見出し画像

ワインの旨味成分を測定してみた



旨味成分


旨味成分として、グルタミン酸、アスパラギン酸、コハク酸が主に挙げられますが、ワインの風味の評価として旨味は、項目に含まれていません。
旨味成分はワイン中に含まれていますが、味覚閾値よりも低い濃度と報告されています。

特に長期間酵母接触のあるシャンパンでグルタミン酸の含有量が高いことがわかっていますが、濃度は、残念ながら味わいを感じることができる味覚閾値よりも低い値です。

グルタミン酸のワイン中の含有量: シャンパン中のグルタミン酸の含有量は1.4〜7.5 mg/100 m。味覚閾値:29〜30 mg/100 mL
アスパラギン酸のワイン中の含有量:1.1~8.9 mg/100 mL。味覚閾値は2.3~2.4 mg/100 mL
コハク酸の一般的な濃度: ワイン中のコハク酸濃度は約30~60 mg/L。味覚閾値は1500 mg/L

とはいえ、旨味は旨味と合わさると相乗効果があるのです!ですから、味覚の閾値以下であっても、旨味のある料理を合わせると、旨味が増強するのです。

参考文献

1.Schmidt CV, Olsen K, Mouritsen OG. Umami synergy as the scientific principle behind taste-pairing champagne and oysters. Sci Rep. 2020 Nov 18;10(1):20077. doi: 10.1038/s41598-020-77107-w. PMID: 33208820; PMCID: PMC7676262.

2.Vinther Schmidt C, Olsen K, Mouritsen OG. Umami potential of fermented beverages: Sake, wine, champagne, and beer. Food Chem. 2021 Oct 30;360:128971. doi: 10.1016/j.foodchem.2020.128971. Epub 2021 Jan 6. PMID: 34052711.    

グルタミン酸

ワイン中に含まれるグルタミン酸の効果

シャンパンと牡蠣が良い相性を持つ理由として、シャンパン中のグルタミン酸と牡蠣中のグルタミン酸と核酸が相乗効果を発揮することが報告されています(参考文献1)。核酸である5’-リボヌクレオチドがグルタミン酸と同時に存在すると、うまみ受容体(T1R1/T1R3)がより強く活性化されます。これにより、脳に送られる神経信号が強化され、うまみの感じ方が数倍に増幅されます。

つまり、旨味成分のあるワインと、旨味成分のある料理を合わせると、なお一層美味しく感じる、ということになります。

そもそもグルタミン酸とは何?

グルタミン酸は、ぶどうの発酵過程で自然に生成されるアミノ酸です。特に長期間熟成されたワインや酵母接触が長いシャンパンに多く含まれています。うまみシナジー(うまみの相乗効果)を得るために、グルタミン酸を含むワインを、核酸を多く含む食品と組み合わせることが推奨されます。

ワインとグルタミン酸の多い食品とのペアリング

グルタミン酸は、海産物だけでなく、他の多くの料理や食品との相性も良く、うまみ効果を発揮します。ワイン中に含まれるグルタミン酸は、その濃度が比較的低いため、単独では強いグルタミン酸のうまみ効果をもたらすことはありません。しかし、ワインの選び方や料理との組み合わせを工夫することで、グルタミン酸の相乗効果を最大限に引き出すことができると考えられます。例えば、長期間熟成された赤ワインや、酵母接触が長いシャンパンを選ぶと、うま味成分が豊富であり、他の食材との相性も良くなることが容易に想像できます。

 ワイン中のグルタミン酸と料理とのうまみ相乗効果は、下記のようにワインにあう料理としてよく知られている例になります。

ワインと料理の相性

  1. チーズ:

    • チーズはグルタミン酸を豊富に含んでおり、ワイン中のグルタミン酸と相乗効果を発揮します。特に赤ワインや白ワインと合わせることで、チーズの濃厚なうまみが引き立ち、ワインの風味も増します。

  2. トマト料理:

    • トマトソースを使ったパスタやピザは、グルタミン酸を多く含んでいます。これにより、赤ワインや軽めの白ワインとの相性が良くなり、トマトの酸味とうまみが強調されます。

  3. 肉料理:

    • グルタミン酸を含むワインは、肉料理、特にステーキやローストビーフとの相性が良いです。ワインの酸味とタンニンが肉の旨味を引き立て、全体の味わいが調和します。

  4. 魚料理:

    • 白ワインは魚料理との相性が良く、特に軽い魚料理やシーフードと合わせると、魚の自然な甘みやうまみを引き出します。グルタミン酸が含まれているため、うまみの層が増します。

  5. きのこ料理:

    • グルタミン酸を含むワインは、きのこ料理ともよく合います。特に、きのこを使ったリゾットやパスタに合わせると、きのこの豊かな風味とワインのうまみが相乗効果を発揮します。

アスパラギン酸

アスパラギン酸も、旨味成分の一つです。ですが、グルタミン酸に比べてその強さはかなり低く、10分の1以下の味わいとなります。今回、解析を行った結果、ワイン中に含まれるアスパラギン酸は、グルタミン酸が高ければ高く、低ければ低いという解析結果が得られました。そのため、ワイン中のアスパラギン酸の効果はそれほど注目しなくても良いと思われます。

コハク酸

コハク酸も、旨味成分の一つです。発酵中に酵母により生成されます。発酵温度やpH、発酵の進行速度、酸素の供給量などの発酵条件も、コハク酸の生成量に影響を与えます。例えば、低温での発酵や酸素が限られた条件下では、コハク酸の生成が増加することがあるとされています。

また、マロラクティック発酵(MLF)は、リンゴ酸を乳酸に変換するプロセスであり、通常はアルコール発酵後に行われます。この過程で、乳酸菌がコハク酸をさらに生成することがあります。MLFはワインの酸味を柔らかくし、風味に複雑さを加えるプロセスですが、同時にコハク酸の含量も増加する可能性があります。

コハク酸はワインの風味に影響を与え、わずかな苦味や酸味をもたらします。また、他のうま味成分と組み合わせることで、ワイン全体の味わいに複雑さを加えるとともに、相乗効果により旨味が増強する役割も果たします。コハク酸を含むワインが海産物の料理と組み合わせると、全体の味覚体験が向上することが確認されています。

  1. うまみの増強: コハク酸は海産物に含まれる他のうまみ成分(グルタミン酸やイノシン酸など)と相乗効果を発揮し、全体のうまみを増強します。

  2. 風味のバランス: コハク酸は、酸味や甘味、苦味をバランスよく調整し、複雑で豊かな風味を作り出します。これにより、ワインと海産物のペアリングがより調和した味わいになります。

コハク酸の多いワインと料理のペアリング

  • シャンパンと牡蠣: シャンパンには微量のコハク酸が含まれており、これが牡蠣のうまみを強化する役割を果たします。シャンパンの酸味とコハク酸が牡蠣のうまみ成分と調和し、豊かな風味を引き出します。

  • 白ワインとシーフード: 白ワインに含まれるコハク酸が、魚介類の自然な甘味やうまみを引き立て、より美味しく感じさせます。

ワインの旨味成分を測定してみた


さて、こうなると自分が飲んでるワインにどのくらいグルタミン酸が含まれているのか、気になってしまいました。
なので、測定しちゃいました!!

解析サンプル:
測定用のワインは、自分で少しずつ買い集めていったものです。購入時期もバラバラですし、下記にも記載したようにサンプルの採取時期もバラバラです。ですから、今回の結果は、必ずしも正確とは限りません。ですが、コントロールとして、同じブランドのワインを同時に購入し、タイミングをずらして抜栓したものを測定しました。その結果、保存期間への影響はほとんどありませんでした。むしろ、抜栓してボトルにそのまま残しておくのが一番変化が大きかったです。空気をほとんど入れないで4℃で密閉している分には変化はないようです。

採取方法:
抜栓後、上5ml程度を除き、ポリプロピレン製15ml遠心管に擦り切れいっぱい入れて、パラフィルムで封をして冷蔵庫にて保存。

採取時期:
せっせと自分で飲みながらサンプリングをしていったので、同時に採取したわけではありません。

測定方法:
下記のデータは、測定機のピーク値になります。次回の測定の際には、濃度測定できる目途が立ちました。

測定値:
コントロールとして、マルキ葡萄酒さんのベリーA を使いました。このワインを基準にして比を計算しました。
測定したワインリストは下記です。

測定したワインリスト

測定値

51本測定したワイン中で、グルタミン酸が多いリスト順に並び変えて、上位3本は下記でした。なんと、2016 こことあるシリーズ ツヴァイゲルト ワインが、3位!旨味があるんですね。北海道の旨味ある食材と合わせると、旨味増強の予想💕

51本中 上位3

ごめんなさい。ここからは有料とさせてください。
数値だけが独り歩きするのを避けたいと思うのと、今後の活動費としてご賛同いただけると、助かります。

51本のワインのグルタミン酸含量 

ここから先は

206字 / 1画像

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?