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金木犀の香る道を
こんにちは。ねこです。
とても久しぶりのエッセイになってしまいました。みなさまいかがお過ごしでしょうか。
わたしはというと、この10月で4年間働いていた場所を辞めることにしました。なんだかいい区切りだなと思って、いくつか綴りたいこともあって、久しぶりに言葉たちを打ち込んでいます。
あれは専門学生の、たしか2年生になった頃。
わたしは高校生からずっとアルバイトをしたことがなくて、周りがみんな働いていく焦燥感に駆られて、家の近くにあったパン屋さんに応募したのがきっかけでした。
人付き合いが苦手なのに、どうして接客業を選んだのか今でもいまいち分かりませんが、なんとなくパン屋さんの雰囲気が好きだったとか、そのくらいだった気がします。
働きはじめた頃は何もかも分からなくて、挨拶が「おはようございます」なことすら知らなくて、覚えるのも仕事をするのも遅くて、指導してくれたパートさんは大変だっただろうと思います。
注意されることも多々あったし、失敗してしまったこともたくさんあったけれど、時々「お兄さんは笑顔が素敵ね」とか「分からなかったから聞いてよかったわ」と言ってくれる人がいて、そんなちいさな感謝の積み重ねでなんとかやっていけた気がする。
今では、人に教える側になっていたりして、意外と分からないものだなぁと、この4年間を振り返っていて面白くなりました。人と接することが楽しくなったし、こういう場所で働いてみてよかった。
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そんな場所を辞めようと思ったのは、もちろん職場での仕事や人のこともあるのだけど、いちばんは「この先の人生において、もっと生きやすい環境をつくりたい」と考えたのがきっかけでした。
わたしはもうすぐ、この10月に誕生日を迎えて24歳になります。
20歳の頃、いろんなことが重なって就職することも諦めて、生きていることだけが精一杯で、暗闇のなかをただ光を求めて進むような日々でした。
そうして時間が過ぎていくなか、あたらしい出会いがたくさんあって、今のパートナーや友人たちにもその道の途中で出会って。その人たちの優しさがわたしにとっての光となって、前方に広がる美しい景色を照らして見せてくれたような気がします。
いろんな生き方を見て、わたしもそんな風に生きてみたいと、今を生きること以上に、未来を生きることを考えるようになりました。
もっと自分が愛するものを誰かに手渡していく仕事がしてみたいとか、好きなものに囲まれた部屋で生活を営んでみたいとか、もっと成長するために勉強してみたいとか。
そんな未来たちが、だんだん目の前に広がってきて、きっと行けるよと背中を押してくれる人がいて。だからこそ、今を置いて未来に進むことに決めました。
まだまだ進みはじめたばかりの足取りはおぼつかず、草木や小石をゆっくり避けながら進むような日々ですが、きっといつかそのやわらかい光の中に辿り着くと信じて。
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『今この僕があの日の答えだ』
未来に進もうとする時、いつもこの歌詞を思い出します。今のわたしは未来のために生きているけれど、それがきっと回り回って、あの暗闇の中にうずくまるわたしを救うことになる。
君が進めなかったその道は、きっと進めなくてもよかったんだよ。なんとか歩けた細い脇道をかき分けたその先に、こんなやわらかな場所があったんだから。
金木犀の香る道を、わたしは暗闇にうずくまるわたしの手を取って歩くのです。そのために、今を生きている。
なんとかなんとか、歩き続けたその先に美しい景色を見つけたら、その写真をあなたに届けます。
その時まで、またたまに手紙のようなエッセイを書くくらいになってしまうかもしれませんが、もし読んでいただけたら嬉しいです。
もう冬みたいに寒くなってきましたから、お身体に気をつけてくださいね。もちろん、心にもぬくもりをあげてください。
それでは、また。
やさしい光の中で会いましょう。