【ドラマ感想】『ドゲンジャーズ〜メトロポリス〜』 ★★☆☆☆ 2.7点

 九州で活躍する実在のご当地ヒーローで結成されたヒーローチーム・ドゲンジャーズの活躍を描く特撮作品の第4弾。本作では、福岡県警の警察官・白石循が変身する新ヒーロー・ヒャクトーバンと、反社会的勢力押川組が開発したロボット・ユズユズを中心に物語が展開していく。

 2020年の第1弾から年を追うごとにクオリティを高めてきた本シリーズ。本作では、オマージュ元として強く意識する東映の仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズと比較しても遜色のないレベルまで映像が進化しており、アクション、VFX、編集のどれをとってもローカルドラマらしからぬハイクオリティな作品に仕上がっている。


 仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズ、ウルトラマンシリーズといった毎年新作を発表するタイプの特撮作品の場合、登場キャラクターは基本的に毎年一新されるのが一般的であるが、ドゲンジャーズの場合は主人公が新規に投入され、既存の登場人物はほぼ全て続投するという珍しい方式を採用している。

 そのため、TVドラマ第4弾ともなると登場人物の数が膨大になってくるのだが、本作ではこの膨大な数のキャラクターにほぼ満遍なく光を当てることに成功しており、既存のそれぞれのキャラクターのファンに対するサービスが行き届いた作品となっている。

 しかし、かといって、本作初登場のキャラたちの影が薄くなっているかというと、そんなことはなく、ヒャクトーバンやユズユズなどの本作のメインキャラ達もそれぞれが愛嬌のあるキャラクターとして、しっかりとキャラ立ちが出来ている。本作はこの既存のファンへのサービスと、新キャラのキャラ立てのバランスが非常に優れている。

 この全キャラ続投システムが成立している要因は、ほとんどのネームドキャラが常時きぐるみの状態で登場し、一般的なヒーローにおける顔出し演者による変身前の姿が必要ないことが大きい。これは元々ドゲンジャーズという作品が、各地のイベントにおけるヒーローショーを起源としている作品であるがゆえなのだが、このシステムのおかげで、本シリーズは往年の東映不思議コメディーシリーズのような空気を纏う作品となっており、これが図らずも現行の特撮ヒーロー作品とは一線を画す本作独自の味となっていて興味深い。


 ただ、本作はこの全員続投システムの限界が見える作品であるとも感じた。というのも、このシステムがゆえに本作では12話の中で30弱のキャラクターを登場させなければならなくなってしまっており、相当工夫して制作されているとは言え、さすがに描けるキャラクターの上限に達しているのを感じるのである。

 既存のキャラクターを満遍なく出すために、本作のメインキャラであるヒャクトーバンとユズユズのストーリーが如実に圧縮されており、さらに、本作ではヒャクトーバンのストーリー、ユズユズのストーリー、ドゲンジャーズのストーリーがそれぞれ独立して進むケースが多く、それぞれをうまく有機的に接続できていないため、全体のストーリーが散漫になってしまっている。

 特にラストのヒャクトーバンとユズユズの決着が、この煽りを食ってぼやけた印象になってしまっているのが惜しい。仲間に恵まれたヒャクトーバンと一人ぼっちのユズユズという最終2話で提示される本作の対比構造自体は非常に良かっただけに、このメイン2人を煮詰めるだけの尺が用意できなかった点が非常にもったいないと感じた。

 来年第5シーズンを制作するのかはまだ不明だが、そろそろ、既存キャラの登場はある程度絞るか、逆に既存キャラのみで新しいストーリーを描くかのどちらかを選択する時が来ているように思われる。

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