【映画感想】『エスター ファースト・キル』 ★★★☆☆ 3.5点(後編・ネタバレあり)
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感想
といったところまでが作品中盤までの感想なのだが、本作にも大きなどんでん返しが用意されており、これにより中盤以降、作品の印象は大きく変化する。というのも、実は行方不明だった本物のエスターは彼女の兄・グンナーによって殺害されており、これを母のトリシアとグンナーが隠匿していて、この2人は最初からエスターが偽物であることを知っていたという事実が中盤で提示されるのである。そのため、中盤からは、父親のアレンに隠れて、にせエスターであるリーナとトリシアとが互いを排除しようと画策する心理戦へと作品の方向性が大きく転換する。
正直、本作には前作のようなサプライズは用意されていないであろうと予想して鑑賞していたため、このどんでん返しには大いに驚かされたし、あの前作からさらにこのサプライズを捻り出した脚本には素直に拍手を贈りたいところだ。ただ、この展開自体はかなり良し悪しだと感じる。
まず良い点は、これにより、本作は双方の手の内を理解したうえで互いを出し抜く心理戦という前作とは明らかに異なる方向性の作品となっている点である。そのため、本作は前作と似たような構図の作品ながらも、前作の二番煎じには全くなっていない。
一方、この展開のために、主要登場人物がほぼ悪人ばかりになってしまい、このサプライズが明かされて以降は、ひどい目にあってほしくない人物が作中からいなくなってしまうために、ホラーとしての緊張感が一気に下降してしまう。これは、ホラー作品としては、かなり手痛いところだ。
というわけで、本作はサプライズか堅実さかという二択でサプライズを取った作品となっている。この選択により、本作は偉大なる前作との差別化を十二分に果たせており、良い続編になっていると思うものの、一方で、ホラーとしての完成度で言えば、前作には及ばなかったかなという印象だ。
一方で、前述の通り、本作は前作の補完作品として非常に優秀であることから、本作を鑑賞することによって、前作の評価が上方修正されるという側面もあり、その点では大成功の続編であると言えるだろう。