不眠を引き起こす5つの悪い習慣について
睡眠不足は怠いだけではない
皆様慢性的な睡眠不足に悩まされていませんか?
睡眠不足の翌日は倦怠感が強く、仕事のパフォーマンスが低下してしまいますよね、
じつは睡眠不足に悩んでる方は非常に多く4人に一人が悩んでいるとの報告があります。それによる経済的 損失は5兆8,000億円と想定されており,大きな社 会的課題であるのは間違いありません。また不眠により肥満、慢性炎症惹起、心筋梗塞等の心血管障害との関連も指摘されています
最近になりデエビゴ、ベルソムラといった依存性の少ない睡眠薬が出現し不眠に対する対処法は確実に進歩していますが、知らず知らずのうちに不眠に対する悪習慣が習慣化されているかもしれません。まずは悪い習慣を見直すことが肝要かもしれません。本日は睡眠に対する悪い習慣と良い習慣についてお話させて頂きます。
睡眠不足を引き起こす5つの悪習慣
1 カフェイン
2 アルコール
3 熱
4 雑音
5 光
1 カフェイン
まずはカフェインについてです。
カフェインは脳内のアデノシン受容体をブロックすることにより覚醒作用があり、それにより間違いなく不眠、睡眠の質の低下を引き起こします。
Barry RJ, Clarke AR, Johnstone SJ. Caffeine and opening the eyes have additive effects on resting arousal measures. Clin Neurophysiol. 2011 Oct;122(10):2010-5. doi: 10.1016/j.clinph.2011.02.036. Epub 2011 Apr 12. Park SY, Oh MK, Lee BS, Kim HG, Lee WJ, Lee JH, Lim JT, Kim JY. The Effects of Alcohol on Quality of Sleep. Korean J Fam Med. 2015 Nov;36(6):294-9. doi: 10.4082/kjfm.2015.36.6.294. Epub 2015 Nov 20. PMID: 26634095; PMCID: PMC4666864.
また欧米諸国ではカフェインの摂取上限量を定めているところもあります。例えばカナダでは成人では400mg、コーヒーにして3-4杯までが推奨されています。(コーヒー一杯あたり約100-150mg含有)
またコーヒーのみならず緑茶、ウーロン茶、紅茶などにはペットボトル一本当たりに缶コーヒーと同等のカフェインが含まれているために知らず知らずの間に上限量を超えている方もいるかもしれません。
小生の外来患者さんでも緑茶、ウーロン茶を節制するだけで不眠症状が改善した方が多く見受けられました。
不眠症状がある方は
①コーヒーは一日1杯まで
②カフェインは夕方三時以降は一切摂取しない
③ドリンクは水、麦茶などのカフェインフリードリンクのみにする
を試されては如何しょうか?
2 アルコール
当院にいらっしゃる患者様の中にも『寝つきをよくするためにアルコールを摂取している』患者様がよくいらっしゃいます。
実はそれは睡眠に対しては逆効果であることが報告されているます。
確かに飲酒による睡眠補助は数日間は見られますが、それ以降はその作用は消失してしまいます。そしてそれ以降は睡眠の質が悪化してしまうのです。
そして皮肉なことにアルコールは不眠症との強い関連が指摘されています。
• 不眠で悩まされている方は睡眠前の飲酒は控えてみましょうPMCID : Stein MD, Friedmann PD. Disturbed sleep and its relationship to alcohol use. Subst Abus. 2005 Mar;26(1):1-13. doi: 10.1300/j465v26n01_01. PMID: 16492658; Park SY, Oh MK, Lee BS, Kim HG, Lee WJ, Lee JH, Lim JT, Kim JY. The Effects of Alcohol on Quality of Sleep. Korean J Fam Med. 2015 Nov;36(6):294-9. doi: 10.4082/kjfm.2015.36.6.294. Epub 2015 Nov 20. PMID: 26634095; PMCID: PMC4666864.
『不眠を解消するために』飲酒をされている方がいらっしゃいましたら、それにより睡眠の質が徐々に低下する【睡眠負債のカスケード】に突入している可能性があります。
3 暖かすぎる寝室
体内の深部体温の上昇は不眠と関連しています。
したがって寝室が暖かすぎると寝つきが悪く(入眠困難)、睡眠の質の低下まで引き起こしてしまします。電気毛布を使われているかたは注意が必要ですし
睡眠前に42度以上のお風呂に入る方も注意が必要です。
なんと騒音よりも睡眠の質を損なう可能性が指摘されており、寝床の温度調整には注意を払ってみましょう。Okamoto-Mizuno K, Mizuno K. Effects of thermal environment on sleep and circadian rhythm. J Physiol Anthropol. 2012 May 31;31(1):14. doi: 10.1186/1880-6805-31-14. PMID: 22738673; PMCID: PMC3427038.
Libert JP, Bach V, Johnson LC, Ehrhart J, Wittersheim G, Keller D. Relative and combined effects of heat and noise exposure on sleep in humans. Sleep. 1991 Feb;14(1):24-31. doi: 10.1093/sleep/14.1.24. PMID: 1811316.
4 騒音
言わずもがな騒音は不眠の原因となります。
そしてそれは、稼働中の空気清浄機や冷蔵庫などの眼を覚まさない程度の音でもストレスが増大し、睡眠の質が低下している可能性があります
もし不眠に悩まされているのであれば極力静寂の環境をつくりましょう
(耳栓は非常に有用です)
Basner M, Brink M, Bristow A, de Kluizenaar Y, Finegold L, Hong J, Janssen SA, Klaeboe R, Leroux T, Liebl A, Matsui T, Schwela D, Sliwinska-Kowalska M, Sörqvist P. ICBEN review of research on the biological effects of noise 2011-2014. Noise Health. 2015 Mar-Apr;17(75):57-82. doi: 10.4103/1463-1741.153373. PMID: 25774609; PMCID: PMC4918662.
5 光
脳内よりメラトニンが分泌され、体内時計を睡眠するように働きかけますが
TV、スマホ、PCなどより発光されるブルーライトはメラトニンの生成を妨害してしまします。ですので寝る前は極力それらは使用しない方がよさそうです(Iphoneはプログラムにより睡眠前のブルーライトカット機能が備わっています)
Heo JY, Kim K, Fava M, Mischoulon D, Papakostas GI, Kim MJ, Kim DJ, Chang KJ, Oh Y, Yu BH, Jeon HJ. Effects of smartphone use with and without blue light at night in healthy adults: A randomized, double-blind, cross-over, placebo-controlled comparison. J Psychiatr Res. 2017 Apr;87:61-70. doi: 10.1016/j.jpsychires.2016.12.010. Epub 2016 Dec 12. PMID: 28017916.
最後まで稚拙な文章に目を通して頂き誠に感謝致します。
Purevidence株式会社CEO 消化器内科専門医
井上浩一 拝