【アニメ感想】『地獄楽』 ★★☆☆☆ 2.8点

 江戸時代末期、死罪人として囚われた最強の忍者・画眉丸は、琉球付近に存在する謎の島から「不老不死の仙薬」を持ち帰れば無罪放免にするという話を持ちかけられる。生き別れた妻と再会するため、この話に乗った画眉丸は、彼の死罪執行人である山田浅ェ門佐切をパートナーに、同じように集められた多くの死罪人とともにその島に乗り込む。しかし、その島は数多の怪物が跋扈する島であった。


 怪物が跋扈する奇怪な島で複数の死罪人と死罪執行人のコンビがサバイバルするという設定の本作は、画眉丸と佐切の主人公コンビ以外のコンビにもかなりの尺が割かれ、かつ、それぞれのコンビが島のあちこちに散っているために、独立したいくつもの物語が並行して進行していくこととなる。

 この第1期ではそれぞれのコンビのバックグラウンドがかなり丁寧に描かれるがゆえに、ストーリーの進行はかなり鈍重で、所謂「溜め」のような回が多い。そのため、爆発的に面白い回はと言われると、あまり思いつかないものの、後々の展開のために丁寧に種蒔きをしている印象を受けるため、それほど嫌な感じはしない。

 実際、天仙と呼ばれる島を牛耳る生命体の存在や、氣と呼ばれる天仙や怪物たちのパワーソースの原理が提示され、各陣営が集結し始めるシーズン後半は徐々に展開が盛り上がり始めている。ただ、第1期については、面白くなり始めたところで終わってしまった感があるので、良くも悪くも作品としての評価は次の第2期まではなんとも言えないところである。


 このように溜めが多い構成がゆえに、ストレスの溜まりやすい要素を多分に含んでいるのだが、本作は主人公の画眉丸を著しく強いキャラクターとして描写することでこれを緩和している。敵との戦闘において、画眉丸は多少攻めあぐねることはあっても、基本的に劣勢に置かれることはほぼなく、スカッと敵を圧倒してくれるために、定期的に物語のガス抜きを担っている。

 一方で、彼とコンビを組む佐切はまだ成長途上のキャラクターとして設定されているため、作中のカタルシスを画眉丸が担っている傍らで、作中の成長要素は佐切がこなしており、作品全体としてはご都合展開には陥らないようになっていて、よく考えられたキャラクター配置となっている。


 第1期全体を通して、じっくりと贅沢に各陣営の掘り下げを行い、舞台設定の開示も十分に整えた本作。それぞれの陣営がついに邂逅し、天仙たちとの戦いが始まるであろう第2期は、上手く行けば、第1期で撒いた種が大きく芽吹き、爆発的に面白くなるポテンシャルを秘めていると期待される。

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