【臨床生理】血液の「循環」を考える③ 〜ショック〜
こんにちは!ねこのてです!
最近は、人の「循環」について記事にしています。心臓のトラブルで血液の循環が滞る(渋滞が起こる)と、それが連鎖して色んな症状が出てきてしまいましたね。
そして、渋滞の原因についても前回軽く触れておりました!
今回は、その循環トラブルを生む原因の一つである「ショック」についての記事です。
「ショック」という言葉は、実は医療職でない人と医療職では意味が全く違う言葉でして、医療業界では「アカウント乗っ取られてまじショック・・・」というような意味では使われません。
医療業界における「ショック」を簡単に表現すると、
「Cell functionを保てないほど血流量が低下した状態」
です。(血圧とcell functionの関係は以下を参照)
このショックという、循環破綻状態は非常に危険!!生命の危機!
血流量低下により、細胞が機能を果たすのに必要な酸素が届けられないので、ショック状態の体には刻一刻と様々な症状(臨床生理:血圧②の記事にまとめています)が出てきます。受け答えが変だったり、意識がない状態も数多くあります。
これまで見た循環破綻のイメージが「渋滞」だとしたら、ショックはなんでしょう・・。うーん、例えが難しいですけど、大雪とかで交通そのものがまひしてしまうようなイメージでしょうか。ニュースでやってた新千歳空港からの電車が動かない・・みたいな。そういったイメージの循環破綻です。
まぁ、ショックの状態はとにかくやばい!!
なので、迅速な対応が求められますし、理解が重要な病態でもあります。今回はそこをしっかりと理解できる記事を目指そうと思います!
じゃ、さっそくですが4つあるショックの種類を以下にまとめます!
循環血液量減少性ショック(hypovolemic shock)
「循環」を担保するには、そもそも循環の担い手である血液が必要じゃないですか。
このショックは読んで字のごとく、血液そのものがなんらかの理由で減少してしまうために酸素を運べなくなり、結果として引き起こされるショック状態を言います。
血液が減少してしまう原因は様々ですが、一番多いのはやはり交通事故が原因の出血でしょうか。他にも、手術後の縫合不全などで起こる臓器出血、動脈性の消化管出血などがあるでしょうかね。要するに、大切な血液がどこかに漏れ出てしまって引き起こされるので、このショックは別名「出血性ショック」とも言います。
もう少し詳しく見てみます。
血液が足りない!!となったら、体は脳などの重要臓器を守ろうと頑張ります。
「手足に行く血液なんてこの際どうでもいい!!命がかかってんだから!!」って。
なので、手足には血流が行かないように四肢の血管を収縮させ、体の中心部に限られた血液を優先させます。
その結果、
手足は冷たく、顔色も蒼白色になり、血液を急いで運ぼうと脈も速くなります。
こうなった人を見たら、
「さ〜て、血圧を測ってcell functionはどうなってるかな?」なんてやってる暇はなく、「この人ショック状態!!急いでみんな集まって〜!!」っとなるのです。
血液が足りてないので、輸血や輸液を行います。そして、止血処置も重要ですよね!
※輸液※
水分やミネラルなどの電解質を静脈から投与することです。
輸液製剤は細胞内/外液や浸透圧とかの比率によって種類は様々で、適切に選択されるんですけど、ここではとりあえず点滴みたいなイメージで結構です。そのうち輸液まとめます。
心原性ショック(cardiogenic shock)
前に記事にした渋滞から起こる心不全のイメージを思い出してください!
心臓のポンプ機能がやられるせいで、体へ血液を循環させることが困難になります。
そのため別名「ポンプ失調性ショック」とも言われています。
血液は足りているので、このショック状態に対処するには輸液や輸血は必要ありませんが、代わりに運動機能が落ちた心臓に「気合い」を入れてあげる必要があります!要は薬を使って血圧を上げるんですね!
患者さんの状態としては、「循環①」で記事にした症状が出てきます。首の静脈が怒張したり、肺に水が溜まったり。
どこに原因があるかをCTや心電図などの色々な検査で探りあてていく必要があります。
心外閉塞・拘束性ショック(obstructive shock)
血液量も足りていて心臓も元気な状態なんですが、血液が流れ出る血管になんらかの原因で閉塞が生じてしまったり、心臓そのもの運動が邪魔されるために循環が破綻する状態です。
これらのショックを引き起こす原因としては、
①緊張性気胸
②肺動脈塞栓
③心タンポナーデ
が頻度として多いです。それぞれ見てみましょう!
まずは緊張性気胸から。
肺に穴が開いてしまって肺の空気が胸腔内に漏れてしまうと、胸腔内の圧力がどんどん高まってきます。そうすると、上大静脈が潰れてしまって心臓に血液が戻って来れません。心臓に血液が戻ってこないので、心臓はただ拍を打つだけで体に血液はうまく回りません!
この状態を解除する介入法としては、「胸腔穿刺」があります。穿刺をすることで、胸腔に溜まった空気を外に逃がしてあげるんですね。
ちなみに漫画とかドラマではこんな感じで刺す時ボールペンがよく使われます。笑笑
お次は肺動脈塞栓です!
右心室から肺に向かう血液が通る道を肺動脈と言いましたが、血栓がここで詰まってしまう病気です。循環への寄与が大きな血管が詰まるので、すぐに渋滞、循環の破綻が生じやすく、循環に与える影響は大きいです。
最後に心タンポナーデ。
心臓は膜に包まれているんですが、その膜と心臓の間に血液が溜まってしまうと心臓はうまく動くことができなくなります。
他の機能は元気なので、「心嚢穿刺」をして溜まった血液を抜くしか、根本的な治療はありません。
血液分布異常性ショック(distributive shock)
このショックはですね、上の3つのショックとは少し違います。これまでみた三つのショックは「手足に血液なんか送ってる場合じゃねえ!」って感じなので、どれも冷感・顔面蒼白・頻脈などの症状が出てきますが、この血液分布異常性ショックはそうはなりません。
全身の血管が拡張したりして循環がうまくいかないので、全身の血管に異常が出るイメージを持つとわかりやすいです。血管は拡張しているので、これらのショック状態の時の手足は暖かく、「ウォームショック」と呼ばれます。
このショックが起こる原因として、
①アナフィラキシー
②敗血症
③脊髄損傷
の3つがよく挙がります。
①のアナフィラキシーはスズメバチで有名なやつです!2回刺されたらやばいよってやつ。簡単にいうと、「体のアレルギー反応の暴走」です。
全身の血管が拡張してしまうので組織がむくんでしまいます。・・・結構怖いんですよ。
気道が浮腫むと息をうまく吸えないし、腸管が浮腫むとひどい下痢になって脱水につながるし、顔だってパンパン。目だって開けにくい。
腎臓には血液があまり届かないので、おしっこも作られません(尿量減少)。体は血管が開くことで全身が真っ赤になって、湿疹等もみられます。
②の敗血症による血液分布異常性ショックは「Septic shock」とも呼ばれます。
管理が必要な全身感染症の一つの形態です。細菌が出す毒素などが原因で、全身の血管が拡張してしまいます。治療には輸液や投薬の他、抗菌薬の投与等も必要になります。
最後は③の脊髄損傷についてです。
「神経原性ショック」とも言われます。(別名多いっすよねほんと。。)脊髄が外傷などを転機に損傷してしまうと、交感神経の働きがおかしくなります。交感神経の働きは、血圧の記事でも書いたように血管の拡張や脈の速さに影響していました。
従って、交感神経の働きが鈍くなることで脈が遅くなり、血管もだらっと拡張してしまいます。血液に循環がゆっくりになるんです。交感神経以外の支配をうける腎血管などに対する影響は少ないので、尿量は保たれるのが①とも違いますね。
まとめ
血圧を話をしたばっかりに、まとまった知識として、循環の記事もまとめてしまいました!
血圧①〜②、循環①〜③の記事はどれも独立した記事ではなく、実は繋がっています。ひとまとめの知識としてみなさんの中で繋がれば嬉しいです!
他に循環が破綻する原因はあるんですが、有名どころをまとめました〜!学生さんや数年目のコメディカルの皆さんも、まずはここらへんをしっかり理解しておくと良いのではないでしょうか!
どもでした!!それではまた次の記事で!