光の中に
窓から光が差している。
わたしはその光で目を覚ました。
今日はすこし早起きをしたから、朝から湯船に浸かって、電子レンジで温めるパスタソースを、冷凍のうどんにかけるだけの簡単な昼ごはんを食べて、すこしドラマを見て、いつの間にか椅子に座りながら眠っていた。
眠っているうちに進んでいた物語を、とりあえず止めて「うーーーん」と言いながらひとつ伸びをする。
いい天気だからすこし散歩に行こうか、それともこのままあたたかい飲み物を注いで映画でも観ようか、まだ寝ぼけた頭で考える。少なくとも、街へ出かけて、人に会う気力はない。
外から工事をしている音が聞こえる。
「かんかん、かんかん」
鉄を叩いている音だろうか。工事のことはよく分からないから知らない。
まぁいいや、と重い腰を上げてとりあえず部屋着を着替えて、散歩に出かける準備をする。
心のために陽の光を浴びるのは大事らしいと誰かが言っていた。たしかに晴れが続いている時は調子がいい。
公園まで行ってベンチに座っているのが好きなのだけど、そこまで歩く気力があるだろうか。お気に入りの場所はすこし歩くところにあって、真ん中に広い池があって、その周りにベンチが並んでいる。
それぞれの人が交わることもなく、思い思いに時間を過ごしていて、本を読んでいたり、おにぎりを食べていたり、大切な人と話していたり、お昼寝をしていたり。
わたしもその空間の一部として、ただ好きな音楽を聴きながら、陽にあたってぼんやりとする。
その時間は、人間というより猫に近いような気がして、なんだか気持ちが楽になる。猫は猫で忙しいのだろうけど。
誰かと一緒に過ごす時間も好きだけど、わたしにはこういうひとりの時間が必要だ。好きなことをする時間も、何もしないをする時間も。
おおきな羽を持った鳥が飛んだ。
飛行機が上空を通り過ぎた。
木々が風に吹かれてざわめいた。
そういうことに気づいた時、いつも目の前や地面の方しか見られていないことを実感する。この世界にはきっと、そういう美しさがたくさんある。
探検をしよう。まるで子どもみたいに。
明日を生きるには、きっとそんなきらめきがいる。
光の中に。
わたしはきっと生きている。