのかわからなくなることもある。
発症する理由
遺伝的な要因：家系的な要因はあるようですが、遺伝だけで決まるものではないことも明らかになっています。
環境的な要因：心理的、社会的、身体的ストレスなどは発症の要因となるようです。
https://kokoro-share.jp/sc/symptoms/index.html
治療法
薬による治療と精神科リハビリテーションがあります。
急性期には薬による治療が基本になりますが、なるべく早い時期から薬と精神科リハビリテーションを組み合わせた治療を行うことが効果的です。
・ザックリ言うと
こんな言い方はあれですが、一般的に「ヤバい人」っているじゃないですか。
例えば、駅のホームとか電車でよく分からないことを言ってる人とか。
或いは、全然会話が通じない人とか。自分が何か(国家権力とかの場合が多い)にストーカーされてると訴えかける人とか。
全員が当てはまるわけでは勿論ないけど、そういう人たちは統合失調症である場合が多いです。
統合失調症と犯罪
さて、ここからが本題です。社会的によく問題になるのが、殺人事件などの重大犯罪を犯したときに、心神喪失や心神耗弱などのいわゆる責任能力が無い、もしくは欠けていることを理由に、無罪もしくは罪が減刑されることがあること。
この心神喪失や心神耗弱に当てはまる人間の多くが、統合失調症の人間です。これ意外と知られてないと思う。
ちょっと古いデータですが、心神喪失・心神耗弱者と認められた者の、半分以上が統合失調症の人間なんです。
・世間の意見
これに対して、世間の意見としては「心神喪失や心神耗弱を理由に刑を減刑、もしくは無罪にするのはよくない。重大犯罪を犯しているのに変わりはないのだから、普通の犯罪者と同等に裁かれるべき。」というのが割と多くあると思います。(これに関してはデータがないので僕の感覚。間違ってたらごめん。)
ただ、僕はこういう意見にずっと疑問を感じています。
統合失調症の方の背景などを考えると、心神喪失・心神耗弱が認められるケースは当然あっていいと思っていますし、むしろ社会のそういう人間に対する眼差しが強すぎることにも違和感を感じています。
この記事を書いているのは、そういう理由です。
統合失調症の人間の背景
上で引用したように、統合失調症になる原因は、遺伝的要因と環境的要因です。
ここでは、環境的要因に着目し、かつ具体的な例を挙げて、犯罪を犯した統合失調症の人間の背景を見てみます。
例：京アニ事件
知らない人はいないと思いますが、一応概要だけ引用しときます。
京都アニメーション放火殺人事件
2019年7月18日、京都市伏見区にある「京都アニメーション」の第1スタジオが放火され、社員36人が死亡、32人が重軽傷を負った。青葉真司被告（45）はスタジオに侵入してガソリンをまいて火をつけたなどとして、放火や殺人などの罪に問われている。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/jiken_kisha/kishanote/kishanote80/
ちなみに、第一審判決は死刑で、現在控訴中です。
ここで、問いたいのは、裁判の具体的な中身についてではなく、「統合失調症と社会」という大きなテーマで持論を展開したいと思います。強調しておきたいのは、裁判で争われた細かい事情や、青葉被告に死刑が妥当かとかの議論はしませんし、刑法の学問的な議論もしません。(裁判内容について詳しく知りたい方はこちら)
・青葉被告の生い立ち
被告の家庭環境はあまりよくありませんでした。9歳で親が離婚、父親は被告が中学生のときに、無職となり生活保護を受給。父親からの虐待もありました。
まず、愛情不足の問題があります。親からの愛情不足については、こちらの記事で書いてるよ。
そこから、いろいろあって(知りたい人は調べて)、2015年の10月に統合失調症と診断されます。障害者手帳が交付され、薬物治療をするも、幻覚や被害妄想は無くならず、京アニ事件を起こすきっかけになります。(だいぶ端折りました)
統合失調症の人間に罪はある？
この京アニの例を出して僕が言いたいのは、統合失調症の人間には、必ず病気を患った原因があるということ。
その原因が遺伝的な要因によるものなのか、環境的な要因によるものなのか、というのはありますが、統合失調症の人間に罪がないケースは一定あると思うのです。
環境的要因で言うと、統合失調症に親からの虐待やいじめ、或いは会社内でのパワハラなど、そういったストレスが原因で統合失調症になる人はよくいます。というか、虐待・いじめ・ハラスメント、大体この3パターン。
そこで、統合失調症を患ったことで、幻覚や被害妄想を起こし、それが原因で重大犯罪を犯したときに、その統合失調症を患っている人に責任があるのかどうかというのを問いたいのです。
例えば、親からのひどい虐待が原因で統合失調症になり、幻覚によって人を殺してしまった場合、人を殺した人間よりも、親の責任の方が重大なのではないか、こう思う訳です。
あくまで、かなり抽象的な考え方をしていますが、こういう背景を考えると、勿論ケースバイケースですが、統合失調症患者に罪を問うのは、酷ではないかと思うわけです。
社会と統合失調症
ただ、こういう背景は社会からはあまり意識されないものです。
重大な犯罪が起こったときには、真っ先に被害者感情を考える人が多いと思います。そうなると、当然犯罪を犯した人間に対しては、強い刑罰を求めたくなります。
もちろん、統合失調症だからといって何でもかんでも許される訳ではありません。実際に心神喪失や心神耗弱が認められるケースは少数です。
しかし、犯罪者に厳罰を求めて、結果死刑が出て良かったね、では社会は何も変わりません。実際に統合失調症患者をどう社会全体で支えていくか、ここを考えなければ同じような事件は、起き続けます。
・正直そういう人間と関わりたくない
社会はこういう人間を無視したい。だって関わるとろくな事がないから。面倒臭いから。そういう人間を見てて気分が悪いから。できれば蓋をしておきたい。
こういう感覚を表には出さなくても、潜在的に社会全体としても、個人としても持っている人が多いと思います。
それでいいのか？社会全体にとってそれはいいのか？
社会全体で支援していくのが、社会のためでもあり、患者本人のためでもあると思っています。
まあその支援のやり方っていうのも中々難しいんだけどね。
インフルとか風邪とかだと、「熱があるんですけど」とか「体がだるいんですけど」って自分で病院に行くけど、「自分、統合失調症かもしれないんです」って病院に行く人なんかいないからね。
だから、必ず他者からの助けが必要なんだけど、ここがかなり難しいポイントです。(今回は関係ないのであまり書かないけど)
最後に改めて言いたいのは、厳罰を求めるだけでは、社会は何も変わらない。京アニのような事件は、また近い将来必ず起きます。間違いなく起きます。これを社会へのメッセージとして書いておきます。(ほぼ誰も見てないからメッセージにならないんだけどね。)
以上、前から思ってたことを書いてみた回でした。おやすみ。