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ぽっちゃり小猫 5|いつも通りが好きだからそばにいる
吾輩はぽっちゃりだが小猫である。
〈頑張り屋〉という“おーえる”と大きな家に暮らしている。
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頑張り屋は吾輩と違い、頭以外に毛がほとんどなく、表面がツルツルした生き物である。
ツルツルしているから寒いのか、それとも身を守るためか、普段はさまざまな毛皮を身につけて生活している。
いつもは首と2本の腕を通す毛皮を被り、2本の足を通す毛皮を履いているのだが、今日は珍しくやけにヒラヒラと揺れる毛皮を頭から被っただけである。
足はツルツルした部分が丸見えで守れぬ上に、風通しもよくスースーして寒そうである。
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その姿を見て、吾輩は毛を刈り上げた足で歩き回る自分を想像してみたが、想像するだけでも寒くて無防備で恐ろしい。
吾輩なら外に出るなどもってのほかだと呆れてしまう。
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さらに不思議なことに、足は無防備であるが、今日は顔だけ装備を強化している。
液体や粉を皮膚にどんどん重ねて、元の顔を覆う。
吾輩は、頑張り屋が今日どこへ行くのか知らぬが、もしかすると今日行く場所には、顔だけを狙う猛獣がいるのか、顔を見て強さを測る生き物が待ち構えているのかもしれぬ。
そして最後に、やけに鼻がツンと痛む匂いの液体をシュッと体に浴びせた。
どうやら、匂いも隠さねばならぬらしい。
頑張り屋は、かなり面倒な場所に狩りに行くのであろう。
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吾輩は弱い生き物なので、1匹で外へは出られぬ。
腹を満たす分のご飯を食べるには、代わりに体の大きな頑張り屋が狩りに行かねばならないのだ。
バタバタと装備を終えた頑張り屋は、「よし、行ってくるね」と覚悟を決めた。
去り際、『無事に帰るのだぞ』と背中に声をかけたが、気持ちはもう外に向かっているようで、吾輩の言葉が最後まで聞こえたかどうか分からなかった。
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外がオレンジ色に染まるころ、頑張り屋が狩りから帰ってきた。
やはり相当大変な狩りだったらしい。とても体が重そうである。
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しかも、さまざまな猛獣の匂いが頑張り屋に染み付いてしまったらしく、とても臭い。
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頑張り屋は吾輩を撫でようとしたが、あまりに匂いが強くクラクラしたので、吾輩は鼻に皺を寄せて思いっきり仰け反り避けてしまった。
頑張り屋は一瞬悲しそうな顔を見せたが、吾輩の鼻がヒクヒクしているのを見て察したらしい。
その後すぐに強烈な匂いを洗い流しに行った。
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「はああ、開放感!」などと言いながら戻ってきた頑張り屋は、もういつも通りの装備だ。
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一番強烈であった匂いの方だが、ほぼほぼ普段の頑張り屋の匂いに戻っているものの、こちらは少しばかり臭い匂いが残っていた。
この程度であれば吾輩の匂いで消してやれるので、今度は頑張り屋に擦り寄ってペロペロと指を舐めてやった。
「ありがとう」
今の頑張り屋の顔は無防備でゆるんでいる。
だが、その姿の方が吾輩は側にいたいと思えるのだ。
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この作品は、土曜日の更新となります。
頑張り屋さんに休日の夜、ゆったり読んで欲しいです。
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