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『親を名前で呼ぶ子』と、人類総ネオテニー化現象と、漫画『残酷な神が支配する』の感想と、私。

タイトルからして混乱しています。

今回のnoteを、秩序だって論理的に読みやすく書ける自信がありません。なので、タイトルも「部屋とYシャツと私」を意味もなくパロってみました。

あ、ちゃんと書けないのはいつもの事だった!あはは〜。

では、気楽にいきま〜す。

昨日、図書館に行って、萩尾望都の『残酷な神が支配する』という漫画を読みました。前に一度最後まで読んだ作品なので、再読ですね。

図書館に4時間いて、7巻まで読みました。

その前にもいくつか他の漫画を読んだので、

『残酷な神が支配する』を読み始めたのは2時間ほど経ってから。

内容が本当にキツい作品です。

大体の流れは最後まで知っていますが、直近の記憶は7〜8巻までなので、ググった他の方のレビューを参考に感想をお伝えします。

ネタバレは、全開オープン身も蓋もない内容ですので、

これからこの漫画を読む予定の方は、読まないで下さいね。


ボストンで、美貌の母親「サンドラ」と暮らす主人公のジェルミ。

ジェルミが、母親を「サンドラ」と名前で呼んでいるのが私的にはポイントです。たぶん、作者も意図的にそうしていると思う。もし、ジェルミが「お母さん」と呼んでたら、ストーリーの持つ意味が変わってくると思う。

父は病気で亡くなっています。

母は、アンティークショップで働いていて、そこに客としてきた資産家のグレッグと恋に落ち、結婚が決まります。

渋いイケメンで、超お金持ちの男に求婚されて、有頂天のサンドラを見て、ジェルミもホッとします。

美貌の母は、少女のまま大人になったような人で、ジェルミの方が保護者のように彼女を守っていたから。

上品に見えたグレッグですが、本性は残忍で悪魔のような男でした。

サンドラに求婚したのは、彼女が美しく飾り物の妻としてピッタリだったからというのも、もちろんですが、本当の狙いは息子であるジェルミの方だったんです。

アンティークショップに、初めて来店した時、グレッグは居丈高で傲慢で嫌な客でした。しかし、帰り際にジェルミを見て、気に入ったグレッグは、ジェルミを手に入れるために狡猾に事を運びます。

何にも知らないジェルミは、偶然を装ったグレッグの車に乗り、口説かれます。

彼の誘いを拒んだジェルミでしたが、家に帰るとサンドラがグレッグから一方的に婚約を破棄され、そのショックから自殺未遂を図ります。

サンドラが自殺を図るのは、これで2回目。

一度目は、ジェルミの父が亡くなった時、手首を切って死のうとします。

誰かに依存しないと生きていけない性質の母。

ジェルミは、サンドラの幸せのために、一度だけの約束でグレッグと関係を持ちます。その後すぐに、グレッグはサンドラに謝り、2人は無事(?)結婚します。

お城のようなグレッグの家には、グレッグの先妻の子供が2人いました。

金髪イケメン、カリスマ性の高い長男「イアン」と、

グレッグが「自分の子ではない」と思っている地味な容姿の次男「マット」。

ちなみに、「マット」はグレッグの本当の子供なんですが、要するに「こんな冴えない鈍臭い美しくない子供は、『自分の子供ではない』」という意味で言ってる。

このお城のような邸宅で、サンドラはお姫様のように過ごし、その裏でジェルミは、グレッグのおもちゃとして、夜な夜な残酷な仕打ちを受けていました。

「サンドラの為に一度だけ」という約束だったと、ジェルミが言うと、「サンドラに2人の関係をばらすよ」と脅され、そのうち写真を撮られ、ジェルミの心は絶望よりももっと深いところに堕とされます。

その後、イアンと同じ寄宿舎に入り、グレッグの魔の手から逃れたと安堵するジェルミですが、「週末、家に帰って来ないとサンドラに辛く当たるかもよ」とグレッグに脅され、仕方なく週末は家に帰り、グレッグに弄ばれるジェルミ。

その頃から彼は、『自分の死体を壁の中に塗り込めて隠す』という妄想に取り憑かれ始めます。壁が剥がれて、中から骨になった自分の死体が出てくるという白昼夢を見たり・・。

グレッグの性的虐待は、どんどんエスカレートして、ロープでジェルミの首を絞め気絶させてしまう事もしばしば。

しかも、そのロープは先妻リリアが庭で自殺したときに使用した物で、彼女をを自殺に追い込んだのも、彼の異常な虐待でした。

何重にもおぞましい・・・。

ジェルミとグレッグの関係に気づいた人が3人いました。

1人目は先妻リリアの姉で、自身も過去にグレッグと関係を持ち暴力を受けた事のあるナターシャ。ナターシャは、グレッグに虐待を止めるように忠告しますが、「お前が愛するマットを虐めるぞ!」的な脅かし方をされて、妹の忘れ形見である甥のマットを溺愛するナターシャは、2人の関係に口を閉し、ジェルミを助けるに至りませんでした。

もう1人、新しくメイドとして入ったシャロン。

2人の関係を目撃した彼女は、グレッグを脅して金を貰おうとするけど、逆に脅されて逃げ出す。

3人目は、グレッグの次男マット。食事中に「パパとジェルミがキスしてた。」と言い放ち、グレッグの逆鱗に触れ、「嘘ばかりつく!」と言われる。グレッグのあまりの剣幕に、まさか嘘をついてるのがグレッグの方だなんて、誰も思わないというギミック。

生き地獄のような生活を続けるジェルミは、次第に精神が破綻し出し、寄宿舎の仲間も、うすうす何か事情がありそうな事は感じ始める。

ジェルミは、たまたま心理学者のオーソン先生を知り、カウンセリングを受けますが、先生はすぐに亡くなります。もともと癌の末期だったようです。

ジェルミは追い詰められ、グレッグを殺す妄想に取り憑かれます。そして本当に、事故を装ってグレッグを殺す計画を立て実行する。しかし、偶然その日、一緒に行く予定ではなかったサンドラが同乗した事で、彼女も亡くなってしまう。

この漫画の冒頭は、サンドラのお葬式で、心神喪失したジェルミが、よろめきながら「なんで、あいつの車に?・・・あいつが死ぬはずだったのに・・・」と呟き、彼を支えようと腕を掴んだイアンが、その言葉を聞き、ジェルミが殺人犯である事を知るところから始まります。

厳格だったけれど、経営者として尊敬し父として愛していたグレッグと、彼の人生に途中参加してきた美貌の女性の死を悲しんでいたところに、義弟の思わぬ殺人告白に動揺するイアン。

ジェルミに殺人計画の真相を話す事を迫り、逆に父とジェルミの関係を話されて、ショックを受けるも、自分の都合の良いように事実を捻じ曲げて、ジェルミを嘘つき呼ばわりするイアン。

その後、証拠写真を見る事になり、尊敬し愛した父の残酷な裏の顔を否応なく見せつけられる。

一方、主人公ジェルミは、この漫画の中で1番の『残酷』エレメントに行き着く。亡くなったサンドラの部屋を片付けていて、昔付き合っていた恋人ビビアンが、ジェルミに宛てた手紙を見つけてしまう。その中には、ジェルミが罪悪感から彼女に、その当時一度だけと決心して関係を持ったグレッグの事(義父ということまでは言ってない)を告白した事に触れていた・・・

その手紙を持っているという事は、たとえ相手の名前が分からなくても、その後のジェルミの一見辻褄の合わない行動や、一瞬だけど垣間見えるグレッグの残忍な表情などを知っているサンドラなら、わかったはず。途中、マットも「パパとジェルミがキスしてた〜。」とか言ってるし。ということは、つまり母は全部知っていた。

今まで、ジェルミが守ろうとしてきた事を一瞬で崩壊させ、ギリギリで息をしていた彼の息の根を止めたこの事実。

知ってた!知ってて助けてくれなかった。お姫様のような自分の幸せを守る為に、息子を生贄の子羊として悪魔に差し出していた。

たしかに、人は自分に都合の良いように事実を歪めて認識する生き物。見たくないものは見えない。だけど、あまりにも辛すぎる事実。

御伽噺や漫画の中で、ヒロインをいじめるのは「継母」であって、本当の母ではない。現実では、この漫画ほど極端でないけれど、母による虐待や黙殺は少なくない。

この場面は衝撃的でした。ここまで描くか⁈と思った。

「お腹を痛めた我が子」と、昔からいうように親が子供を愛する気持ちは無償であると言う共通認識の下で、お腹を痛めてまでして産んだ我が子をわざわざ傷つける親などいないと、常識と言う枠の死角に追い込まれる幼い被害者。

たとえ、子供が勇気を出して声をあげても、この漫画の中の「マット」のように嘘つき呼ばわれされ、さらに苦しめられる。

「自分可愛さ」が子供よりも優先されるサンドラのような女性の心理は理解し難いけれど、進化論や心理学の本から得た私の未熟な知識から推測するに、たぶんこう言う事なんじゃないかと思います。

サンドラのような女性は、子供をペットのように可愛がったかと思えば、逆に親に甘えるように依存した態度を取る。気分次第で子供に自分が求める役割を押し付け、利用する。優先するのは自分の生活であり快楽である。なぜなら、子供は何人でも産めるけど自分という人間は、この世にたった1人だから守られるべきは「自分」。子供を1人の人格として見れていない、恐ろしい認知の歪み。

こう言う考え方をして周りをコントロールする生き物がいますね?

そう、幼児です。

幼児は、自分が世界の中心。

その幼児の利己的な生き方を肯定して、一緒に生きる中で「利他的」である事の有意義さを教えてあげるのが『親』を代表とした保護者の役目。小さい頃に、思いっきり利己的にわがままに生きれなかった子が大きくなって子供を持つと、その子に保護者の役割をさせて自分はもう一度、小さい頃を生き直す。

悪魔のような男グレッグの狂気に満ちた残忍な祭りの生贄として、毎晩のように鞭打たれ失神するほど首をロープでしめられるジェルミ。

傷の痛みに耐えかねて、寄宿舎の先輩から貰ったドラックに手を出す。

そこまでして、グレッグの言いなりに体を差し出すのは「サンドラの幸せ」の為なのに、肝心のサンドラは2人の関係を知っていた!知っていてなお、見て見ぬふりをしていた。

ここで、このページの最初に書いた「ジェルミが母親を名前で呼ぶ」と言うポイントに行き当たります。

親を名前で呼ぶと言う事の心理は、『親の不在』と言う意味なんだそうです。たしかにね!ググった記事で、これを知った時、ストンと腑に落ちた。最近、『友達みたいな親子が増えた』と感じていた私の思いに説明がついた気がした。

「ネオテニー(幼形成熟)」と言う言葉をご存知ですか?

子供の状態を維持したまま大人になる生物現象だそうです。

人類の進化は「ネオテニー」化する事で、飛躍的に脳を大きくして他の生物の追随を許さないほど繁栄してきた。

生殖的には大人で成熟しているのに、見た目は子供のよう。

見た目が子供なだけでなく、中身も知的好奇心旺盛な子供の性質を持っていて、「ネオテニー化」はいわば「大人」と「子供」の良いとこどりのハイブリッド。

それは時間が進み、技術が進歩した事でさらに加速している気がします。メディアには幼女のような顔なのに、体は成熟した大人の女性という設定のキャラクターで溢れています。いかに「ネオテニー寄り」のビジュアルが人に好まれているかが窺えますね。

整形技術も進化して、昔なら生まれた時の顔で一生を終えたところが、今ではどんな美形にでもなれる。大きな目にすべすべの肌。みんなが憧れるのは、まるで赤ちゃんのようなそう言う特徴。

子供である期間がどんどん長くなってきている私たち人類。しかも、今の知識はネットからの情報が多いから、パソコンやスマホを使いこなせなかったり、ネット用語を知らない世代は、若者に追い越されるばかり。

若者はもはや、『親』を必要としなくなった。

『親』の方も、自分たちの親から受け継いできた『親の役割』と言う重責から解放されたい。自分だって子供のままで居られるなら、そうしたい。と思っていたから、両手を上げて『名前で呼ばれる』事を受け入れた。どちらもそれを望むなら、それは新しい親子の形としてこれから広まっていくんでしょうが、サンドラの例を例を挙げるとわかるように、完璧に立場が逆転してしまうパターンもありますね。

たかが呼び方一つなのに。

子供だらけの世界では、サンドラのように利己的な人間が増え、親を失ったこれからの子供たちは、逆に早熟になり大人びてくるのかもしれませんね。「ミルクが飲みたくなったのう。」とか・・・。

あ、話が脱線しましたが、

最初に書いた通り、この話をまとめるのは難しかった〜。

両親を殺したジェルミは、その後ドラックと売春の日々を送りますが、義兄のイアンと行動を共にするようになって、過去の自分と向き合いだします。(他の方のレビューでは、グレッグという悪魔がいかに出来たのか、彼の過去に遡って説明された描写もあるそうです。)

しかし、過去に受けた心の傷は相当深く、ジェルミは苦しみます。漫画は、ジェルミの魂の回復にはまだ程遠いけれど、少しだけ希望のある終わり方になっていたと記憶しています。

すみません、中途半端にしか読んでいない漫画の感想になりました。




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