【アニメ感想】『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』 ★★☆☆☆ 2.8点

 デビューを目指す9人のジュニアアイドルと、彼女たちの芸能活動をサポートする新人プロデューサーの活躍を描くアイドルアニメ作品。原作は200人近いキャラクターを擁するアイドル育成ゲームで、下は9歳から上は31歳まで幅広い年齢層の女性アイドルが登場するが、本作はその中から10歳前後の9人のジュニアアイドルにフォーカスを当て、彼女たちが所属する第3芸能課と名付けられた新設部署を舞台に物語が展開する。


 本作は1人のキャラクターに焦点を当てた所謂「お当番回」で構成された作品となっており、1話ごとに第3芸能課のアイドルを1人1人掘り下げながらシリーズが展開していく。それぞれのキャラクターの設定がかなりしっかりとしており、このそれぞれのキャラクター性だけで1話が十分に構成できるのは、元が歴史の長いソーシャルゲームである強みであろう。

 ただ一方で、これが9人分あるために、全12話のほとんどがこのお当番回になってしまっており、それゆえに主要キャラクター同士の横の繋がりの描写は希薄で、シリーズ全体を貫く大きな縦軸の物語はほぼ無い。これが2クールの作品であれば、お当番回が一周したところで主軸の物語を展開させていくところであろうが、本作は1クールであるために、その手前で物語が終了してしまうという形だ。

 これは作品性を取るか、ファンサービスを取るかというところで正解のない問題なのだが、本作は後者を取っているがゆえに、結果としては全くの新規の客向けの作品というよりは、元々の原作ゲームのファン向けの作品という印象が強い作品となっている。


 アイドルマスターシリーズのアニメ化作品はこれまでにも何作も発表されており、これまでの作品ではアイドルたちの内面の悩みや葛藤に深く掘り込んでいくような作劇がなされてきた。これに対し、本作は前述の通り縦軸のストーリーが希薄なことも相まって、このような重めの展開はあまり描かれない。これはこれまでのシリーズで描かれていたようなヘビーな展開を担わせるには登場アイドルの年齢層が低すぎることに起因しているものと思われる。

 強いて言うならば、本作の登場アイドルの一人である橘ありすの親子関係の悩みが深刻な描かれ方がされるが、これも基本的には1話でサッと解決させているあたりに配慮を感じる。同じゲームを原作とする2015年放送の『アイドルマスター シンデレラガールズ』で、アイドル活動を通して、思春期の少女のアイデンティティの確立というかなり重いテーマを扱ったのとは対象的だ。


 本作はこのようにアイドルたちにあまり負担のかからない作劇になっている一方で、作中で辛酸を嘗める役は彼女たちの担当プロデューサーが一手に担っている。本作の特異な点は、比較的ファンシーに展開されるジュニアアイドルたちの活躍と、異様に脂ぎった芸能事務所のお偉方のおじさんたちのやり取りが、一つの作品に収まっている点である。

 本作ではその間をプロデューサーが行き来することで、この2つの物語を繋ぎ止めているのだが、職業アニメとしての側面で見るとそこまで上手くいっているかは疑問の残るところではある。そもそも、アイドルのマネージメントからプロデュースまでを”プロデューサー”と呼ばれる1人の人物が担っているという原作ゲームの設定が、リアルな職業ものとの相性が悪い。そのうえ、本作は第3芸能課のバックにアイドル事務所の会長がついているという設定のせいで、プロデューサーや彼の上司たちの意向とは関係なく、会長の鶴の一声で事態が進行してしまい、職業ものとしてのカタルシスを著しく欠いている。


 このように不満点もあるものの、それぞれの回自体は、一人のアイドルの芸能活動にフォーカスを当てたハートウォーミングなストーリーで堅実にまとめられており、また、各話ごとにそれぞれのアイドルが歌唱する楽曲が挿入歌として使用されるのだが、原作ゲームの歴史の長さゆえに楽曲がバラエティ豊かで、かつ、美麗な作画で各回がMVのような上質な仕上がりになっている。

 また、第6話と第12話では気合の入ったライブシーンが描かれるが、これが非常に見応えがあり、特に最終話である第12話は物語を締め括るにふさわしい出来となっている。このような理由から原作ゲームからのファンに対するファンサービスという点では、十二分の仕上がりの作品となっていると言えるだろう。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集